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苦手な方はご注意ください。

短編詐欺シリーズ

【短編詐欺注意】テンプレ型悪役令嬢物………………………………になるはずだった話

作者: 適当男

現在連載中の長編が中々人気が出ないので、

気晴らしに次回作の構想を纏めたあらすじや、

執筆済みの第一話~数話を

短編詐欺シリーズとして投稿しています。

この作品を読んでみたい、という物がありましたら、

作者の活動報告の『四月馬鹿に馬鹿は踊る』の記事にコメント頂けると作者が喜びの舞を心の中で踊ります。


あらすじ


ツ=イフォーは魔法があり、王国・帝国が生えたり枯れたり、王侯貴族が跳梁跋扈し、女神も聖女も転生者も存在する、極普通の異世界……でした。

ある日、他の異世界ナ=ロウで流行した悪役令嬢物の創作物にハマった運命の女神ア=バズレーはツ=イフォーでお気に入りの創作物を現実として再演すべく、自身を崇める宗教を経由して物語の舞台を整え、一人の異世界人をヒロインとして転生させました。

これに憤慨したのは主神ヤバタニエンです。自身の管理する世界にメアリー・スーなど存在させたくなかった彼女は、対抗策として、異世界よりまっとうな倫理観を持っていると思われる男を呼んで加護を与え、ヒドインを介したア=バズレーによる世界の汚染を最小限に留め様としました。

ただし、この二神は神として大きな力は持っていましたけれど、全知全能には程遠かったので、大きなミスを犯しました。

人間は、神の思い通りに生きる程、素朴で無欲な生き物では無かったのです。

ヒドインは数人のイケメンを侍らせた程度では満足できませんでしたし、

そんなヒドインに関わってせっかくの第二の人生を無駄遣いする気は男にはありませんでした。

この物語は後の世に、『魔道革命期』と呼ばれる時代の始まりを告げた「テンプレート侯爵令嬢追放未遂事件」より起きた一連の出来事を綴った物である。


第一話


「テンプレート侯爵家令嬢アリア!、本日現時刻を持って私、ノープラン=オワタ=ジ=エンドは貴様との婚約を破棄する!」


卒業生の祝賀(という名目の追い出し記念)パーティーの最中、突如として、

「神の祝福を受け、永久の繁栄を約束せし」「遍く民の守護者にして統治者なる」オワタ王家の第一王子様がトチ狂った妄言……もとい、唯人たる我等に理解し難い発言を宣しなされた。

おい、何をするにせよ、ホスト側に一言あっても良いだろうが。

卒業するオマエラには不都合なくても、ホスト側は教師にパーティーの手際の査定をされるんだぞ!?

面倒事には関わりたくないが、学園生活の評価が貴族社会での評価に直結しかねない悲しき木端貴族子弟としては問題の排除、もとい解決に乗り出さねばならない。

近づきながら聞こえてくるのは、王子自身の不貞と婚約者に対する冷遇の自白の数々……

無いわー……いや、ホント無いわー……

秒毎に消えていく気力を押し付けられた責務へのなけなしの責任感で補い、騒動の渦中へと身を進めて行く……行きたくねぇなぁ……


「そもそも婚約破棄と申されますが、陛下のとりなしで結ばれた物を、王子の一存で解消は……」


「問題無い。玉璽はここにある。後は貴様がこの婚約破棄同意書に記名すれば済む。」


済まねーよ。オメーはその玉璽を今生陛下より正式に委任されたのか。おい、ボケーっと突っ立っている側近共はハヨ止めろよ。今俺の眼の前で王位継承権第一位候補者による大逆罪の適用要件が出来上がりつつあるんだぞ!?

