老けた従兄弟達と知らない貴方、何方かしら、
お読み頂き有難う御座います。
タイトルを呪わ令嬢にするか悩みましたが、一応そのままにしておきます。
滅茶苦茶眠いわ。
何だか、体が重いし。嫌だわ、風邪引いたかしら。
困るわね……。一世一代のイベントが……待っているというのに。
ゴンゴロ!!
「何よ!? ……痛い! 膝打った!!」
え、何で!?
何で寝てただけなのに……まさかベッドから落ちた!?
この歳で!? は、恥ずかしい!
「シャンティ!! 目が覚めたんだなシャンティ!」
「え、何……。何処ぞの誰?」
「アホか! 従兄の顔を忘れたのかよ!!」
「薄情だよシャンティ!!」
「おい、公爵夫妻を呼べ!」
い、イトコ……? イトコって、従兄弟?
お父様に兄弟が多いから、従兄弟は6人で、従姉妹は2人程居るけど……。
眼の前には、6人のオッサン……いえ、軒並み三十路位の高位貴族と後ろに顔を伏せた……近衛騎士階級かしら。が居るのみ。さっき侍女が出ていったから……ムサイわね。
「シャンティ、ちゃんと起きてるか?」
この、声高なのは……髭をなかったものとして、この顎のゴツさからすると……。いや、他に居るのも似通った顔ねえ。でもあの顎のゴツさは……。
「えーと、まさかチャレス?」
「えーと、は要らんだろ!」
まあ、やっぱりチャレスだわ。お父上である国王陛下に瞼と顎がソックリ!
他の従兄弟も軒並みそれぞれの父親の複製のようなオッサン……いえ、歳上になっている……? それぞれのお父上に似たわねえ。母親似が悉く居ないわ。
じゃ、なくて……何故……!? 何故従兄弟達が高速で歳をとったの!?
でも、伯父様がたにしては若干若いし! はっ、まさかコレが噂のドッキリ芝居?
「え、え? 何で、何で老けてるの?」
「失礼が過ぎる!」
「お前が呪われて寝てたんだよ!」
「畏れながら。重ね重ね、本当に、申し訳御座いませんでした」
「はい?」
老けた従兄弟達の後ろに控えていた割に強引に割り込んで来たらのは……誰かしら。
「え、何方……」
私を……見つめていた、のよね? 藪睨みチックだけど。滅茶苦茶好みのタイプ……よりは少し外れているけど、それでも世間的には充分に精悍イケメンが! ……何故か私に傅いているわ。
……どういう事なの? え、見知らぬ人に詫びられる事有ったかしら?
「シャンティ姫様、どうか私に償わせてください。貴女に愛を囁く権利を……」
……あ、愛?
滅茶苦茶初対面なのに、愛!?
……そんな馬鹿な。
呪われて寝てたってのも眉唾モノなのに、愛ですって?
「……何でかしら? 貴方、舞台俳優か何か? それとも詐欺? あ、分かったわよ。貴方達が突然老けたのは特殊メイクね?」
「突然老けた!?」
「特殊メイクだとお!? ま、まだまだイケてるお兄さんだろうが!」
「詐欺!? シャンティ姫様!?」
「ブホッ……」
「流石酷いシャンティ……」
いや、私は確かにシャンティ。て言うか、吹き出したのは伯母様の息子であるボンベルね! 伯母様にまるきり似てないけれど、笑い方で分かったわよ、腹立つ!
「ええ、シャンティですとも!」
この国の王族の血を引くれっきとした公爵令嬢よ。従兄はそこの厳つい割には威厳無く老けた王太子だしね。
高貴なる血筋だし、世間的にはお金持ちの令嬢よ。まあ、無駄遣いはさせて貰えないけど。
でもね。
初対面イケメンに突然愛を囁かれる美貌も! 気軽に使える権威も! 持ち合わせてはいないのよ! ええ、知ってるわよ!! ウチの家はまあまあ厳しいの!
憧れの的の御令嬢とかなりたいわよ! 程遠いわよ!
だからね! イケメンに一目惚れなんて信じられない!
コレって絶対にやらせよ!
従兄弟達が控えた中で……あら、それは何でかしら。
私の誕生日のサプライズ……でもないわね。この前過ぎたばかりだもの。こんな悪趣味パーティは御免被るわ。もっと可愛らしい部屋がいいし。
それに、従兄弟達ったら何て顔してるのかしら。
サプライズに滅茶苦茶神妙な顔というか、苦虫噛み潰した顔というか。普通はそんな顔で、サプライズを見守らないわよね? 嫌がらせなら実力行使……。
……?
ああ、何だか考えるの滅茶苦茶面倒だわ。体がダルすぎて……。
「……何だか考えるのがダルいわ。とりあえず、床で打った膝が痛いから寝ても良いかしら?」
「姫様!」
……一体何だって言うのよ。
そもそも、何で寝起きに老けた従兄弟達&知らない騎士に囲まれているの……。
私は、精霊の使者様の発表イベントを観に、来た筈なのに。
この国の王家は、親戚一同仲良しです。




