ディナルド 2
リーナとシャルが戦った平野。その近くに突如4人の人影が現れた。角の生えた人間、魔族=デミスである。
「隊長が最後に来た場所はここか」
鎧を着た複数の人影の中でもひときわ目立つ人物がそう呟いた。
「隊長無事かな」
「もう二日だろ?」
「まさか人間が出したっていう勇者にやられたんじゃ」
後ろがザワつきはじめる。
「静かにしろ!第三部隊隊長リーナベル・リ・アルクトゥラに代わり、副隊長ゴード・ル・ドルドナが命ずる!オーエン、エルス、ダラ!リーナベル隊長を探せ!どんな些細な物でもいい、手がかりを見落とすな!」
「はっ!」
ゴードと名乗る男の命令を聞き、オーエン、エルス、ダラと呼ばれた男三人が動き始める。三人はそれぞれ違う方向に分かれリーナの手がかりを探す。戦いの痕跡、それがあれば一番の手がかりになる。
「副隊長!」
「なんだ!」
「こっちに来てください!」
エルスがゴードを呼ぶ。エルスが居た場所はリーナとシャルが戦った場所だ。
「この腕」
「これは・・・」
そこに落ちていたのは腕だった。それも人の様な腕。通っていた血液は既に抜けきっており、色は青白くなり、少し干からびた様になっていた。
「間違いない。リーナ隊長の腕だ。それにこれは、獣にやられたモノじゃないな」
「じゃあやっぱり」
「隊長がやられたって言うんですか?人間の、勇者ってのに」
「副隊長が言うなら、そうとしか言えないだろ」
ゴードは辺りを見渡し、他の手がかりを探す。切れた腕を頼りに血痕を探してみるが、既に乾き、土埃で消えてしまっていたため手がかりにはならなかった。
「そうなると・・・、入ってみるしかないか」
ゴードは目の前にあった森へと突き進む。オーエン、エルス、ダラの三人もゴードの後を追うように進んでいくのだった。
サクヤとリーナはすっかり眠ってしまっていた。二人が安眠をしていると草陰が揺れる音がする。その音に反応しリーナはすぐに目を覚まし、何が来てもいいように右手に剣を取った。リーナは警戒しながらゆっくりと立ち上がると同時に、一人の男が現れた。
「人か・・・?いや、その姿、もしやリーナベル隊長か?」
「ゴートか・・・?」
「隊長、お探しました!」
ゴートは声を出しながら近づいてくる。それを追うように三人の部下もついてくる。
「そこの人間は?それに何故そのようなお姿に?」
「静かにしなさい。場所を移すわ」
「分かりました・・・」
ゴートは素直に受け入れ場所を移動し始める。三人の部下は物珍しい顔をしながらサクヤを見ていたが、ゴートに急かされその場を後にする。
リーナは部下を引き連平野に向かい、この二日ほどに何があったのかを話す。勇者に負け、サクヤに拾われ、今は居候の状態だと。ただし村にシャル達が居る事、そして巨人像・謎のフレームゴーレムについては話さずにいた。
「じゃああの男と一緒に暮らしているという事でしょうか?しかも人間の村で?」
「まあ、そうなるわね」
するとオーエン、エルス、ダラがコソコソと話始める。
「おいおい、隊長にも遂に春が来たかよ」
「でも相手は人間だぜ?流石にそんな趣味は無いだろ?」
「それに、そんなことをストルツの野郎が聞いたらどうなる?」
「そこ、聞こえてるわよ」
「お前達、少し静かにしていろ!」
「「「はい!すみません!」」」
ゴートの叱咤により、3人は黙る。
「しかしご無事でよかった。ではすぐにでも国に戻りましょう。陛下にも報告をしなければ」
その言葉を聞き、リーナは考え込む。望んでいた救援、そしてなにより国に戻れる。しかしリーナは何故かその言葉に答えられなかった。左腕を失い、魔力を上手く扱えない今の自分に何が出来るのか。このままサクヤを放置したままでいいのか。様々な考えが頭の中を巡る。
「隊長?」
「・・・私はもう少しここに残るわ」
その言葉に一同は驚く。
「隊長!?どうしてです!?」
「こんな人間の村、しかも何もない田舎なんかに残ったって仕方ないでしょ!?」
「それに隊長が居ないと俺たち寂しいですよ!」
「隊長のご意志を尊重しないわけではないですが、コイツらの言う事も一理あります。本当によろしいのですか?」
「いいわ。どうせこの身体じゃ隊長も務まらないでしょうし」
「しかし、隊長が不在だと第三部隊はどうなります?隊長あってのものですよ?」
リーナは少し考え、一つの結論を出す。
「ならゴート、貴方が隊長になればいいんじゃないかしら?」
「しかし・・・」
「貴方なら”ラ”としてもやっていけるわ。安心しなさい。私が言うんだもの」
「・・・承知しました」
ゴートはリーナに頭を下げる。
「いいんですか!?副隊長!?」
「いいもなにもあるか!隊長が、いや、リーナベル様がそう申されているのなら、そのご意思を尊重するまでだ」
ゴードは改めて顔を上げる。
「では我々は帰還します。しかし、リーナベル様。例え貴方が隊長ではなくなったとしても私達は貴方の事を忘れません。もし助けなどが必要な時は魔声機でお呼びください」
「使う事は無いでしょうけど、覚えておくわ」
「それでは」
会話は終わり、ゴートは部下を連れて帰っていく。その姿を見送りながらも、リーナは自分の選択が正しかったのか自問自答するのであった。
リーナがサクヤの元へ戻ると、サクヤはまだ眠っていた。それを見たリーナは呆れながら肩を叩いた。
「ほら、そろそろ起きなさいよ」
するとサクヤは目をこすり、身体を伸ばし、大きなあくびをした。
「おはよう」
「全く・・・」
「さっきの人達とはもういいのか?」
「なに?もしかして起きていたの?」
「いやまあ、物音でちょっと目が覚めただけというか・・・」
リーナはまた呆れる。仮にも人と敵対している存在が近づいてきてそれに気づいていたのに呑気に昼寝を続けていたのかと。
「さっきのはいいの。それより、起きたなら私の稽古に付き合ってもらうわ」
そう言うと、リーナはサクヤに自分の剣を渡し、リーナは新しく買った剣を持った。
「稽古って、俺素人だぞ」
「とりあえず私の剣を防ぐだけで良いわ」
するとリーナがいきなり振りかかる。サクヤはそれを咄嗟に防ぐ。
「いきなりかよ!?」




