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精霊広場はごった返す(過去編)

お読み頂き有難う御座います。

シャンティの記憶、過去に飛びます。

 目の前に広がる……いえ、人で混み合って広がってよく見えない精霊殿広場は、混雑してるわね……。人がうねって見えるわ。


 邸を早めに出たと言うのに、この混沌加減はどういうことなのかしら……。馬車がピクリとも動かないわ。

 でも仕方ないわね。空前絶後でこの大地を揺るがしかねない……、兎に角レアな行事だもの!

 ああ、素敵だわ楽しみ! 楽しみすぎて昨日は全然眠れなかったわ。寝不足よ!


 今日は精霊降ろしと呼ばれる、素敵な行事!!

 次代の『精霊の御使者様』は誰なのかしら。なーんて!

やっぱり、スパークル侯爵家のピカッテール様でしょうね。

 あまりの華やかさにお顔を30秒以上見つめられないと言う、あの噂に名高い素敵な方!! 震えるわ憧れるわー! 即決まりよね!


 まあ? 余所にはもっと美形が居るってこの前他国の親戚に鼻で笑われたけど、きっとガセね。

 全くあの娘ったら、無知蒙昧知ったかぶり女だもの! 甘いものばっかり食べて頭がスイーツ脳になってるのね。だから、新聞社と小競り合いして変な記事を書かれるのよ。あんなレベルのイケメン、他国に居るもんですか。仕方ない子よね!


「やっと着いたわね」


 やれやれ、精霊殿広場が見える王族関係者席のある若干高いステージに、若干滑り込みセーフ!

登りにくい階段よねえ、相変わらず。しかも椅子が変に部分的に柔らかくて座りが悪いわ。

 でもそんな些事、我慢しなきゃ。


 だって! ピカッテール様の御使者衣装をお召しになった凛々しいお姿、きっととってもお似合いだわぁ。この目に余すところなく焼き付けなきゃ! あ、興奮しすぎてヨダレと鼻水が出ないよう、気を付けなきゃいけないわ。何処で誰が見ているか分からないし、憧れの方と同じ空間を分かち合うには何時でも美しくいなくちゃね!! お姿を想うだけで、この唸り声を上げる人混みにも心弾むし肌も潤うわー!


「お嬢様、御髪か風で乱れておいでです。お直し致しますわ」

「そう」


 然りげ無く使用人に鼻と口元を拭かれた私は、シャンティ・マリメリ・ソノサン公爵令嬢。お父様は臣籍降下された元第三王子なの。 ……垂れてたかしら? ……セーフよね?

 えーとだから、その長女らしく公式のどんな時でも優雅な微笑みを絶やさないわ。と言うか、笑顔を絶やしたら後で滅茶苦茶怒られるのよ。酷い話よね。


 まあ、私はやんごとない高位貴族では有るけれど、王族は沢山居るから、其処までガチガチレア系お嬢様でもないのよね。

 他国だと公爵令嬢はもっとキツい立場らしいし、親が王子でも気楽な立場で良い事だわ。

 でも、流石にこんなに衆目が有ると、何時もより滅茶苦茶顔を作らないといけないのよ。

 うふふふ、お腹に力を入れて優雅優雅! みたいな?

 ……まあ、正直、顔は痙攣しそうになるし、ダルいけれど我慢よ。


 それに、侍女に頭を触られてると眠くなってくるの。眠く……いけないいけない。欠伸用の扇何処行ったのかしら。


「お嬢様、此方を」

「ええ……。……コレだっけ」

「はい、此方のご指示で御座いました」


 しまった。持ってこさせた扇子がスカスカ模様だわ。今は季節感とかどうでもいいのよ。詰まった模様のが欲しかったのに! 眠気を誤魔化すには模様を透かした飾り彫りとか要らんのよ。

実用的に、向こう側の透けないガッツリ顔の隠れるタイプが良いわ。いっそのこと、顔面をガッツリ隠せるヴェールでも新調しようかしら。ミステリアス公爵令嬢に大変身! みたいな!


「肩掛けを持って参りましょうか、お嬢様」

「え、ええ……」


 うわ、横の従姉なんかもう船を漕いでるわね。ガチ寝なのではないかしら。従姉妹だから分かるわ、よく顔を作ったまま寝れるわね。いいなー。その技術、私も会得したいわ。それとも、顔をガッツリ隠す立て襟付きの肩掛け作ろうかしら。


「ふごふっ……!」

「姫様……」


 ……結局小突かれてるわね。アホだわ……。


 それにしても遅いわー。楽しみだけど遅ーいー。出来レースでも、眠気が吹き飛ぶから早く発表しなさいよね。御披露目パレードの特別席……所謂見晴らしのいい場所の貴族専用席はプラチナチケットで即完売でしょうからね。

 王族席は用意されるでしょうけど……駄目よ!

 折角のピカッテール様の勇姿を遠くの高みから見下ろすような王族席なんかで観ていられないわ。

 私はもっと現場で! 近くで! 歴史的瞬間を観たいのよ。

 だって、王国中の憧れの方なのよ! 勿論私もファンよ!


「……」

「!?」


 何かしら? ピカッテール様以外への視線を感じたわ。

 あら、あそこに居るのは騎士見習いかしら。若い割にコワモテな顔ね。

 目が合った途端、滅茶苦茶焦って走って行ったけど、脚が速いことね。


 ピカッテール様とは違う少し濃い青い瞳に……濡れたような黒髪は違うわね。でもあの辺の警備を任されてるとは……スパークル一族の騎士見習いみたい。ピカッテール様の親族とか喉から色々出るほど羨ましいわ。

 顔は……美少年とはまた違う、カッコいい系の顔立ちみたいね。まあ、ちょーっと年齢的に守備範囲外だけどね。多分7〜8歳下よね。ショタコン公女なんて呼ばれたら軽く死ねるわ。


 あ、私ってば目はいいのよ。走ってる人間の目玉の色ですら止まってるように目視できるスキル『再確認』を持っているの。……まあ、特に生活の役には立たないけどね。

 もう一つの方も、そんなに役立たないしなー。

 王族って、もっと奇抜なカッコいいスキル持ちではないのかしら。余所は怪力だったりするわよね。いいなー。


「……」


 ……んん? 遠くであの騎士見習い、まだこっちを見てるわ。忘れ物?

 しかし月のない夜のような黒髪ね。一番推しは輝くピカッテール様の御髪のような金髪だけど、黒髪もシリアスな落ち着き感が出て素敵かも。


 私の髪の毛ってば、滅茶苦茶けたたましいと評判の王族ピンクだし……。

 余所と違って落ち着きある王家と評判……だといいのに、この髪の色がねえ……。白髪がアバンギャルド感じる御髪になってきたお祖父様が、帽子に頼るのも頷けるわ。この前なんかナイトキャップみたいな帽子を作らせてたしね。元国王なのに、はっちゃけ過ぎよ。

 ……でも良いのか悪いのか豪毛なもんだから、生地を貫通してボサッていたわね。アレは笑えたわ。


 しかし、発表は未だなのかしら。

 遅いなー。

威厳も何もない王族達です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 飾らない人柄の王家の人達。 民衆、貴族たちから敬愛されているのならいいのですが、なんとなく呆れられていそうですね。 まあ、平和でいいですが。。 [気になる点] ピカッテール様 そのお名前で…
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