「ノープラン王子!!身分持ち、卑賎ならざれど王国の禄を賜る身の者としてお目とお耳汚しを失礼いたします!」


「何者だ。名を名乗れ!」


「それでは名乗りをお許しいただきまして、臣は王宮は王都運営管理部署にて代々お役目を頂いておりますクズ男爵家が長子、

マジメ=K=クズと申します。」


「さようか。して、卿は何用にて私に声を掛けたのだ?」


「はっ、大変恐縮ですが、王子のお言葉の内容より事は国家の大事と勘案されます。なればこのような場で告発紛いの事などせず、陛下にお伺いを立て、正式な詮議に掛けられますよう、臣は進言いたします。」


「でも~そんな悠長な事をしたらそこの悪役令嬢さんが証拠や証人を処分したり逃げ出したりするんじゃな~い?」


「その様な言い掛かりをこの私にするのですか!?」


「きゃ~ノープラン様、アタシ怖~い♡」


「アリア!?貴様、アタシ嬢に何をする!?」


「王子、本日はお帰りになられた方が宜しいかと。」


今更かよ、宰相子息。

オマエラこそこんな所で何してくれやがってんですかねぇ……(怒

国内第一勢力のテンプレート侯爵家の令嬢に公の場で名誉棄損とか内乱誘致の積立でも始めたのかな?

将来的な破綻が木端貴族ですら目に見えているけど。

おい、そこ側近その2(騎士団長の息子)よ今、誰に剣を向けようとした?

そして王子にしがみ付いている豚はいい加減鬱陶しい視線をこっちから外せ。

お前の持っている誘惑の加護は俺には効かないから。


「アリア様、心中お察しいたします。一先ず、別のお部屋でお休み頂きますよう。誰か!アリア様のお付き添いを!」


遠巻きにしていたスタッフの女性に彼女の事を任せると、会場全体に聞こえるように、


「突然の出来事で皆様にご迷惑をお掛けいたしました!残りのお時間は短くなってしまいましたが、引き続きご歓談の程お楽しみいただければと願います!何かございましたらお近くのスタッフにご用命いただけますようお願いいたします!」


その後、参加者が問題を起こす事はなく、飲食類の提供もつつがなく進み、パーティー”は”終わった。

そして翌日、部屋でパーティー運営に関わった同級生らと打ち上げ上がりの二日酔いで魘されていたオレの元に、王宮への召喚状が届いた。

オレは吐いた。 …嫌だ…逝きたくねぇ……


第二話


数年振りにアイロン掛けした制服に身を包み、門番に召喚状を渡して、春前の寒空の下に待ち惚けを食らう事、早半鐘(30分)。

木っ端な宮廷雀の予備軍とはいえ貴族に対する扱いじゃねーぞ!

作っておいて良かった、暖房魔術。

オレの周りが暖炉付きの室内レベルに温かくなった事に気付いた門番sが少しづつにじり寄ってきていた事に気づいた時は背筋が寒くなったが。

門番と剣豪の立ち合いの如く間合いの駆け引きをしばし続けていたら、報告に行った門番が戻ってきて城内に案内される。

良かった……もう少しでイヤーッと襲い掛かってきそうな門番をグワーッと撃退する所だった……

さすが王宮の警備騎士……尋常ではない足捌きじゃった……

中に通されてからもさらに一刻半(1時間半)待たされて、もう少しで部屋付のメイドさん(推定中位貴族子女)と交友関係を持てそうになった様な気になった処で呼び出しが掛かる。


オノレ。


そして、何故か通された先は謁見の間。

第一王子と側近連中と宰相以下おそらく高位貴族が立ち並ぶ先に、陛下が居た。

慌ててその場に跪き、臣下の礼を取る。


「この度は拝謁の栄誉に預かりまして恐悦至極に存じます、陛下に於かれましては本日もご壮健あそばれまして、王国の益々の繁栄に……」


「よい」


何が!? 謁見の儀礼の振舞いとか使ったのは初めてだったけど、どっか間違いが…!?


