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始動する羽音 5

三体の蟲との交戦は終わり、その終わりをイェルクが街の上空を回り伝えた。戦いの音も止み、イェルクの言葉を聞いた住人達は外の様子を伺いつつも、ゾロゾロと顔を見せ始める。イェルクはフェリックスをヒューマフォーム・人型のまま街の中央へと着陸させ、リーナとリュードもそれに合流し自身のフレームゴーレムを収める。すると人が集まってきたためスピーカーで呼びかけを始める。

「この街の町長、一番偉い人間を呼んでくれないか?」

そう呼びかけると誰かが「呼んできます」と言いどこかに向かう。しばらく待っていると、他の住人とは違い明確に身なりの整った男が現れる。

「其方が町長か?」

「えぇ、そうです!」

町長の男は声を張り言う。

それを聞くと「少し待っていてくれ」といい、イェルクはコックピットから降りてゆく。

「先ほどの戦闘で倒した蟲だが二体ほど死骸が転がっている。数日以内にはディナルドの人間に回収させようと思う。もしもの事もある、悪いがそれまで死骸に誰も近づけさせない様にしてもらえるか?」

「えぇ、それは問題ありません」

ディナルドが統治している場所だからだろうか、魔族・デミスの絡む話でも素直に事が運ぶ。すると町長が「一つ気になる事があり」と口を開く。

「先ほど蟲が飛んできた方角にとある村がありまして、実はここ数週ほどその村と連絡が途絶えており・・・」

町長は申し訳なさそうに続ける。

「そろそろこちらで調査をしようと思っていたのですが、もしその先にあの蟲が他にも居るかもしれないと思うと一度考えなおさなければなりません」

「話が見えてきた。つまり俺やサクヤの様にロボットが使える人間に向かってもらいたいと、そういうわけだ」

「えぇ、左様でございます」

イェルクは考え込む。

「ヴェルドに頼んでみてもいいが、こちらで動かし向かわせるとなると時間がかかるな・・・」

「なら俺が行ってみようか?」

横で聞いていたサクヤが申し出る。

「いいのか?あの蟲が、しかも何体も居る可能性だってあるんだぞ?たった二体のロボットじゃ危険だ」

「まあその辺は何とかなるさ。それに早くしないと今日みたいな事がまたどこかで起きるかもしれないだろ」

その答えにイェルクはフッと笑う。

「サクヤらしい答えだ。そういう奴だったな、お前は」

親友の変わらぬ言動に、イェルクは懐かしさで嬉しくなっていた。

「なら頼めるか?」

「あぁ。寄り道になるけどいいよな?リーナ」

「嫌だ、って言ってもどうせ一人で行くんでしょ?私も行くわ」

サクヤの首を突っ込む性分にリーナも慣れ始めており、半ば呆れながらも同意をした。

イェルクは懐から魔力式音声通話機器、通称・魔声機を取り出した。

「俺の携帯番号を教えとく。何かあったらすぐにでも呼べよ。絶対に無茶はするな」

「あぁ、分かってる」

イェルクはサクヤと番号交換を行うと、ついでなのか、はたまた本命なのかリーナの方にも番号交換を求め、無事に手に入れ、小さいながらもガッツポーズをする。

その後、イェルクは町長にサクヤ達の宿を調達してもらうように頼む。町長の話が終わったのを合図に野次馬達がサクヤ達の周りからハケていくと、ようやく落ち着き、ホッと肩の力を落とした。

「そうだサクヤ。せっかくカメラもあるんだし、久しぶりに俺でも撮ってくれないか?二枚だ」

その言葉にサクヤは乗り、リーナとリュードにも入ってもらいながらフェリックスをバックにキメポーズをするイェルクを撮る。インスタントカメラなのでその場で写真が浮き上がると、一枚をイェルクに渡した。

「中々よく撮れているじゃない」

「一枚はもっておけ。Amulett、お守りだ」

「イェルクがお守りなんて不安だな」

冗談っぽく言うサクヤに対し、イェルクもソレに乗る様にサクヤの頭を抱え込み、拳で頭をグリグリと押さえる。

「そう言えば、お前のハイ・ムーバーはどうしたんだよ」

「あぁ。この世界に来た時の着陸の衝撃で動かなくなってさ、修理は頼んでるんだけどこっちの技術じゃ難しくて」

「なら一度俺もディナルドの技術者でも連れて見てやろう。フェリックスの構造が分かればソッチも修理が出来るだろう」

「ならサフラト村のランドって人を訪ねてくれ。その人に頼んである」

「分かった。折を見て行ってみよう」

そうこうしていると町長の遣いの者が現れ、「宿の準備が出来ました」と迎えに来る。

「なら俺は一度ディナルドに戻る。Wir sehen uns wieder. 二人とも、また会おう」

「あぁ」

イェルクは二人と握手をするとフェリックスのコックピットへ戻り、メラルの街を後にする。

それを見送った二人は宿へ赴くのだった。


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