サフラト村 5
各々が昼食を終え、食後で落ち着いているとサクヤが口を開いた。
「俺たちこの後巨人像を見に行くんだけど、みんなも行かないか?」
「待て、まだコイツらと居るつもりか?」
「まあいいじゃない。それでどうする?」
皆は少しだけ考える。
「巨人像とは村の真ん中にあるアレじゃないのか?」
「アレの元になったものさ。村の東の森にあるんだ」
すると、勇者一行は口々にシャルに話しかける。
「いいじゃないですかシャルロット、村祭りも見ようと思っていたところですし」
「面白そうだしな、行ってもいいんじゃねえか?」
「シャル、どうする?」
シャルは3人の言葉を聞き即決をする。
「なら案内をしてもらってもいいか?」
「俺も行ったことないけど、まあ任せてくれよ」
「オイオイ、大丈夫なのかよ」
サクヤ達は森を進んでいた。森と言っても道は整備されており、知識のない人間が入っても何も問題なく迷わないような拓けた道となっている。どこを見ても木ばかりな変わらない風景のその道を進んでいくと、洞窟と、そして何かの像が見えてくる。そこを目指しサクヤ達は歩いていた。
村の門から出て歩いて10分ほどの距離の洞窟まで来ると、洞窟の入り口のすぐそばに、その巨人は項垂れるように座っていた。全体は砂や堆積した泥などが覆っており、さらにその上にコケなどが生えており、長年その場所にこの状態で居たことが見て取れる。座り込んでいるため全体の大きさはよくは分からないが、立てば恐らく15mから20mを前後するほどの大きさがあるだろう。その大きさは、村祭りで建てられる巨人像とは比べ物にならないほどである。座っていても10mほどの大きさはあるであろう見上げるほどのその巨体に、一同は驚愕していた。
しかしサクヤは、驚くと同時にその巨人の姿に違和感を覚えた。巨人像と言うからには巨大な岩を切り出して作ったものとサクヤが思っていたが、この巨人はそうではなかった。人工物であることは確かなのだが、この世界には存在しえない物、この世界の技術でこれを作りだす事が不可能だと思ったからだ。
一同が驚き、まじまじと見ている中、リーナは巨人像に近づき、おもむろに触り始めた。脚と思われる場所を一通り触りながら観察し、その後翼を出し飛ぼうとしたが、サクヤの服を借りているため背中が開いていない事を思い出し諦めた。
「やはりね」
リーナは何か納得した顔をした。
その発言が気になり、サクヤが聞き返す。
「やはりって、何がだよ?」
「これはただの巨人像なんかじゃない。”フレームゴーレム”よ」
「フレームゴーレム・・・?」
皆、聞きなれないそのワードを疑問に思った。
「何だ?そのフレームゴーレムと言うのは?」
「我が国ディナルトが保有している兵器よ。これに乗り込めば自由に動かすことが出来るし、それこそ人の国を支配することだって出来るわ」
「それじゃあまるでロボットじゃないか」
サクヤの疑問は確信に変わった。やはりこれはこの世界の産物ではなくもっと別の世界から来た何かだという事が。
「何故ディナルトの兵器がここにある?」
「ディナルトで作ってるからじゃないからよ。これは500年ほど前にこの世界に降ってきた異界の物らしいの。そのほとんどはディナルトが回収したと言われてるけど、こうして残ってるのもあったとはね」
「異界?降ってきた?よく分からねえ話だな」
「アナタには理解出来ない話でしょう」
「じゃあお前は分かるのかよ」
「いいえ、全く」
シャル達はリーナの話を理解していない様子だったが、サクヤだけは納得をしていた。そして同時に皆が疑問に思った。ディナルドは一体いくつ同じ物を持っているのか。何故ディナルドはフレームゴーレムなるもので攻め込まないのか。そしてこのフレームゴーレムは動かせるのか。
「しかし、リーナの話が正しいならこれも動かす事は出来るのか?」