「宰相」


「はっ、その方、クズ男爵家子息、マジメ=K=クズに相違ないか?」


「はっ、臣は王宮は王都運営管理部署にて代々お役目を頂いておりますクズ男爵家が長子、

マジメ=K=クズに相違ございません。この度は私に出仕の命を頂きましたので、至急馳せ参じましてございます。」


「うむ。此度の召喚であるが、昨夜の事件の経緯に関して関係者の証言の確認のためである。

貴公から見た此度の件を余す所なく証言して欲しい。」


「はっ。ではまず私から見た昨日の事の推移ですが……」


昨夜の場における自分の立場と、見聞きした事の証言及び、自分の発言の意図を隠す事無く話していく。


「以上が昨夜の出来事となります。」


疲れた……ってこの場の全員が凄い目でこっち見てるんですけど!?

コッチ見んな!俺だって信じたくねーよ!次代の上層部候補がボンクラ揃いとか!?

木端貴族の長男の勤めの事だけ算盤弾いていたかったわ!


「ノ、ノープランよ。貴様は昨晩この者が止めなければ何をしようとしていた……!?」

陛下が震える声で王子に問いただす。

だが、あのボンクラーズ筆頭はこの期に及んでまだ脳内の季節が春のままなのか、ノホホンと、


「勿論、あのような悪女との婚約を破棄し、王都から追放して、聖女たるアタシ嬢と婚約を結びなおす積りでしたが!」


とホザイタ。


…そうだ、これは夢なんだ。目が覚めたら僕は卒パの準備に忙殺されて、パーティー終了後の打ち上げを楽しみに思って死んだ魚のような目で会場を彷徨うんだ………


「その方、現実から目を背けたくなる気持ちはとてもよく解るが、その思いが口から漏れておるぞ。」


本当によく分かるが、と繰り返す宰相閣下。

陛下も非礼を咎めるでもなく、ウンウンと頷いていた。


「も、申し訳ございません!!!あまりも有り得ざる現実に自失してしまいました!何卒ご容赦くださいませ。」


「よい。」


陛下の寛大さに失いかけていた王室への敬意を取り戻す。陛下マジパネッス。


「ノープラン。この者の反応こそが貴様の浅慮への正常な反応というものだ。」


「何ですと!貴様、どういう積りだ!?」


その反応こそナンデストーッスわ。マジ有り得ねぇ。王族教育の担当者は族滅モノじゃないか、コレ。

陛下に生産者責任を問うような不敬は出来んが、宰相あたりには物申しても良いような気が……

確か、担当する家はアンタの派閥でしたよね?品質管理の責任に関しては如何お考えなんですかねーっ?


「どういう積りと仰せになられましたが、王子こそ何を以って御自身の行為の正当性を信じておられるのですか?

アリア嬢との婚約は国家安寧のための重要な施策である事は言わずもがな。昨日の”断罪”とやらも”自称聖女”様の証言のみを妄信したご様子でしたし、それを裏付ける証拠は一切ご提示になられませんでした。

それと、玉璽の持ち出しの件は如何なされたのでしょうか?

昨日の件に置いてはあれこそが最大の懸念事項と思われますが?」


「それはお前如きが気にする事ではない。」


「ならばワシが気にするといえばどうかの、ノープラン?」


「父上……私は唯一王家の後継の資格を持つのです。継承前とはいえ、今から私が扱っても問題ないでしょう!」


「「「いや、問題しかねーよ」」」


思わず、俺と宰相閣下と国王陛下のツッコミがハモった。

おい、側近もとい腰巾着共、お前らも言えよ。ここでバカを諫めないとか国家に対して不忠ってレベルじゃねーぞ!?


