アナタらしく、自分らしく 3
朝食を食べ終わると、サクヤ達はメラルの街へ戻り始める。
「リーナ、操縦を頼む。俺はちょっとやりたい事があるからさ」
「それは別にいいわ」
リーナが操縦席に座り、サクヤが後部座席に。その横にそれぞれメラとメルが座り、リュードはメルの頭に乗るという中々に窮屈にも見える空間になっている。
「メラ、メル、掴まってなさいよ」
そう言うとリーナはエスペランザを歩かせ始める。メラとメルは初めての感覚やモニター超しから見られる景色に興味津々な様である。特にメラは「すっげー!メルも、ホラ!」と興奮気味である。その双子とは相対的に、サクヤは後部座席のモニターに集中し何やら調べものをしている。
「何してるの?」
メルがサクヤに話かける。
「調べてるんだ。ずっと経験と勘で動かしてきたから、俺達はエスペランザの事を知らなすぎるんだ。だからこうして、改めてエスペランザについて調べてるのさ」
「へぇー」
メルは分かったような、分かっていないような生返事をする。
「なあリーナ。俺、決めた。これからも悩む事も迷う事もあると思うけど、それが自分の選んだ道ならリーナの言う通り前を向いて進んでいく。それがリーナの言う俺の“自分らしく”だと思うから」
「・・・ふぅん、いいんじゃない」
サクヤの言葉に顔を向けず答えるリーナだったが、その声色にはいつもより明るさがあった様に思える。そう、サクヤは感じた。
メラルの街に戻ると、サクヤ達は町長に会い、結果を報告した。村が蟲の巣窟になっており、その結果死の村と化していた村を燃やすしか手はなかった事を町長に説明すると、町長は納得した様子であった。この話は恐らく町長よりも上の役職の政治屋やこの街や国を支配するディナルドにも伝わるだろうが、サクヤ達のやれる事はひと先ずここまでと言った感じである。町長は「少ないですが」とサクヤ達に報酬として大金貨3枚を渡された。大金貨1枚があれば大体一ヵ月の生活が出来るため、サクヤ達にとっては十分すぎる報酬であった。
それと同時に、サクヤとリーナは孤児となったメラとメルをどうするのかを悩んだ。サクヤ達の旅は言わば敵国に向かって進んでいるわけである。本来ならば町役場などに預け、家族として迎え入れてくれる人を待ってもらうのが理想だろう。しかし、それは彼らの意志を確認してからの方がいいとサクヤは考えた。
「メラ、メル。俺は君たちをこの街で預かってもらった方がいいと思うんだけど、君たちはどうしたい?」
そう言われると、メラとメルは顔を見合わせて少し悩む。サクヤは二人の答えをゆっくりと待っていた。
「俺はサクヤ兄ちゃんとリーナ姉ちゃんとリュードと一緒に居たい」
「私も。メラと一緒に居たいし」
返ってきた言葉はサクヤとリーナ、そしてリュードと一緒に居る選択であった。サクヤはその言葉をキチンと受け止め、その意思を尊重しようと決める。
「リーナもいいかな?」
「いいわ。でも、私達は決して遊びで旅をしてるわけじゃないわ。危険な事もたくさんある。それだけは覚えておきなさい」
「わかった!」
メラとメルが本当に理解しているのかは分からないが、子供らしい元気な返事が返されるのだった。
そして、サクヤがエスペランザで調べた事で分かった事かある。それは以下のことだ。
●エスペランザ:操縦者の意志を具現化するための兵器。自己増殖の行えるナノマシンを利用し搭乗者の想像を武器として形成する「ウェポン・クリエイト・システム」を搭載している。また、そのナノマシンを活用する事により、自己修復機能・自己進化機能もあり、どんな状態になったとしても時間があれば確実に元の姿に復元・改修される様に出来ている。また、場合によっては搭載されたAIによる自動行動も可能。時空の亀裂に対する対抗手段はあるが、莫大なエネルギーを消耗するため場合によっては使えない可能性もある。系列機として「ヴァリエンデ」、「ソムニューム」が存在する。
また、思わぬ収穫もあった。それはエスペランザに蟲の記述もあった事だ。
●次元龍:龍とも蟲とも取れる見た目をしている存在。身体は固い表皮に覆われており、普通の攻撃は通らない。時空の亀裂から現れ街や人を襲うがその目的は不明。また、蜂の様な習性があり、巣を作り繁殖をし、統率の取れた行動をし、時には集団での行動を行う事も確認されている。文献によると、500年前にもその存在が出現した可能性がある。
次元龍。エスペランザを作った文明はあの生命体をそう呼んでいるらしい。
サクヤはその情報をリーナと共有する。この情報からサクヤとリーナが何か出来るわけではないが、少なくとも「自分達がどのような兵器を使っているのか」と「自分達が戦った相手は何者なのか」が分かった事は収穫だと言えるだろう。しかし、今後ももし次元龍と戦う事が起きた場合どうしていくのかはサクヤとリーナは漠然と思う所はあった。
「それじゃあ、ニードへ向かうぞ」
メラルの街に戻った翌日、サクヤ達はいつしかストルツの指定をしたニードという場所へ向かうために旅立ち始める。地図から考えると恐らく数日のうちには到着し、そこでストルツに会えば一悶着あるだろうが、それは覚悟の上である。サクヤとリーナはそれを覚悟しながらも、リュードと、そして新しい仲間であるメラとメルと共にその道に歩み始めるのだった。
文庫本一冊の文字数は約8万~12万字と言われています。本作はWordを使い書いているのですが、そこでの文字数の合計を見ると、ここまで書いて約86000字となっています。つまり大体普通の文庫本一冊の最低ラインといったところでしょうか。
そう考えると小説を一冊書くという事は非常に難しいことであり、一つの展開を長くじっくりとかつ面白く描写することは相当な技量が求められるのだなと思いますね。




