祭りの夜 4
負傷者は多数出たものの幸いなことに死者は出ず、暴れる竜の討伐も完了した。しかしそれで万事解決したわけではない。竜が暴れたことにより村は焼け、その火の手はドンドン広がっていく。村人たちはその火を消すために水を汲み、魔法が使える者は魔法で水を生成し消火活動をしていた。しかし、炎の広がり、広がる速さに対して人手が足りていない。仕方がない話である。皆、先ほどの戦いで疲弊しているのだ。
「このままじゃ村が・・・」
「落ち着きなさい、フレームゴーレムなら」
リーナはコックピットに入れた右腕に神経を集中させる。エスペランザに魔力を通し、エスペランザを通して魔法を使うためだ。リーナが持つ魔力をエスペランザの右腕に集中させると、徐々にエスペランザの右手は輝き始め、次第に水を形成していく。水を形成し終わると、エスペランザは燃える村に水をまき始める。エスペランザは10mの巨体だ。その巨体から放たれる水の量はたかだか2mも行かない人が放つ量とは比にならないものである。その巨体を活かした消火活動はリーナの魔力が尽きかけるまで行われ。なんとか鎮火する事に成功した。
リーナは肩で息をしていた。竜との戦闘、今ある魔力を極限まで使用したことでの疲労が来たのだろう。
「大丈夫か?」
「えぇ・・・」
リーナは大きく息を吸い、深呼吸をする。
「エスペランザ、凄いフレームゴーレムね。私が国で使っていたモノの比じゃないわね。思った通りに動いてくれて、しかもこの力。気に入ったわ」
サクヤにも確かに思うところはあった。サクヤがイメージした武器がその形通りに出る。そんな能力を兼ね備えた存在を作り上げる技術力を持つ存在はどういった者なのかと。しかし考えても仕方のないことだと自分を諭し、落ち着かせた。
そうこうしていると洞窟へ避難した村人たちが次第に戻ってくる。騒ぎの終わりを察したのか、それとも誰かが呼びに行ったのだろう。
「しかしこれ、どうやったら出られるんだ?」
「さぁ、私に聞かないでよ」
「でも、入れたんだから出られるだろ」
するとモニターに文章が流れ始める。しかし、その文章は起動した時とは別の言語であった。
“あなた達が私に指示したい事を念じるか話かければそれを実行します”
「言語が変わった?」
「へぇ、分かりやすくていいじゃない」
「リーナも読めるのか?」
「えぇ」
その言語は起動時とは違うものだった。サクヤとリーナ両名に読みやすい言語となっている。
「じゃあ降りる前にさ、その角と羽、隠しなよ」
「仕方ないわね」
リーナはサクヤに素直に従う。その後、サクヤはエスペランザに降ろす様に指示を仰ぐと、二人は一瞬で地上へと転送された。その後、エスペランザは手のひらサイズの球体へと変わり、サクヤの手の中へと入っていった。その球体はまるでエスペランザの胸の水晶玉のよう部分に似た球体であった。
サクヤは竜の亡骸の方へ振り向き、切り落とした首の方へと近づく。かなり近くまで歩み寄ったところで、手を合わせ、静かに拝み始める。
「何をやっているのよ。また八百万の神とやらにでも拝んでるの?」
サクヤはしばらくすると顔を上げ答える。
「俺なりの供養だよ。気休めかもしれないけどさ」
「ふーん」と流しながらもリーナもサクヤの真似をしてみるのだった。
「クラウン!聞こえているか?いつまで指をくわえて見ているつもりだ!」
「ストルツ様、撤退しますよ」
「なんだと?本気で言っているのか?」
「えぇ、今のあなたなら恐らくアレに勝てないでしょう。」
「そうだとして、このチャンスを逃してなるか!」
「もう次の手は仕込んであります。安心してください」
「ええい、うるさい!」
ストルツは自身のフレームゴーレムを動かそうとする。だが、ストルツのフレームゴーレムの足は動かなかった。まるで誰かに足を掴まれているように。
「くっ、動け!」
「無駄です。少し私の力を使わせてもらいましたよ。もし私の言葉が聞けないと言うのなら、フレームゴーレムごとあなたを壊しても構わないのですから」
まるで、それまで下手だったのが嘘かの様に、クラウンは脅しに出る。ストルツのフレームゴーレムかの影から伸びる腕の様な形状の物は、ストルツのフレームゴーレムの首元を狙っていた。
「・・・仕方ない、撤退する!その方、後で覚えていろよ?」
こうして、ストルツとクラウンはその場を離れるのであった。