「クズ男爵!貴様のその物言い、王家に対する不敬が過ぎるぞ!?」


だまれ、ノータリン。


「だまれ、ノープラン」


心のツッコミと陛下の発言のタイミングが完全に一致。ボクと陛下ゎマブダチでズッ友だよぉ……


「父上!」


「敬意を始めとした他者との関係性とは互いが正しく認め合ってこそ生まれる物よ。今の貴様では望むのも烏滸がましい。

沙汰は追って申し渡す。貴様は下がり、自室で謹慎せよ。」


「父上!」


「下がれと言った!三度は無い!」


「……失礼いたします!」


「……一人息子だと思い、甘やかしてしまったか……」


「……いえ、全ては私の人選の過ちかと」


「その方も随分と時間を取らせてしまったな。褒美は後日届けさせよう。今日は下がってよい。後、分かっているとは思うが……」


「はっ。今日見聞きした事は誰にも!」


「……ふぅ、そこの愚息にも卿程の器量があれば……」


「いえ。私如き、学園で俊英と名高きイツカ様とは並べられるも烏滸がましく……」


やめろ、子供のポンコツ具合に愚痴りたくなる気持ちは分かるが、それは後で愚息殿に俺が恨まれるフラグだ……ほら、アイツこっち睨んでるじゃないか……


「謙遜する必要などない。卿はアレよりも王国貴族の何たるかを心得ておる。時にクズ男爵家は……」


「は。先々代よりカザミドリ伯爵家と親交がありますが、派閥としては王家中立派に当たるかと。」


「うむ、話が早い。愚息の件では当家も恩を受けたようなものだ。何かあった時は力になろう。」


うわーい。有難いけど切り辛いカード、ゲットだぜ! ……どうしよう、本当に使い時が思い浮かばない……

その後はさっきのメイドさんに案内されて退城した。

今度こそ機を逃さずに自己紹介と後日にまた城下町の喫茶店で会う約束を取り付けることができた。ヨシ!

帰りに行きつけの酒場に寄っていつもの安酒とつまみを買い込んだ。

貴族生活なんて、飲まずにやってられるか、チクセウ!


第三話


二日連続で二日酔いの目覚めとか。

今日からまた授業あるし、迎え酒は止めておこう。

昨日一日で酔っ払いとゴミとゲロまみれの部屋を掃除してくていれた下働きの皆さんにはお礼の差し入れを用意しなければ……

あ。一昨日のパーティーの片付けにも参加してねーや。そっちも付け届け用意しとかないと。予定外の出費が嵩む。

今週は放課後の仕事増やさないとなぁ……貧乏貴族の悲しさよ……でも俺は仕事が出来て稼ぐアテが有るだけ同期の同位階子息女より財政状況が多少はマシな方なんだよなぁ……実家からの仕送り頼りの人達見てるとホント切実だしなぁ……

制服着て身支度整えて、今日の授業の資料とノートと授業に飽きた時用の趣味の覚え書きの束を鞄に詰めて部屋を出る。

寮の一階にある食堂で朝食を受け取り、テーブルについて、皿上のベーコンエッグを厚切りのパンに乗せ換えてソースを掛けてもう一枚のパンを乗せて横からはみ出さない様に気を付けて力を入れて挟み込む。

この場にマナー云々言うのは居ないので大口開けて齧り付く。うむ、美味し。


「アンタ、相変わらず平民でもしないような食べ方してるわねぇ。」


継ぎ接ぎ補修されたボロ服を着た恰幅の良いオバチャンが現れた。

ここの寮の管理人のオバチャン(未亡人:ココ重要)である。


「オバチャンこそ、これから食事?今日はかなり遅くない?」


「こ~ら、オバチャン言わない!」


「はいはい、ミセス・エリザベタ。時に、昨日俺の汚部屋掃除してくれたの誰?お礼しとかんと。」


「宜しい。まったくホント貴族なのに平民に気を回してくれる変な子だね。リズだよ。今日は休みで次来るのは明後日だね。」


リズちゃんか。小動物系メカクレ属地味メイドの子だったかな。


「そか。ども。あの子何か嫌いな物かダメな物あったっけ?」


「聞いたことないね。初心な子だからあんまり勘違いさせるような物を渡すんじゃないよ!?」


「この寮にいる男が宝石やらドレスやら女の子が喜ぶような物を贈れる程裕福な家じゃないのはオバチャンも知ってるでしょうに」


俺個人なら無理すれば用意できなくもないかもしれんけど。

仕事の特別手当でそんな物を渡されたら普通は怖いだろうし、それこそ勘違いさせて、恐ろしい事になりかねない……!

