推しとの初対面が炸裂して
お読み頂き有難う御座います。
連日連夜暑すぎますね。
眼の前には、憧れの方が居る。
お年を召したけれど、それでもお美しいまま。
名前を変えられて、性別を明らかにされて。
それでも麗しい……私の推し。
「私の可愛い再従弟を、開放して頂きたいのですよ。
だって、貴女様は私のファンなのでしょう? 私の幸せを喜んでくれますよね?
私の望みを聞いてくれますよね?」
「え……」
私の推しが私に向けてこられたのは嫌悪感を込めた笑顔……だったの。
殺意、と言うのかしら。コレは……。
私、まさか……推しに憎まれてる!?
「マッシブスパーキン伯爵にお会いしようと思うの。先触れを出して頂戴」
「なりません、お嬢様」
「何でよ」
同性と判明してしまったんだし、オマケに既婚者で何の障害も……うう、悲しくなってしまうわね。
兎に角、にべもなく諌められるってどういうこと?
じいやったら、そこまでブチギレなくても……。
「命の危機に陥った公爵家の惣領姫が、諸悪の根源に近い伯爵を訪ねるなど、前代未聞です」
「え、初対面なのにアポ無しで押しかけろってこと? 流石に無礼過ぎてマナー教師がぶん殴りに来ない?」
「そうではなくですね」
じゃあ何なのよ。マナーは大事でしょうに。
「そもそも諸悪の根源って失礼よ。マッシブスパーキン家が悪い訳でも、ライくんが悪い訳でも無さそうだし」
「お嬢様、お優しい……」
「でしょお?」
「ノリで全てを流されますな。精霊やスパークルに関する事柄は我がソノサン公爵家ではタブーとなっておりましたのに」
じいやったら、眼力がパワーアップし過ぎよ。其処まで目を剥かんでもいいじゃないの……。
流石ノカの伯父だわ……。慣れていてもビビりそうよ。
「私が精霊漬けに有ったから?」
「勿論で御座います」
「勿論って……。不敬ではないの? 精霊のご加護でこの国はゆるーっとしていられるんでしょう?」
「その辺は分かりませんが」
「分からないの?」
「精霊のお陰だと測れませんし、見えませんし」
「そ、そりゃそうだけれど」
あれ。
それなら見えないのに……ご加護って、どういう事なのかしら。
そもそも精霊って、何なのかしら……。
ボヤーっと、この国の創世神話を思い出して……。
……何だっけ。
嫌だわ、頭が働かない。
そもそも精霊漬けられてた間、食事とかその、お手洗いとかどうなってたのかしら……。
そのまま長期保存されてたなら、とんでもないわね精霊……
「殿下はどうしてもと仰せなら、後日マッシブスパーキン伯爵を呼びだてなさいとのことです」
「お父様、起きられたのね」
お父様ったら、一応未だ継承権有るから殿下呼ばわりなのよね。入婿なんだけどご面倒な立場だわ。
「お嬢様、お体をご自愛ください。未だ精霊漬けから出たてなのですから」
「で、出たて……ほ、他に言い方無いの。
樽から漬けた野菜を、お皿に出したんじゃないんだから」
「え……漬け出たてとかですか?」
「変わらないわよノカ! 漬けを取ってよ!」
で、ウチの侍医……がやたら率いてきたお医者の群れに翻弄されたりされてメディカルチェックを受けたり、食事が美味しくて食べすぎたりと3日経ったの。
「お嬢様、マッシブスパーキン伯爵の御成りです」
「そう……。……ねえ、このメイクちょっとケバくない? 頬紅はやっぱりピンクが良かったかしら。このドレスよりあっちの黄色が……」
「早く聞くだけ聞いて、追い出しなさい! シャンティ!」
……お父様がブチギレてしまったわ。
……心配してくれてたのは判るけれど、マッシブスパーキン伯爵ピカッテール様、いえ、カゲッテーラ様がお悪い訳では無いのに。
「おまたせしましたわ」
「お目にかかれて光栄です、ソノサン公爵令嬢シャンティ様」
……めめ、目が……目が破裂するような光が満ちている!?
いけない。推しとの初対面が……こんなに輝かしくて目が潰れるなんて、知らないわ。
と、呑気に構えていたら。
「私の可愛い再従弟を、開放して頂きたいのですよ。
だって、貴女様方は私のファンなのでしょう? 私の幸せを喜んでくれますよね?
私の望みを聞いてくれますよね?」
「え……」
冒頭の科白よ。
憧れの方から出会い頭に喰らわされたシャンティです。




