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想いは放置されたまま

お読み頂き有難う御座います。

家に帰ったシャンティです。

「シャンティお嬢様……よくご無事……ぶじ……ううう!」


 あれから……家のお風呂に叩き込まれて、何時も使わないお高そうな……これ、新作かしら。いや、十年寝てた? 漬けられてた? から旧作? の化粧品をラメを落とされた後に塗りたくられて……顔色の良いシャンティ、此処に今復活よ!

 ……髪の毛の中にラメが残ってる気がするな。微妙にザリザリするわ。


「お嬢様……何てお労しい……ううべふっ、ぐすっ」

「えーとノカ……よね?」


 侍女服がリニューアルしたのかしら。微妙に違うけどノカの顔面岩石と呼ばれた顔は……岩石じゃなくなってるわね。何と言う顔芸……いえ、表情豊かになったのなら良かったこと。


「そうです、ノカでございばふううう! ちょっと! お嬢様の御髪を梳くのはその櫛じゃなくて2つ隣!」

「す、すみません主任!」


 ……大して歳の変わらなかったノカが最早ベテラン侍女の風格を……。

 しかし、主任侍女って何なのかしら。そんな役職ウチに有った?

 まあ兎に角、ノカも庭師と結婚して四歳の子供が居るらしいわ。何時の間に……。そういう手当込みの主任なのかしら。

 ……分からん事だらけだわ。このお風呂場も……位置は同じなのに、見覚えない内装だもの。


「お風呂場、リフォームでもしたの?」

「はい、5年前に完成しました! ミントグリーン好きなお嬢様専用のバスルームです」

「へー」


 ……私、ミントグリーンが好きなんだけど……この蛇口に絡まってる草の模様、もしかしてミントの葉っぱ?

 ……お風呂場自体の造りは濃いグリーンと象牙色のタイルよね。ミントグリーンの気配が無いわ。

 まあ、上品で良いけど……何かちょっと外してるな。


「シャンティ、散々な目に遭ったな……」

「うう、あんな目に遭わされるならシャンティを領地の隅に追いやるんだったわ……」

「何で私が追いやられる羽目に……。それに、領地の隅って断崖絶壁村じゃないの? 滅茶苦茶嫌よ」


 お母様が泣き通しでさっきから滅茶苦茶な会話なのよ。

 さっきから話が進まなくて進まなくて。

 お父様ですらお前が帰ってきて良かったっ! って50回位連呼してるのよ。もういい加減聞き飽きたわ。


「お祖父様とお祖母様は?」

「お前が漬けられてから領地に籠られてしまって、今全力で向かっているとの知らせだ」

「漬け……。

 そうなのかもだけれど、他に言いようは無いの? 封印されてたとかこう、キレイで神秘的なイメージの単語……」

「そんな事はどうでもいいんだ。あんなのに見初められたせいで……」

「シャンティイイイ!」


 ええ、白髪が増えた両親に涙ぐまれた時には心は大いに揺れたわ。痛みもしたし、目も潤んだわよ。

 ……でも、流石に、馬車の中からループしてんのかって位同じ展開を3時間くらいやられたらね。

 もういいだろいい加減! って気にしかならないのよ。


「いや、それはもう良いわよお父様。その漬けられた理由を説明して頂戴よ」

「お前は本当に図太い……」

「だから選ばれてしまったのね……」

「いやだから、どういう事なの……。今直ぐ泣き暮らせってこと?」

「だってシャンティ、お前は身分の上では26歳なのよ? 花の盛りをあんなピンクの中に漬けられて……!」


 ピンクの中に漬けられて……とは確かに変な体験よね。でも、流石にね。話が進まなくてイライラしてきたわ。せめて、何とかプラスな方向に話を向けられないかしら。


「でもこの髪色良いと思わない? けたたましい王族ピンク頭より上品で」

「それはそうね……」

「けたたましい王族ピンク頭とは何だ!」


 しまった、話のチョイスを間違えた! お父様が面倒な位怒り出してしまったわ。


「兎に角……今日はゆっくりとおやすみなさい」

「……いや、説明……」

「ほらあなた、私達も……」

「うう、精霊があんなに腹立たしいものだとは……信仰したかない……」


 ……精霊があんなに腹立たしいものだとは? どういう事なの……。私が漬けられた以外に何かをされたのかしら。


「でも、え。ちょ、お父様にお母様……」


 えー。嘆くだけ嘆き倒して、意味不明なまま中途半端に放置されたわ……。

 残されたのはノカと数人の侍女と私のみ……。


「結局精霊漬けって……何なのよ。

 それに、ライくんとハッピーマリッジの件も!」

「やはり、精霊の御使者と幸せな御結婚をなさるんですね、お嬢様……」

「私の意志じゃ無いけど!?」

「違うのですか? お嬢様が目覚められてからそのムードで持ちきりですが」

「……ノカ。私、ライくんとは初対面に近いのよ? 何のハッピーが生まれるの?」


 いや、ハッ! じゃないわよ。横の侍女達まで複製レベルで同じ顔してるし。


「漬けられているお嬢様と、精霊の御使者様とでピンクの精霊漬け越しに高度な恋愛が有ったのでは……」

「そんな特殊能力は無いわよ!!」


 目覚めたら皆が老けてたと叫んだら、流石にショックを与えてしまったわ。

 でも、おかしいでしょ!

 普通、乙女が不思議な眠りから目覚めたら、詳細で綿密なあれやこれやがテキパキと語られるもんじゃない!?

 どんだけ狼狽えてんのよ!

冷静沈着な説明役が早急に求められますね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ピンクの精霊漬け・・・。 しかもかなりの古漬け・・・。 食べられたもんじゃないと。 ノカさんがご存命でなによりです。 腹心がいないと話が進みませんから。 [気になる点] 狼狽えていると言…
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