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ニセモノの勇者 1

シャル達はガイムールという街に到着した。この街にもまた例の塔が聳えており、既にディナルドに侵攻された事は伺える。しかし、人々の生活は普通に行われており、恐らく国政なども人間側の権利として残されたままなのだろう。完全な支配よりも属国の様にする方が良いという事なのかもしれないが、その真意は分からないものである。

この街はスカラプスという街の首都でもあり、リーナ達はとある事情からこの国の大臣に会うためにここに寄ったのだった。なので、シャル達は街へ着くと大臣へ会うために議事堂へと向かった。事前に連絡を入れていたわけではないのだが、しばらく待つと大臣が現れ、部屋に案内される。大臣の話によると、最近この街の近くの洞窟に住んでいるはずの岩魔竜(がんまりゅう)がその洞窟を離れ、様々な事で利用される主要な道へ居座る様になり危険な状態であるという事、そして、それの原因だと思われる事でありそれ以上に問題なのが同時にその岩魔竜の住処である洞窟に何か未知の生物が確認されているとの事である。しかし、ディナルドに支配されている以上、下手に自国の部隊を動かせないため、サフラトで炎魔竜の討伐、そしてピスラズでのフレームゴーレム撃破の実績があるシャル達が呼ばれたという事である。

「もちろん危険な事は承知しています。現状の詳細が分かればこちらとしてもソレをディナルド側と交渉し対処してもらえるとは思うのです。なので、こちらとしては洞窟に住み着いている者の最低限の調査だけでもお願い出来ないかと思っておりまして」

「しかし、岩魔竜の方はいいのでしょうか?」

「そちらに関しては現状何か起こしているわけではありませんし、住処さえ戻ればどうにかなるでしょう」

「そうですか。では引き受けましょう」

「本当は最近噂の魔獣の巨人や、謎の生物を倒したという巨人とも連絡が取れればよかったのですが、すみません」

シャルと大臣は握手を交わした。

「しかし、勇者様達も数日前に到着していたのならアポを取っていただければ待たせずに済みましたのに」

その言葉にシャル達は首を傾げた。

「いえ、私達が到着したのは本当に先ほどの事ですが?」

「はて?街では勇者様達が到着し、賑わっている様なのですが。何かの間違えですかね」


シャル達は大臣の言葉に疑問を持ちながらも議事堂を後にし、昼食を取りに適当な店へと入る。何やら賑わっている様だが、そんな事は気にせずに少し離れた席に座り、各々気になる料理を注文をする。しかし、注文した料理を待っていると気になる事が聞こえてくる。

「魔族たちに囲まれて「もうダメだ!」って思いましたよ!でもね、そこで諦めずに立ち上がって魔族の下っ端たちをバッタバッタと切り伏せて、遂には幹部と暴れる竜を相手に!」

