依頼 2
サクヤはリーナと共に村の中心へと向かった。どうしても村の様子、そして負傷した村人達が気になったからだ。村は昨日の惨状のままだったが、ポツリポツリと人がおり、早くも復旧作業が始まろうとしていた。まずは村役場へ向かった。そこではシャルの仲間達は今も負傷者達の看病や、役場での手伝いをしていた。そんな中、シャルは村長、そして見慣れない大柄な男と話をしていた。だが、シャルはサクヤに気付き手を振り、こちらへ来るように手招きをした。サクヤは呼ばれるがままリーナと共にシャルの元へと向かう。
「シャル様。こちらが例の?」
「えぇ」
大柄の男は昨夜の一件を聞いたのだろう。サクヤとリーナの顔を興味深そうに見ていた。
「村長、この人は?」
「この人はワシらの国・アスラの騎士団長を務めているダグラスさんじゃ」
「君がサクヤか。私はダグラスだ。君たちの事は二人から聞かせてもらった。よろしく」
ダグラス。その男は非常に身体が大きく、決して男性としては小さくないはずのサクヤでも見上げる程だった。恐らく2mはあるだろう。そんな巨体にシッカリとした鎧を身に着けていたため、圧倒されるものがある。
サクヤは手を差し出されたため握り返すと、自分の手が潰れるのではないかと思うほどの力の強い握手をされた。
「実は相談があるんだが」
挨拶も束の間、ダグラスが話を切り出す。
「君たちが昨晩倒してくれた炎魔竜なんだが、私達が調査したところ頭に何かが刺さっていてな。私達はそれが竜の暴走の原因ではないかと思っているんだ。だからあの竜が住んでたと思われる山に何か残ってないか調査を頼みたいんだ」
「調査って、俺たちが?」
「本当は私達が行ければよかったんだけど、どうしても先を急がないといけないから行けないんだ・・・」
シャルが申し訳なさそうに言う。
「本当は私達が調査隊を派遣すべきだとは思うのだが、こちらとしてもすぐに動ける人員が限られているんだ。それに村の復興もしないといけないからね」
「でもどうして俺たち・・・ってフレーム・ゴ―レムを使ったからですか?」
「まあそうだな。あの炎魔竜を倒すほどの力があるのなら、やはり頼みたくなるものだ。どうだろう、報酬はキチンと払う。頼めるか?」
「俺はいいですけど、リーナがどうか・・・」
「私はどっちでもいいわ。どうせやることもないんだし」
「なら頼まれてもいいか?」
「えぇ、いいですよ」
サクヤが依頼を承諾すると、ダグラスは「ありがとう」と言いながら二人の肩を叩いた。力強くはあったが、優しさのあるものであった。
「しかし、そのフレーム・ゴーレム、というのを一度見させてもらえないか?」
「ええ、いいですよ」
サクヤとリーナ、そしてシャルとダグラスは表へ出た。
「いいですよ、とは言ったけど、これどうやればいいんだ?」
サクヤは懐から取り出した球体をマジマジと観察する。昨晩、戦いの後にエスペランザが変化した水晶玉だ。
「知らないわよ。そんな風になるのなんて見たことないもの」
「そうかぁ・・・」
サクヤは悩んだ。ダグラスはフレーム・ゴーレム、エスペランザの力を当てに依頼をしてきた。しかし、それが使えないとなるとせっかく依頼を受けたのに申し訳ないからだ。
「なら、こうだ!」
サクヤは水晶玉を持つ手を空へと掲げる。
「出ろ!エスペランザ!」
すると、サクヤの声に呼応するように水晶玉が光始め、水晶玉から一筋の光が飛び出し、エスペランザとなる。それと同時に水晶玉もエスペランザの胸部に収まる。すると、エスペランザがサクヤとリーナを取り込んでしまうのだった。
「消えた!?」
その光景にダグラスは驚きを隠せず、シャルも驚いている様子だった。
サクヤは手元のスイッチをいじる。エスペランザのスピーカーのスイッチだ。
「大丈夫です!この中に居ます!」
エスペランザからサクヤの声が響き渡る。その声に、気になった村人たちもゾロゾロと集まってくる。
エスペランザ。その姿は夜に見た時では分からなかった物も見えてくる。全身の色は黒と白、差し色に赤と黄と言った感じだろうか。顔も凛々しく、口元は塞がっている。しかし10mもある巨体は、より鮮明に映ることで、普通の人々には勇ましく、そしてより恐ろしくも見えたことだろう。
「これがあの炎魔竜を・・・」
「えぇ。だからこそ敵にしたくはない存在です」
「確かに。彼らが人間の味方であり続けることを祈るばかりですな」




