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サフラト村 9

朝。

リーナはサクヤよりも先に目が覚めた。お世辞にも良いとは言えないベッドで寝ていたため、少々身体は凝っていたリーナは、身体を起こすためにも全身を軽く動かし、身体の凝りをほぐした。横を見るとまだサクヤは寝ていたため、起こさないようにそっと動き、家の外へと出た。

春になったとはいえ、まだ朝は肌寒い。白む空の下、囀り、飛ぶ鳥達。そして少しずつ顔を出す太陽。リーナにはそんな朝の空気が気持ちよく感じていた。村はまだ静かとは言え、早起きなのか、既に活動している人もチラホラと居る様子であった。

リーナは深呼吸をすると、軽いストレッチをし、身体をほぐした。ストレッチが終わると再び深呼吸をする。リーナは自分の魔力がどれほど回復したのかを確認するために、何も持たず右手を前に突き出した。身体中に流れる魔力を右手に集めるかのように意識を集中する。すると右手が光始め、リーナの右手から水が溢れだした。しかしそれはまだ勢いに欠けるものでもあった。

「まあ、こんなものね」

リーナはもうない左腕を見つめ、残っている部分を軽く摩った。先の戦いでの極度の魔力切れ。そして左腕を失ったことにより。身体の魔力がまだ安定していない様子であった。

自身の魔力の確認を終えたリーナは家の中へと戻った。まだサクヤは眠っていたため静かにテーブルの椅子へと腰掛けると、少しサクヤの顔を見た後に窓の外を眺めた。

リーナは色々なことを考えた。もし今このまま家を出て、どうにか国に帰ることもしようと思えば出来る。来て二日の、それも人間の村に愛着などない。左腕も自分の国に帰ればなんとかなるだろう。それに自分はディナルドにおいてそれなりの地位を持つ存在だ、勇者シャルロットとの戦いの場に来た時の転送陣が魔力不足で使えずとも、「魔力式音声通話機器」、通称「魔声機」を使い国と連絡を取り、部下かに助けを求めることだって出来る。このままこの村でサクヤの世話になるよりも、自分のやるべき立場に戻り、また国へ尽くすべきだろう。せいぜいここを去って心残りになる事は、サクヤへの恩返しをしなかった事だろう。恩人に対して何も返さない事は自分のプライドに傷がつく。だが、たかが人間に恩を返すよりも国に尽くす方が大きな事だ。

しかし、その様な考えも浮かんでは消えていった。何故だかその行動を起こそうと思えなかったのだ。リーナ自身何故そうしたくないのかが疑問であった。

行動を起こす気が起きない以上はもう少しここで身体を休めよう。リーナは窓の外を眺め、そしてサクヤの顔を見ながら漠然とそう考えた。


しばらくするとサクヤが目を覚ます。陽は完全に昇りきり、外では村の人達の声が聞こえていた。

「おはよう。お寝坊さん」

「リーナ?もう起きてたか?」

「貴方が気持ちよさそうに寝てた間にね」

サクヤは眠気が一気に吹き飛んだかの様に驚き、立ち上がった。

「ごめん、すぐに朝飯の準備するから!」

「そんなに急がなくてもいいわ」

サクヤは一度外に出て井戸から水を汲み上げ、うがいをし、顔を洗う。その後、もう一度水を汲み、溝を入れた桶を持ち部屋に戻るとスープの鍋に少し水を足し、残りを飲み水のポットへと入れる。鍋をかき混ぜながら、手際よくパンを焼き、次々と朝食をテーブルに並べる。

二人分のスープを注ぎテーブルへ置くと、ようやく腰を掛ける。

「おまたせ。じゃあいただきます」

サクヤは自分の胸の前で手を合わせ、会釈をする。リーナが食べ始めたのを見てサクヤも朝食を食べ始める。

「今日は俺の仕事に付き合ってもらおうと思うけどいいか?」

「別にいいわ。どうせ一人で居ても暇なだけだし」

二人は朝食を済ませると、家を出る準備をする。サクヤはいつもの様に仕事道具を一式、護身用の短剣、そして昼食として持ち歩いているパンとも違う乾燥した食べ物を持った。そしてリーナは今まで使っていた剣、そして新しく購入した剣の二本を背負った。

「それ要るか?重いし置いていきなよ?」

「持っていくわ。今の身体でも戦えるようにしないといけないし」

「戦えるって、またシャル達と戦うつもりか・・・?」

「当たり前じゃない。私はディナルド七部隊の隊長の一人よ。こんなところでいつまでもくつろいでばかりじゃいられないでしょ」

サクヤは少し寂しそうな顔をしていた。それを見たリーナは何故か少し心が痛む感じがした。

「とにかくこれは持っていくわ。貴方にもリハビリに付き合ってもらうから」

サクヤとリーナは西の森、出会った場所である森へと向かった。道中では村の色々な人から冷やかし気味な声をかけられたり、噂好きな人達が噂話をしたりしていた。人が多いと言っても村と言う狭いコミュニティなので、誰かに彼氏・彼女が出来たなどすぐに噂として広まる。ましてやサクヤの場合は家に女性を連れ込んでいる状態なので仕方のない話である。そんな状況なので直接冷やかされるとサクヤは愛想よく否定しながら歩いていた。


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