始まりの出会い 6
サクヤは洗濯を済ませ家の中に戻っていた。二人はテーブルに着き休憩をしていると、サクヤが話を切り出した。
「なあ?昨日から気になっていたんだが、その腕って誰にやられたんだ?どう見たって獣にやられた物じゃなくて斬られた物だろう?」
「ほう、鋭いな」
リーナは自分の左腕を摩った。その表情は、話したくない、思い出したくないような顔をしていた。
「これは、勇者にやられたんだ」
「勇者・・・」
リーナは思い出したくもなさそうな、苦い表情をしていた。
「知っての通り、私の国ディナルトは人間の国に侵攻をしているわ」
「確かそれでどっかの国が伝説に倣って勇者を選出して魔王討伐をしようとしてるとか」
「まあ大体その通り。そしてこの近くでその勇者に無様に負けた結果がこれというわけ。まったく、勇者伝説なんてただの物語のはずなのに・・・」
リーナは自分の腕を抑える。その表情は怯えており、体も震えていた。そんな姿見たサクヤは、申し訳ない気持ちになっていた。
「ごめんな・・・」
「謝るな。それにこれは私のミスの結果だしな・・・。」
サクヤは自分の軽率な質問で気まずい空気になってしまった事が耐えられなかった。そんな空気を変えるためにサクヤは考え、一つの提案をする。
「なあ、今から村を回ってみないか?」
あまりにも唐突な提案にリーナは呆気にとられてしまう。
「せっかくサフラトに来たんだしさ!それにその腕、もしかしたらどうにかなるかもしれないんだ」
「治るの?この腕が?」
リーナは身を乗り出した。腕が戻れば自由が戻り、こんな所にいつまでもいなくて済む、そう思ったのだ。
「治るわけじゃないけど・・・、まあとにかく行ってみようぜ」
どこか濁した言葉が気にはなったが、リーナはサクヤと共に外に出る事にした。