サフラト村 4
サクはリーナと勇者一行を連れ村の南側にある飲食店に連れて行った。道中金髪の少女・シャルは様々な人に挨拶をされており、歩きながら手を振り返していた。そしてリーナはそんな勇者に怯えながらも警戒し歩いている様子だった。
店に着くとテーブル席に着き、カウンターの方に掛けられた木札のメニューから食事を選んでいた。全員が選び終わったかを確認すると、昼から酒を飲みながら賑やかにしている客や、楽しそうに会話をしている声に負けないようにサクヤは店員を呼んだ。
「じゃあ俺は日替わりランチセットと水で」
「なら私も同じくランチセットを。飲み物はホットワインで頼む」
サクヤとリーナが頼み終わると、勇者一行の注文が始まる。
「私もそのランチセットでお願いしてもいいですか?飲み物はミルクで」
「わ、私は、サラダとチーズとスープを。それと飲み物はミルクで」
「ワタシは豆のサラダとポテトとスープを。ワタシもミルクで」
「俺はステーキセットとビールを頼むぜ」
全員が注文を終えると、店員は確認を取った。
「セットの人にはパンが付くけど、他の人は大丈夫かい?」
「あっ、じゃあ私もお願いします」
赤髪の少女が注文をする。
「はいよ。じゃあ待っててね」
店員が厨房に戻る。すると背の高い男が口を開く。
「全く、昼からビールとは。もう少し自制をしなさい」
「なんだと?」
背の低い男が少し怒ったように返す。
「大体、ステーキだけなんて栄養が偏るでしょう。ちゃんと野菜も食べなさい」
「うるせえ。お前みたいな菜食主義者じゃないんだよ。それに身体を作るなら肉を食ってなんぼだろ」
「ワタシは菜食主義者じゃありません。それにバランスを考えろと言っているのです」
それぞれが喧嘩腰になったため赤髪の少女が慌てて止めに入ろうとする。そしてシャルは呆れた顔をしていた。
「すみません。二人はいつもあんな感じでして。ほら、二人とも」
「た、大変なんですね・・・」
サクヤも同情するように答える。しばらくすると二人はいがみ合いを辞めた。
「そういえばまだ自己紹介してませんでしたね」
「そういえばそうですね。あと、そんなに固くならなくてもいいですよ。俺もそうさせてもらいますし」
サクヤは答えた。サクヤはあまりに堅苦しい言葉遣いというものがどうにか苦手だ。自分がやるのは良いが、相手にやられるとどうにもむず痒く感じてしまう、そういう人間なのだ。
「そうですか。ではそうさせてもらう」
シャルは改めて姿勢を正す。その表情は少し砕けた物になった。
「では改めて、私はシャルロット・プランタン。勇者をやらせてもらってる。気軽にシャルと呼んでくれ」
金髪の少女が名乗る。髪は首に掛かるほどの長さで、整えている感じは無い。年齢はサクヤより年下、恐らく15歳前後だろう。鎧などの防具は身に着けていないが、護身用だろうか剣は持ち歩いている。
「つ、次は私ですか?私はミリアム・エーデ。シャルの幼馴染で、魔法でみんなのサポートをやってます・・・」
「ミリアムは人見知りでな」
ミリアムと呼ばれ赤髪の少女。天然パーマの様な癖毛で、短めの髪をしている。顔にはそばかすが少々あり、見た目もシャルと同じほどの年齢感である。
「では次はワタシが。ワタシはトロン・ロント。教会で神父をやっていましたが、こう見えても攻撃魔法が得意なんですよ」
背の高い男は神父を名乗るように、服装も神父の正装と言った感じをしている。年齢はサクヤより上、恐らく30歳弱といった年齢だろう。
「最後は俺か。俺はウォード・ノート。見れば分かると思うがドワーフだ。鍛冶師をやっていたんだが今は魔王討伐とかいうのに駆り出されてこうして旅をしてる」
ドワーフだという背の低い男。鍛冶師だというように、厚い服を着ていながらもその身体つきの良さはサクヤにも分かるものだった。
「駆り出されたって、そういうものなのか?」
「まあ私たちにも色々あるんだ。なにせ私たちの国はディナルドに支配されたようなものだからな」
シャルはそう言いつつリーナの方をチラリと見る。リーナから聞いた話から察するにこの二人は戦った仲、それもリーナの腕を切り落とした張本人なのだろうとサクヤは察していた。しかし険悪な空気を続けるわけにはいかないのでサクヤも自己紹介をすることにした。
「俺の自己紹介がまだだった。俺はアツタ・サクヤ。この村では山菜なんかを採って暮らしている」
するとトロンが口を開く。
「アツタ。珍しい名前ですね?その名前だとヒノワ出身でしょうか?」
「リーナにも聞かれたんですけどそうじゃないんだ。まあ色々あって」
「しかし、サクヤ何故リーナベルと共に居る?分かっているとは思うが彼女は・・・」
「それは分かってるよ」
サクヤは自身とリーナが出会った事、そしてどうして一緒に居るのかの経緯を話した。山で怪我をしていたリーナに出会った事。傷の手当てをし、自宅に連れて看病をした事。そして左腕を治そうとしている事。シャル達は驚いた顔をしていたが口を挟むことはなかった。そうしてるとタツヤ達の前に食事が届く。頼んだ人数分のパンが運ばれてきた後に、サクヤ、リーナ、シャルの前にはサラダと蒸かした芋、野菜が入ったスープ、そしてソーセージが2本ほど添えられていた。ウォードの頼んだステーキは豚肉の様な肉が厚切りとなっており、塩のみの味付けとなっている。
食事が届くと一度会話を止め、各々の「いただきます」をし、食事を始める。シャルとミリアムはテーブルマナーには沿っていないが丁寧に、トロンはマナーに沿ったような丁寧な食べ方、対象的にウォードは豪快な食べ方をしていた。
そしてサクヤは自分の食事をしながらも、リーナが食べづらそうな時は気を回しサポートをしながら食事をしていた。その姿を見たシャルは何かを納得したような顔をしていた。
食事は皆和やかに、打ち解けた空気になりながら楽しく過ごしていた。




