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祭りの夜 3

サクヤとリーナが避難してすぐに、竜は村へと降り立った。松明の灯や人の喧騒に惹かれたのだろう。竜は温厚な生態をしており、その大きさから魔獣よりランクの高い魔竜獣と言われている。しかし、サフラト村へと降り立った竜は温厚さも冷静さも無さそうな様子であった。シャルを先頭に、武装した男達に緊張が走る。竜は村の灯や村人たちを見て余計に興奮をしているのか、目につくものを手当たり次第破壊するかのように暴れ始める。村の人々は慣れないながらも必死に抵抗するが、村人たちはせいぜい畑を荒らす害獣を倒したことがある程度である、やはり20m近くある相手には手も足も出ない状況であった。近づく者は薙ぎ払われ、遠くで出方を伺っている者も破壊された家屋の瓦礫に巻き込まれ、戦える村人がドンドンと減っていく。「近くの村から救援は来ないのか!?」、「無理です!この暗さじゃ来られないですよ!」、「来たって間に合わないでしょ!」などの言葉が飛び交い、焦りが見え始める。怪我人を助けるために人手が割かれ、皆が疲弊していく。

「ここまでなのか・・・」

シャルすらも弱音を吐いたその時、聞いたことも無いような重いドシドシとした音が聞こえ始める。その音はドンドン近づいてき、音が近づくと共に地面が少しずつ揺れ始める。村の人達は何かと思い困惑をし、新しい脅威が来たのかと怯えながら辺りを確認する。すると、東の方向から謎の巨大な影が飛び立ち、竜の顔に拳を打ち込む。燃える火があるとは言え、夜の暗さでその姿はよく確認できなかった。しかし村人の一人が「おい、アレって巨人様じゃないか?」と言い、村人たちは興味深そうに見る。

「皆さん、大丈夫ですか!後は俺たちに任せて下がってください!」

突如巨人が喋り始める。しかし、それは聞きなれた声だった。

「その声、もしかしてサクヤか!?」

シャルが巨人に向かって投げかける。すると巨人は頷く。

「どういうことだ、勇者さん。なんであの巨人からサクヤの声がする?それにあの巨人は」

「今は説明してる暇はありません。ランドさんはウォードと一緒に村の人達の避難をお願いします」

「あぁ・・・、分かった・・・」

「トロン!負傷した人たちの治療を頼む!」

「回復は私の役回りではないですが・・・、分かりました」

先ほどのパンチの衝撃から目を覚ました竜を抑えるためにエスペランザは首を掴み、腋へ抱え込む。しかし、左腕が動いている様子は無く、その抑え込みもすぐに抵抗され、解かれてしまう。

「なにか武器はないの!?」

「待ってくれ!」

サクヤは浮かび上がるモニターを確認し武器に関する事が書いてないか探す。しかし武器に関する記述は無かった。しかしサクヤはエスペランザの言葉を思い出す。

「想像が力に・・・なら!」

サクヤは頭の中で武器をイメージする。

(蛇腹に開いて鞭の様にも使える剣・・・)

するとエスペランザの右手が光を放ち、突如剣が現れる。

「これは?」

「鞭にもなる剣だ!」

「鞭にもなる?よく分からないけど・・・」

リーナはその武器を前へ一振りする。リーナの操縦に連動し、エスペランザの右腕が振られる。すると手に持った剣が分裂し伸び始めると、まるで鞭の様に撓り始める。

「なるほど、そういうことね」

リーナは再び剣を振るう。今度は竜の首に巻きつくように剣を操り、竜の首を固定することに成功する。竜は苦しそうに首を振り、必死に剣を解こうとするが、それは逆に竜の首を傷つけることになる。

「サクヤ!そのまま抑え込めるか!?奴の弱点は腹だ!私が腹の下に潜り込む!サクヤはそのまま抑えていてくれ!」

「分かった!」

エスペランザは頷く。

「リーナ、シャルの言う通りに出来るか?」

「癪だけど、やってみせるわ!」

エスペランザは地面を深く踏み込む。すると、精一杯の力でジャンプをし、竜の首に巻いた剣を支店にしながら竜の後ろへと回り込む。首を後ろへ引っ張られた竜は余計に苦しみもがき始める。その力の強さに片腕しか使えないエスペランザは引っ張られそうになるが、深く踏ん張り、負けない様にしていた。

「なん・・・とォ!」

リーナは力いっぱいペダルを踏みこみ、片腕だけでなんとか耐えようとする。


「ミリアム、頼めるか?」

「うん、分かった」

ミリアムはシャルに杖を掲げ、魔力を込め始める。すると、シャルの身体を魔力の光が纏い始める。ミリアムによる身体強化魔法だ。これによりシャルの身体能力は飛躍的に上がり、同時に防御力、耐久力も上がる。

「シャル、気を付けてね」

「あぁ、行ってくる」

シャルは全速力で走り、竜の懐へと向かう。エスペランザが抑えてくれている今、その好機を逃さないためだ。全身を固い鱗で覆っている竜の数少ない弱点、それは鱗の無い腹だ。シャルは決死の覚悟でその腹に近づくと剣を突き立てる。すると瞬時にその剣に魔法で炎を纏わせ、焼き切る様に尻尾の方まで走り抜ける。シャルは血にまみれたがそれでも突き進んだ。シャルが竜の腹を切り開ききると、竜は項垂れ始め、暴れる力が無くなっていくのが見えた。それを見たシャルは首に巻かれた剣を解き、鞭の状態から剣の状態へと戻した。

もう虫の息だっただろう。しかし、それでも竜は振り返り、エスペランザを視界に捉え、威嚇をしていた。もう覚束ない足取りで今にも倒れそうだったが、それでも自分の姿勢を崩そうとはしていない。

「リーナ、トドメを刺してやってくれないか」

「もうコイツは長くないわ。ほっとけば直に死ぬでしょ」

「だとしても、最期くらい苦しませたくはないんだ。ただの人間のエゴだけど・・・」

「分かったわ」

剣を構えるとエスペランザは、出しうる全速力で竜に距離を詰め、懐まで潜り込むと一気にジャンプをする。その時、すれ違いざまに竜の首に一太刀浴びせると、竜の首は切断され、飛んでいく。

エスペランザが竜の背後に着地をすると、首が取られた竜の身体は、自身が燃やし、破壊した村の中でユラリと倒れる。それと同時に、エスペランザの口元が開く。それはどうやらマスクの様な物で、中から人の様に鼻や口が付いた顔があらわになり、全身から熱が放出される

こうして、村祭りの夜に現れた災厄は息を引き取るのだった。

幸いな事に死者は出る事はなかった。しかし、この夜に竜が村へと残した爪痕は深かっただろう。


とりあえず書き溜めていた分はここまでになります。

これからは溜まったらまたアップするをやっていこうと思うので不定期更新となります。


(10/5)一文だけ加筆をしました

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