二家の違和感
お読み頂き有難う御座います。
罹患後、肺を病む羽目になりまして未だ静養中です。皆様うがい手洗い、御身体御自愛くださいませ。
「何だ、思ったより元気そうだな」
「態々図書室に何の用なの。煩いのよ」
今日も国王陛下の息子達が煩いわ……。王宮内の図書室に来ただけなのに、何でいるのよ。いいオッサンなんだから、公務しなさいよね。
「スパークル家の歴史を探しに来たのよ」
「お前が婚約したのって、精霊の御使者ライナル様だろ、元々マッシブスパーキン家なのに、何でまた」
「精霊関係はスパークルでしょ!」
「そーだけど……」
「それに、ちょっと調べたいことがあるのよね。ここ十年の話よ」
「十年? お前が精霊漬けになってた時か?」
「ええ。きっとこの王宮は、私という類稀なる素晴らしい公女の悲劇に世も日も明けず悲しみに包まれていたと思うんだけれど」
「……本人が言うと滅茶苦茶図々しいな」
「時を超えてもシャンティは図々しいね、兄さん」
誰も気を遣って言わないから言ってあげたというのに、何て酷い従兄弟共なのかしら……。心配してたって素直に言いなさいよね。
「まさか、ライくんを虐めたりしてないでしょうね?」
「嫌味は言ってたけど、虐めはない」
「本人が傷付けば虐待なのよ。程度によっては後で慰謝料請求するからね」
「そもそも、精霊の御使者様を虐めてたのは、マッシブスパーキン一族だろ」
「……やっぱり?」
余所から見てもそうなのね……。初対面の時、親戚にイビられてた的な反応だったものね。助ける前に漬け……私が封印されちゃったし、アレから自力で何とかしたのかしら。助けてあげたかったわ。
「我々が手を貸してやったんだよ、シャンティ」
「神殿も男装してた伯爵も煩かったしな」
「あ、そ、そう……イイトコどりね……」
「ハッハッハ、仕方なかろう」
そういう割にドヤ顔が鬱陶しいわね、王太子の癖にチャレスったら、慎みとか威厳がゼロだわ。こんなのが次期国王だなんて……敬える気がしないわね。
「それにしても……マッシブスパーキン家って、筋肉筋肉してなかったのが不思議だよね」
んん? ヒャピスが変なことを言い出したわね。
筋肉筋肉してない、とは?
「ムキムキで人外伝説だらけなのに?」
「だと僕達も思っていたんだけど、実際会うとね……。その辺の兵士よりヒョロいんだ」
「何ですって?」
それは、どういうことなのかしら。偶々……ヒョロ系のマッシブスパーキン家の者に会ったってこと?
「ああ。母上とか叔父上とかに聞いてみても……そういや、ムキムキのマッシブスパーキン家ってこの頃見ないなって言ってたな」
「この頃ってことは、最近急にヒョロヒョロの体型になったってこと? あ、でもライくんは……」
「そんなにムキムキでもないよね? 身長はまあ、子供の頃はデカかったけど……多少背の高い男程度だし」
「……そ、そうかもしれないわ。
寝ても覚めても周りがちっちゃめのオッサンばかりだから比較対象が無かった上に、私もそんなに身長高くないもの」
「おい」
ウチの王家って、一族郎党けたたましいピンク髪で小柄なのよね。オッサンになろうがずっと。
やだ、……良いところがまるで無いわ。殿方に生まれなくて良かった。
じゃなくてよ。
「何故、マッシブスパーキン家はムキムキだと今でも言われているの?」
「昔のイメージらしいが……そもそも、精霊の御使者様に無礼を働いたせいで、今、ライナル様以外公職に就いてないしな」
「昔のイメージ……」
「元第一王女は、子供の時に駅前広場の銅像噴水レベルのムキムキ爺さんを見たって言ってたな」
「あの誰だか分からない銅像レベルのムキムキ……」
我が国の首都の駅前には、銅像噴水が置いてあるの。たおやかな乙女じゃなくて、何故かムキムキ殿方が集団でポーズを取っているイカつい銅像噴水なのよね。制作者もモデルも誰なのかも不明なのだけれど、メンテナンスがいいのか、何故か錆びないの。かなり古代のものなのに。
まあ、取り敢えずそれは良いけれど伯母様が子供の時って、えーとしじゅ……いえ、まあまあ昔よね。
そんな時代からムキムキのマッシブスパーキン家を見ていない? こんなにムキムキな噂が有るのに?
「マッシブスパーキン家の伯爵は騎士団長だったのではないの?」
「十年前迄は、伯爵本人じゃなく一族の者が騎士団長やっていたんだけど……そいつも別にちょいムキムキ程度だったからな」
「何故そんな……。スパークル家だけじゃなくて、マッシブスパーキン家もおかしいわね……」
「だが、ムキムキを詐称したところで大した罪になるわけでもないからな……」
そ、それはそうだけれど。
一体何故、そんな訳分からない情報操作を……。
マッシブスパーキン家がマッシブじゃ無かった疑惑ですね。