「「動かす」という意味では出来るかもしれないわ。これでも私にもフレームゴーレムがあるからね。けど「動く」という意味ではコレ次第ね」
「リーナベル、お前もこの巨人を・・・?」
「国にあるわ」
「では何故ディナルドはこれを使わない?勇者という肩書を持つ私が言うのもなんだが、コレさえ使えばお前達の目的である世界征服はすぐに成し遂げられるだろ?」
「シャル・・・」
「事実さ。情けない話だけど、こんなものが相手なら太刀打ち出来ない」
シャルはその質問をしながらも内心は恐怖していた。もしこんなものが何体も侵攻してきたら、もしこれを一つでも相手をすることになったら、自分達は勝つことが出来ないだろうし、どの国のどの軍が相手をしても何も出来ずに蹂躙されて終わりだろう、そう直感したからである。
「使ったわよ。どこだったかしら。確かアルラとかいう国だったかしら」
「アルラ!?じゃあ私の国を、都を制圧した巨人はこれなのか!?」
シャルは驚き、怒りを抑えながらもリーナへと詰め寄る。
「あら、貴方の国だったの?まあ安心しなさい。使ったといっても誰も傷つけていない無血開城だと聞いたわ」
「安心しろ?お前は国を奪われた人間に気持ちが分からないのか!?」
シャルは自分の国を制圧した側のその言葉に怒りを抑えきれなかった。ミリアム、トロン、ウォードは今にもリーナに襲い掛かりそうなシャルを必死に抑えようとしている。
「分からないわね」
「お前!」
「はいストップ!」
リーナとシャルの間にサクヤが入る。
「ここで喧嘩したって仕方ないだろ。それにリーナ、流石にお前が悪いぞ」
「ほらシャルロットも、サクヤさんの言う通りですよ」
一触即発な雰囲気だった二人をなんとか宥め、落ち着かせる。
それからというもの、帰路ではすっかり会話が無くなっていた。皆知りたくなかったこと、知らないほうが良かったことを知ってしまったため無理はないだろう。そうこうしていると皆は村へと到着し、中央広場へと一度集まった。まだ陽が短く、傾くのが早い時期なため、もう既に空の太陽は西の方へと傾きを見せていた。祭りの作業をしていた人たちも、もう少しの仕事は追い込みをし、そうでない仕事は片付けに入っていた。
「私たちはもう少し村を見て回ろうと思う」
「ならここで解散でもいいか?」
「あぁ、今日はありがとう。それに、アナタの様な人のそばならリーナベルも何かをしようとはしないだろう」
リーナは「ふんっ」と言いながら顔を逸らした。リーナとシャル、両者は敵同士であるためこの短時間で打ち解けられるわけはないだろう。
「しかし、もしリーナベルがまた何かしそうになったら、その時は容赦はしないぞ」
その言葉はサクヤにも緊張が走った。自分はあまり魔族など気にしなかったし、今は素直なため考えてはいなかったが、確かにリーナは人間と敵対する"魔族"と呼ばれる存在である。もしもその様な存在が暴れ始めたら。あまり想像したくない話だとサクヤは思った。
「私たちも村祭りを見物しようと思っているから3日間ほどこの村に居ようとは思っている。もし何かあれば北側の宿屋に来てくれ」
「分かった。頼りにさせてもらうよ」
そう言うとシャルとサクヤは強く握手を交わし、その後、勇者一行は手を振りながら北側へと向かっていった。
「シャル、あのままで本当にいいのかな?」
ミリアムは疑問に思った。昨日戦ったばかりの敵をそう簡単に許容できるわけがないし、ましてやただ一人の無関係な村人に任せるのは不安でしかない。
しかしそれはミリアムだけでなく一緒にいる仲間全員が思ったことだ。
「私だって不安だよ。でも今のリーナベルは手負い。それに人に攻撃しようとする意志は無かったから」
「いささか不安の残る判断ですね」
「しかしあの男には敵意を向けてなかったな」
「そうだな。不思議な男だ、彼は」
いよいよロボットが出てきました。
今後重要になるので忘れないでもらえると嬉しいです。




