ディナルド 3
ディナルド王国。それはサクヤ達が住む大陸と海を隔てた先にある大陸の国である。巨大な大陸全てを一つの国として統一しており、その規模は計り知れないものである。人間が「魔族」と呼んでいる種族、「デミス」が大陸の人口のほとんどを占めている。建築技術も違うのか、その街並みは人間の街とは違い、都会ともなると人間の街では見ない高層な建物なども存在している。
ディナルドの大陸の南西側に存在する首都・カラレス。その中央には巨大な王城が存在している。
「エルピロ!エルピロは居るか!」
エルピロと言う人物を呼ぶ声の主はゴートだった。
「お帰りになられましたか」
その男は物音も立てずに静かに現れる。華奢な体格だからか、それとも気配を消すのが得意だからかは誰にも分からない。
「ああ。報告がある陛下に拝謁出来るか?」
「陛下はただいま自室で職務をなされています。少々時間がかかりますがよろしいですか?」
「構わん」
ゴートはエルピロに指示を仰ぎながら身に着けていた鎧を脱ぎ、身軽にする。
「オーエン、エルス、ダラ。お前達は休んでいていいぞ」
「はっ」
ゴートは謁見の間へと足を進め始める。
謁見の間。それは王城の最上階に位置する部屋である。部屋はとても広く高く造ってあり、ここで立食回などを行う事も可能だろう。部屋の奥には玉座が鎮座している。そんな部屋にゴートは一人跪き、陛下を待っていた。すると部屋の奥の横にある扉が開き、三人の人物が入っている。一人は先ほど居たエルピロ。一人は三人の中で一番豪華な服装をしている男性。そしてもう一人はカジュアルな正装をした女性である。
豪華な恰好をした男が玉座に着く。彼が陛下と呼ばれる男だ。そしてサイドにエルピロ、そして女が付く。
「陛下。この度はお忙しい中」
「前置きはいい。本題を話せ。手短にな」
「はっ」
ゴードは深く頭を下げた後に報告を始める。その一連の話を陛下と呼ばれる男は静かに聞いていた。
「以上になります」
「ほう、リーナベルが生きていたと」
「左様でございます。しかし本人には帰る意思が無いとのことでございます」
「では第三部隊は隊長が不在か・・・」
「そのため、リーナベルからは「隊長は任せる」と託っております」
「ふむ、ではそうすればいい」
「はっ・・・」
「ヴェルド・ラ・ヴェルムが命ずる。ゴート。お前はただいまより“リ”へと昇格とする。その勤め、存分に果たすように」
「ははっ!」
「報告は以上か?」
「はっ!」
「では私は職務に戻らせてもらう。ゴート、今日は休め」
「ありがたきお言葉」
ゴートはまた深々と頭を下げ、その後部屋を後にする。
「ラウラ、ゴートの手続きを頼む。私はあの男の様子を見た後に部屋に戻る」
「はい」
ラウラと呼ばれた側近の女は答える。
「エルピロ、例のフレームゴーレムはどうなっている」
「技術部には修理を急がせていますが、まだ分かっていない機構に手間取っております」
「そうか。なるべく急がせろ。彼にも働いてもらいたいからな」
「招致しました。では私はこれで席を外させていただきます」
そう言うとエルピロは音もなく部屋を後にする。
王城のとある廊下。そこでは男が廊下を落ち着きなく行ったり来たりを繰り返していた。
「リーナベル・・・、リーナベル・・・」
その男は自身の親指の爪を噛みながらリーナベルの名前を呟いていた。長髪で顔は所謂イケメンと呼ばれるタイプの美しい顔立ちである。しかし今は機嫌が悪いからか、その顔はあまり美しいと呼べるものではない。
「そんなにリーナベルが心配ですか」
「誰だ!?」
どこからか女の声がする。それは男からするとどこかで聞いたことある声の様であり、聞いたことの無いような声であった。
「これは失礼。私はクラウン。ストルツ・リ・ナナシヤでお間違えありませんか?」
「そうだが、お前は一体」
先ほどまで気配は無かったはずなのに、クラウンと名乗る人物はどこからともなく現れた。顔にはフルフェイスのマスクをしており顔は伺えず、全身を黒いマントで包んでいるため、身体つきも分からない。しかし声からすると恐らく女性であろう。
「私が何者かなど些細な問題でしょう。それよりも、リーナベルは生きていますよ」
「本当か!?戻ってきたのか!?」
「いいえ」
「じゃあどこに」
「人間の村に居るそうですよ」
「人間の村?どうしてそんなところに・・・」
「そこで、ストルツ様。リーナベルを取り戻しに行きませんか?」
「取り戻す?策はあるのか?」
「ええ、少々面白いことを・・・」
何かの策を講じるクラウン。そのマスクの下は笑っているのだろう。




