違和感と耳飾り
お読み頂き有難う御座います。
話もいいけれど、素敵な見目の婚約者に心乱されるシャンティで御座います。
「ええと……あの煌びやかめいた親戚を御召になったと、お聞きしました」
「煌びやか、めいた……? いえまあ、うん? そ、そう、ね」
推し……推しを諦めたくない心がせめぎ合っているわ……。あんなにケチョンケチョンに言われたのに。何なのよこの複雑な何とも言えない気持ちは! うう、マゾっ気は無いわよ!
「スパークル家は言葉が足りなくて……。精霊に付き纏われているせいか、余分なことを話せないんです」
「余分……? え、精霊に付き纏われている!?」
後ろで物音がしたから、恐らく侍女が……ああ、仰け反っているわね。
怪我してなきゃ良いけど。……横のノカの顔が伝説の魔物オニゴロリみたいになってるわ。
って、いけない。今はライくんの話よ。
「精霊って、本当に実在するのかしら」
「……姫様を結晶の中に閉じ込めたのは、精霊です」
「ははあ……。
はあ、そう、本当に……。精霊……」
「信じ難いですよね?」
いやまあ、精霊漬け精霊漬けと耳タコで言われたけれど。
本当に精霊がこの件に関わってるのね。まあ、人間が自力で私を十年間タイムスリップさせるのって、今の技術で物理的に無理っぽいけれど。
それより、結晶の方がビジュアル的に美しそうでいいわね。どうも精霊漬けだと、土産物のビジュアルなんだもの。
「何故、十年間も結晶化されていたのかしら。しかもあのけたたましいピンク色に……」
「色味は……その、姫様の生命力といいますか」
「え、生命力があんなけたたましいピンクなの!?」
それってショックなんだけど! しかも、親戚一同あのけたたましいピンクだなんて!
いえ、仲が悪い訳では無いのに……感情が微妙を通り越してきそうね。そうかあ。まだ私はうら若き乙女だから良いけれど、いいオッサンな元第三王子や前国王陛下なお爺さん系親族はどう思われるかしら。喧しいでしょうし、感想は聞かないでおきましょう。
「ま、前の髪も素敵でした! い、今も可愛くて好きです」
「そ、そう……かしら?」
嫌だわ。そんなモジモジとストレートに……。
照れてしまうじゃないの。意味もなく、薄ピンクの美しくなってしまった髪をワサッとこう! 頭をワサッと振ってしまうわ。
思えば、……リアルな実年齢は取っていないものとして置いといて、同じような歳の殿方にストレートに口説かれるのって何年ぶりかしら。
「姫様、耳飾りが……」
「あら嫌だ……」
頭を振り過ぎたわね。ライくんに拾って貰ってしまったわ。
「この耳飾りも素敵ですが……此方を、受け取ってくださいますか」
「え?」
掌にことりと渡されたのは、綺麗な青い石の嵌った金の耳飾り……。
「勿論、公爵令嬢の姫様のお持ち物には、その……敵わないと思いますけど」
「ノカ」
「畏まりました」
今、ノカと阿吽の呼吸が決まったわね。ササッと付け直させてあら素敵……かは見えないわね。
しかし、この青と金の組み合わせなら菫色のドレスも素敵そうね。前の髪色だと下っ端の悪役キャラみたいだったけれど、直ぐに誂えましょう!
「よくお似合いです」
「ウハハ、いえうふふふん、ふふ」
しまった、鼻息が荒すぎたわ。
「お嬢様、素敵なムードの中恐縮ですがお話が脱線を……」
「え? ええ。そ、そうね、そうだったわ。で、ライくん」
「はい、姫様」
「どうしてスパークル侯爵家は精霊の前で迂闊な事を言えないのかしら」
「精霊の解釈はイカレているんです」
「……そう罵倒してもいいの?」
「スパークルの者に関しては、精霊はダダ甘く……。他へは扱いが雑なんです」
「雑……」
雑って、どういう事なの。私の薄い記憶によると、一応この国って精霊の加護に頼ってるんじゃなかったっけ。そういう感じの話だったわよね?
「精霊は、スパークルの者を勝手に気に入って、勝手に加護をぶっ掛けてきます」
「ぶっ掛け……」
その言い方って良いのかしら。何だかこう、加護って……与えられるにしても、ねえ。そんな不審者に水をぶっ掛けられたみたいにならなさそうだれど。
「……そして、言い難いんですが。姫様があの日の間のお可愛らしさと美しさとを兼ね備えたまのうら若きお姿なのは」
「ええ、ええ。そう? そうよねえ。そうなのよねえ」
「お、お嬢様、お顔が!」
……おおっと、誉め讃えられすぎて笑顔が深まり過ぎてしまったみたいね。
「姫様が歳下とは結婚しないとお伺いして、歳上になりたいとぼやいたら、こんな事に……」
「えっ……んん??」
「え?」
「歳下と結婚しないなんて、何処で聞いたの? そんな事言った覚えはないけれど」
「え」
……え、どういう事なの。
「え? でも、あの騎士が……」
「騎士?」
「姫様付きの騎士だと、言ってました……」
「誰それ。私には専任の護衛なんて居ないわ。……そうよね?」
「はい」
「……ちょっと、どういう事なのかしら。
誰かがライくんに嘘を吹き込んだって事なの?」
「え、それよりも俺がボヤいたから巻き込まれて、姫様はお辛い思いを」
「お辛い思い? してたかしら」
辛い思い……。まあ、目を覚ましたらオッサンな従兄弟達に囲まれてたのはムサかったわね。
それに……別にタイムスリップしたからって、特に悲しい別れも無かったし。
「そんなに文明も発展してないし、新鮮味も無いし……。ああ、大きくなったライくんは素敵になったわね」
「ひ、姫様!」
「スパークル侯爵! 流石に一歩手前でお願い致します!」
え、此処で咄嗟に抱きしめられて振り回されて目を回す場面では? 物語なら、感極まったらそんな感じなのに。
侍女達にガッツリガードされてしまったわ。其処までしなくても……。
……現実ってシビアなのね。
何処かの国の侍女なら空気を読んでお控えしたかもしれませんが、未婚の公爵令嬢シャンティの侍女達はお目溢ししませんでした。




