サフラト村 6
その後サクヤはリーナを南側の服屋へと案内した。リーナは服に無頓着そうな素振りを見せて居たが、「俺の家には男物しかないからさ」という強引な文句を渋々聞き入れ向かったのであった。
村の服屋ではあるが、村で唯一でかつ都会から服や下着を仕入れているものあり、商品はピンキリで様々だった。そこで店員のオススメを聞きつつも適当に服や下着を2、3着ほど見繕い店を後にした。
店を出るとサクヤは北側にある温泉に案内し、そこで二人は身体癒すのだった。
「じゃあ後は晩飯でも買って帰るか」
サクヤが帰ろうとすると少し考えるように止まった。
「どうした?」
「なら買い物を済ませて先に帰っててちょうだい。私はあの男の店にもう一度行ってみるわ」
「あの男の店ってランドさんの?」
「確かそんな名前だったわね、そこよ」
「分かった。なら先に帰ってるから。気をつけてな」
そうすると、二人はそれぞれ別の方向へと向かった。
リーナは「閉店」と書かれた看板を無視し、店の扉を開けた。するとカウンターには店を閉める作業をしているランドの姿があった。
「オイオイ、閉店の文字が読めなかったのか?って嬢ちゃん、どうした?」
「ここで一番軽い剣を頂戴。お金ならあるわ」
「藪から棒にどうしたよ?」
リーナは事情を説明した。左腕が無い今、今までのように剣が振るえない。しかし、それは不便なので新しい武器を買いに来たということだった。
「ならいいのがあるぜ」
そういうとランドは店の奥へと入っていき、しばらくすると一本の剣を持ってきてリーナへと渡した。
「これは他の剣よりも軽い金属で作られててな、店に置いてある剣だとかなり軽い方だ。嬢ちゃんでも片手でちゃんと使えるはずだぜ」
「中々良いわね」
「それに魔力伝導率もいいから、嬢ちゃんみたいな魔力の強さを持ってる人間が魔法を放つ時も、魔法の実力を引き出してくれるぜ」
「いいわね、いくら?」
「ほんとは小金貨3枚なんだが、今回は小金貨1枚でいいぜ。それに肩掛けの鞘も付けるぜ。サービスだ。」
小金貨1枚。大金貨1枚もあればディナルドの田舎なら一ヶ月生活出来るためそれなりの金額である。しかし、それだけの、いや、それ以上の価値があるとリーナは確信した。
そうするとリーナは懐から小金貨を差し出した。
「毎度。って、これってディナルドの金か?」
「そうだけど?」
「そら使えないぜ。これでも価値は変わらないと思うが、ここは大陸共栄硬貨でしか扱ってないんだ」
「そう、困ったわね。どこかでディナルド硬貨を替えてくれる場所はあるかしら?」
「この村にそんなものはねえぜ。この近くならガルドの街くらいには出ないとな。まあ行ったとしても取り扱ってはくれないだろうがな」
「そう。じゃあ今回は諦めるわ」
リーナは剣を置き、店を去ろうとする。
「待ちな、嬢ちゃん。今回は特別だ。義手と一緒にツケとくからな」
「そう。感謝するわ」
リーナが剣を持ち、店を後にしようとするとランドが呼び止めた。
「嬢ちゃん!」
「何?」
「今日は楽しめたか?」
「・・・まあまあね」
「それは良かった」
ランドの笑顔は眩しかった。何故サクヤといいランドといい敵である「魔族」にここまで優しくするのか、リーナにはそれが疑問でしかなかった。そして、その裏表もない笑顔を見ると、本当にディナルトがやろうとしている事は正しいのか。リーナの心は揺れていた。
そしてリーナは店を後にするのだった。
「こんなにお金があっても、使えないなら宝の持ち腐れね」