夜。……合鍵で開けられる鍵……下ろされるズボン……下腹部に感じ続ける違和感……

朝。……何故か開かれていたカーテンの間から顔に刺さる日差し、遠くから聞こえる鳥の鳴き声……謎の赤い染みが付いたベッドのシーツ……何故か俺との距離感がバグったリズちゃん

……10月10日後に「アナタの子ですよ」報告……ヒェッ


……うん。ここは普通に消え物が良いか。酒…は暫く見たくないかもしれないな。何か菓子類でも買って…


…嗚呼、また金が飛んで行く……(泣

望まれることなく財布から放たれる彼らを動かすもの。 それは漢、そして貴族たる意思を持つ者の意地に他ならない……


「オバチャン言わない!」


「失礼しました、マダム。」


「そろそろ半鐘鳴るよ!さっさとお行き!」


「は~い、はいはい」


「はいは一回!」


「はい!!!」


第四話


オバチャンに叩き出されて駆け込んだ教室で俺はクラスメイトから”ちょっとした質問”と称した”終わりなき尋問”を受けていた。


「それでそれで、マジメ君は王宮に行って何があったの?」


「国家の機密事項に該当するのでお答えできません」


「お姫様とか王女様居た!?」


「我が国の公式の王位継承資格所持者は現在ノータリ……失礼、プラン様お一人だろう?実は違ったのか!?そうなら俺の心と国家の安寧のためにぜひ教えてくれ!」


「王宮メイドさんはどうだった!?」


「お姫様が居るとすれば多分あんな感じってくらいしゅごかった……」


「な、何が凄かったんだ!?おい、頼む、教えてくれ!」


「当家の最高機密に属する事になったのでおいそれとは教えられんよ…… 知りたければ誠意って物をだね……」


「金か!?金なのか!!?」


「い、いくら出せば良い!知っているだろうがウチに金なんて無いぞ!?」


よく解る世知辛さに涙が零れ落ちそうになったその時、

右手が掴まれたと思うと適当に動かされ、温かく、柔らかい所に着地した。

ウオオオオオッと男女を問わず周りのクラスメイトが沸く。


「これが、今ワタクシに示す事の出来る最大限の誠意ですわ。これで知りたい事を教えて頂けますの?」


右手を自分の豊満な胸に押し当てて、幼馴染にしてクラスメートのシリアーナ=ガ=ウィーク=オホホ男爵家令嬢が顔を近づけてくる。


「誠意は確かに示してもらいました。貴女は何を知りたいんですか?」


理性と打算を総動員して右手の指は関節一つ分すら動かさない。そうする事で得られる物が絶対にあると信じて。


「王宮メイドの平均結婚年齢ですわ。後は出会いがどれだけあるかですわ。」


「それははっきりと聞いてはいないから答えられないけど、それだとシリアーナ嬢に不誠実だよね……」


「いえ、知らない事を適当に答えられるよりは余程……」


よし、仕掛けはこれくらいでいいかな。


「だから、今度その人と会う時に君も一緒に来るかい?これだと他にも色々聞けると思うけど。」


さぁ、こちら本日の目玉商品!王宮メイドさんとの面会権!!!

お値段は皆様のお気持ち次第で!!!

紳士淑女の皆様方のご参加お待ちしております!

ドシドシご応募ください!!!


「家の領地から金を引っ張ってくる!頼む!俺も参加させてくれ!」


おおっと初手実家領地持ちの大型アピール!これは大きい!!!こうかはばつぎゅんだ!!