自分達以外に魔族との戦いをしている、ましてやそんな実績のある人物など聞いた事がなかったため、シャル達は気になりしばらくそちらの方に聞き耳を立てた。

「おっと!ここからの私たち勇者の冒険の話が聞きたかったら、大銀貨一枚を払ってよ!ほら、お得だよ!」

大銀貨一枚。この世界では外食でちょっといい食事が出来るくらいの額である。その値段を聞き渋る者は離れていったものの、物珍しい勇者の冒険譚と聞き金銭を払う者も居た。

「オイオイ、金取るのかよ」

「あのような事をするとは、戴けませんね」

「変な話をして金を集めるなんざ、お前の所そっくりだな」

「教会はそのような不埒な場所ではありません。それよりも、シャルロット、もしかしてアレは」

「魔族に竜なんて、まるで私達の話だよね」

「偽物でしょうね。大臣の言ってた数日前に到着した勇者ってのも、アレでしょ」

首相の不可解な言葉もようやく理解出来た。わざわざ伝説に倣って勇者という肩書をやっているのは自分達くらいである。ましてや少人数で魔族と戦っているとなるとそうだ。

「気に食わねえな。ちょっとぶっ飛ばしてくるか」

「こんな所でよしなさい」

「トロンの言う通り。それに今どうにかしたってみんなアレを本物だって信じてるもの」

「じゃあこのまま黙って見てるの?」

「しばらくは泳がせよう。どうして私達を名乗ってるのか知りたいしね」

そうしていると4人の食事が到着する。その食事を各々食べ始めながらも勇者を語る者の話に耳を傾けていた。

「でもどうする?私達が居る事が分かると逃げられちゃうんじゃない?」

「確かにそうね」

「では、身分を隠して街に溶け込んでみてはどうです?」

「それならこの前使った手で行くか?」

「この前って、まさか」

「これでも芸には自信があるんだぜ」

ウォードの提案はピスラズの時に使った旅芸人に変装するという戦法である。しかし、皆あまり乗り気ではなかった。

「シャルとミリアムは手伝ってくれればいいさ。トロン、お前は教会だかでガキ向けにそういう事してたんだろ?」

「子供が集まった時に手品を見せていた程度ですよ。というか、そもそもとして街に溶け込む程度ならそんな事をしなくてもいいでしょう?」

「そこはやっぱり、楽しみたいだろ」

シャル達は悩みながら食事を摂ったが、食事が終わるまで結局代替案が出なかったためウォードの案が採用される流れとなるのだった。


翌日、街の一角でウォードとトロンが何やら準備をしていた。それと同時にシャルとミリアムは呼び込みをしており、その物珍しさに人々がどんどんと集まってきていた。そして都合よくその中には偽勇者一行4人の姿もあった。人が集まったのを見計らい、ウォードが客に向かって話を始める。なんてことのない芸の前説であった。

「さあさあ、まずお目にかけますのは東洋の国に伝わるとされる芸でございます」

そう言うと、ウォードは少し小さめな傘にボールを乗せ回し始める。そのボールは傘の上を落ちずに空転し続けており、その芸の物珍しさに見ていた観客は各々声を上げていた。

続いてはトロンが芸を披露する。最初は水晶玉を浮かせる様に見せる手品、そしてトランプを使ったマジック、そしてジャグリングと様々な芸をこなしていく。それらの魔法を使っていない芸を見て観客は歓声を上げていた。

一通りの出し物が終わるとウォードが締め、観客たちは拍手をした後に満足気に帰っていた。ただ、偽勇者達を除いては。

「勇者様だとお見受けしますが、どうでしたか?」

シャルは接触するチャンスと思い、偽勇者達の、恐らくシャルのふりをしているであろうリーダーと思われる女性に笑顔で声をかけた。

「ま、いいんじゃない。でも」

偽勇者は続けた。

「まだまだね。こんなのでお金を取ろうと思ってるなら甘いわ」

その言葉は上から目線の言葉であったが、やっつけな発想の付け焼刃なウォード達には的確な指摘であった。

「貸してみて」

偽勇者はそう言うとトロンから道具を借り、仲間達に渡す。すると偽勇者一行はそれらの道具でそれぞれが芸を披露し始める。それは魔法も織り交ぜられており、どれもウォードやトロンがやったものとは比べ物にならない物であった。

「これくらい出来ないと、とは言わないけど、人前でやるならもっと上手くなりなさい」

そう言うと偽勇者はトロンに道具を渡し、去ろうとする。

「ちょっと待ってください!」

シャルは偽勇者達を呼び止める。

「勇者様なのにこんな事も出来るなんて凄いですね。尊敬しちゃうな」

「そう?それほどでもないわ」

偽勇者の顔には笑みが零れており、照れくさそうにもしていた。

「でもどうして勇者様達がそんな芸を?」

「まあ、それは、色々とね」

偽勇者は言葉を濁す。

「よかったら勇者様達のお話しを聞かせてもらえませんか?私、気になります!」

シャルは少し上目遣いで偽勇者の懐に入り込もうとする。その姿はいつもの凛々しい物とは正反対であり、言うなれば天真爛漫な少女である。シャルを知っている人から見ると違和感しかないだろう。

「シャルの奴、なんであんな乗り気なんだ?」

「さあ」

「何か考えがあるならいいんだけど」

ウォード、トロン、そしてミリアムは後ろでボソボソと話す。

「みんなも気になるよね!?」

シャルはウォード達の方を振り向き聞く。咄嗟の事で驚き三人とも同意するしかなかった。

「そう。でも、私達の話は高くつくわよ?」

「お願いします!」

シャルの頼みから偽勇者達はシャル達と共に休める場所に移動し始める。


二週ほど更新しておらずすみませんでした。

ただでさえ書くのが遅いのと、私生活の忙しさなどもあり今後も時々更新が途絶えるかもしれません。

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