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公爵令嬢、眠りを齎される(過去編)

お読み頂き有難う御座います。

シャンティの覚えている範囲の過去編、此処までですね。

 あの後……帰るのに何と3時間掛かったのよ。

 余りにも道が混んでるものだから。脇道に逸れるのも馬車が大きくて無理だし……。まあ、5人乗りの馬車はコンパクトにならないものね。流石に2時間位座り通しで、膝と腰が痛くてお祖父様とお祖母様が音を上げてしまったの。

 仕方ないから修道院で一時避難させて頂いたわ。

 道が空く迄子供達と戯れ……るのはやっぱり正装は駄目ね。滅茶苦茶暑いのなんの。帰ったら即行で家族全員お風呂に入ったわ。


 さて。

 今日も蒸し暑いけど、仕方ないわね。集まらざるを得ないもの。いや、陛下から来なくて良いって言われたけど、行くでしょそりゃ。

 この……何ていうのかしら。お告げし直し会? はやっぱりセンセーショナルよ。

 まあ、前代未聞らしいわね。基本……と言うか、スパークル家が選定される歴史しか無かったらしいし。

 あ、混みすぎるから、今日の精霊広場は立ち入り禁止になったらしいわ。この前も激務を担ってくれた警備騎士達には、何か差し入れをすべきね。


 まあ出来レース? いや、精霊に出来レースって概念が有るのかは知らないけれど。

 でも、御使者様は誰しもスパークル家の血を引いてんのよねえ。勿論選定し直しとは言え当代? も。

 今から思えば、選定し直しって気の毒かもしれないわ。その、マッシブスパーキン家の次男の子供……滅茶苦茶選ばれたかったのかもしれないし。えーと、名前何だったかしら。ピカッテール様へお告げし直しが来るかもしれないしなあ。


「全く面倒な……」

「まあまあ、貴方。民の声に耳を傾けないと暴君と呼ばれてしまいますわよ」


 で、今回は余りにも蒸し暑いから、王族は王宮に待機なの。

 まだ涼しい室内なのに、伯父様……陛下の不機嫌度はマックスみたい。

 親族中で一番気が短いのよね。王妃殿下(おばさま)に宥められても眉間と顎のシワが消えていないわ。


 でも、今回は50人体制の大会議室待機ではなくて、国王家族に王弟王妹家族のみの部屋になっているの。それでもまあまあ多いけれど。因みに我が家のお祖父様お祖母様はパスされたわ。先王陛下夫妻(ちちかたのそふぼ)を含め、各家の高齢者がたも、そうされたみたい。余程先日体に負担が掛かったようだわ。

 それなら人数少なくなるし、お部屋を何故分けたのか……まあ、余程一昨日の会議室が暑苦しかったのね。分かるけど。

 でも、不機嫌オーラを浴びない別室待機の王族が羨ましいわ。


「そうだ。シャンティ」

「ハイ、陛下」


 急に何なのかしら。イライラと無駄に歩き回ってるんだから伯父様が来られりゃいいのにね。


「シャンティ・マリメリ・ソノサン公爵令嬢を御使者様……マッシブスパーキン家の次男坊がお望みだそうだ。まさか選定し直しで選ばれなくとも、そのつもりでいるように」

「アァア?」


 いや、何で私!? ちょっと歌劇の下っ端チンピラ役みたいな声をあげちゃったけど!

 私が!?

 まさか、何時、見初められた!? 子供に!? いや、悲しいことに同世代よりも子供にはモテるけれど!


 え、そもそも何処で会ったの!? この頃子供と会う機会が多いからサッパリ分からない!

 しかし、王家のカリエン王女もエン侯爵家のロリゼタもおるじゃないの!? あのふたりも慰問によく行っているわよ!?

 何ならカリエンなんて、家の中に乳幼児院が有るから、滅茶苦茶お馴染みでしょう!??

 それに言いたかないけれど、私達親戚特有の似たような特徴顔よね!? 今も似たような微妙な顔で笑ってるの、腹立たしいわ!!

 会った覚えの無い子供に好かれてるの、おかしいわ!

 絶対に人違いよね!?


 はっ! 背後からホッとしたニヤニヤ顔をしている気配を感じるわ!


「ちょっと! カリエンにロリゼタ!! 何ホッとした顔してんのよ!?」

「嫌だわ誤解よシャンティ、光栄なご指名じゃない!!」

「そーよ! 声も顔も怖いわよシャンティ!! スマイルスマイル!」

「煩うええええい! 其処へ直れええええい!!」


 ちょっと取っ組み合い……いえ、童心に返ってしまったのは仕方ないわね。

 ええ、お恥ずかしながら私達、少しお転婆なのよね。


「止めんか馬鹿者共!! ボケっとしとらんでそち等も止めぬか!」


 忙しい両親は王宮に幼い私達を預け、従兄弟の中で育ったの。懐かしいわ……。


「稀に見る大乱闘だった!」

「酷すぎる」

「パワーアップしてる!!」

「野獣の嫁にしか行けないレベル!」

「止めに入った側が負傷して、奴らが無傷なのおかしい!」

「背負い投げ喰らった!! 酷い! このオニゴロリの群れ共!」


 絨毯の上で少し小突いた位で、ひ弱な従兄弟共ね!! ていうかオニゴロリ呼ばわりの誰だ!! 巣に叩き込むぞ!

 何て酷い従兄弟達……辛いわ!


「全く……まだ結果は出んのか!」

「陛下、畏れながら……」


 あー、体を動かすと何だか眠くなってきたわ。


『歳の差……』

「え、何?」


 空耳……でもないわね。親戚が集まると誰かしら喋ってるから意味不明な単語がよく飛び交っているもの。


「シャンティ、腹が減ったなら何か食べておけよ。サメみたいにオレに噛みつく前に!」

「噛み付いたのはロリゼタでしょ!」


 全く、誹謗中傷はよして欲しいわ!

 でもお腹が減ってきたのは事実ね。えーと、この小会議室の使用人呼び出しベルはどれだったかしら。

 王宮の物は何でも滅茶苦茶デカいのよね。二の腕がぷるぷるするのよ。


『歳の差が厭なんだって……じゃあ、無くせばいっかぁ……』

「お父様、此処の呼び出しベルは」

「シャンティ!??」


 あれ、何だか……コケそうかしら?

 眼の前に、翡翠色の絨毯が……真っ黒……。


 眠くなってきたわ……?

取っ組み合いも出来る関係の従兄弟達です。

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