「「「お前だけに良いカッコさせるかよ。面会場所の支払いは俺達にマカセロー!!!」」」


バリバリー!マジックテープ騎士爵家のバリバリー兄弟じゃないか!?ヤメテ!?お前ら隣のクラスだろ!?授業はどうした!?


「休日の外出には教師の許可が必要、そうではないかね?」


「ええ、その通りですとも、ワシハ学年主任。マジメ君、言っている事はわかるね?」


理解したくない教育現場の闇共々分かってしまった……


「マジメ君、先生は貴方の事を信じていますよ……」


先生、それって信じていない人のセリフ……


「マジメ君、最後の一線を超えないなら後で私の部屋に来てくれれば……」


君の部屋に行った時点でシュレディンガーのラストライン扱いになって重い責任背負わされるんじゃがそれは……


「マジメ、俺たち親友だよな!?今度ウチに来た時妹の胸揉んで良いから……」


「親友だと俺も思っていたが今度と言わず今縁切っていいか?お前の妹まだ10才じゃねーか!!!」

貴族以前に人として終わるわ!!!


……俺が言うのも何だが、この国もうダメじゃね?……


第五話


参加者の取り纏めと参加料の回収がグダグダになったが約束の前日までには各種調整を片づけた。

そして当日朝、食堂にて。


「なぁマジメ卿、今日のこの服装について卿の忌憚なき意見を聞かせてくれないか?」


「大通りのオリーベ裁縫のオーダー仕立てとは張り込みましたな!流石はホワイトバード殿、お美事な装いかと。」


「なぁマジメ大先生。本当に俺のアピールポイントは実家が領地持ちって所でいいのか?成り上がり感丸出しじゃね?」


「そんな事を平然と宣う憎いオマチクショウに忠告だ。王都住まいの官僚貴族の大半は領地無しだ。この言葉の意味が解らなけりゃ今日は何も言うな。」


嗚呼、実家の貧乏が憎い。この目の前に勝ち確の切り札持ちが居るという現実にそろそろ耐えられない。

? ならコイツを連れて行かなきゃ良いと思ったキミは貴族度がまだ足りないと言わざるを得ない。

彼を連れて行く事で今日の試合は負け確だが、大局的にはデカイ利益が得られるんだ。……ソノハズダ、キット……

未来の大勝利の為に、今日は汚泥を啜るケツイをこの時まで満たしてきたのだ。嗚呼、王宮勤めのメイドさんのご縁とか俺が独占したかった……(嘆

そろそろ時間だ。さぁ諸君、出かけようじゃないか。

学園入り口前に手配した大型馬車に乗り込み、御者に出発を促す。


「う~緊張してきたなー。」


「聞きたくはないが、用は済ませてきたよな?今日何か起きても俺は何もフォロー出来んからな?」


「おいおい。俺だって立派なジェントルだぜ?むしろ今日は俺達がフォローしてやるよ!」


言ったな。ならばここ7日でお前らに掛けられた苦労の分は後で絶対に利子付けて取り立てるからな?

本当に苦労した……

何で俺がヤロー共の立ち居振る舞いや服装の指導に食事のマナーの面倒まで見てやらにゃならんかったんだ。

俺はオマエラのカーチャンかっつーのだ。

もしも夜を共に過ごすことになったらどうしようとかそれこそ俺にどうしろと言うのだ。

イラ付いたのでシリアーナ嬢の実家に相談して彼女の家の警邏管轄区域内の歓楽街の娼館に金払って放り込んだら

泣きながら逃げ出して来たというオチがついたが。

店に迷惑を掛けた詫びに出向いたら、貴族の坊ちゃん相手という事で選び抜いた店の子のプライドが傷ついたと言われ何故か俺が彼女らが満足するまで相手をする事になったのはホント何故だ。役得?大損だわ。

翌日シリアーナ嬢には「昨夜は大変お楽しみだったそうですわね。」と言われ、

大半の女子には白い目で見られ、シリアーナ嬢経由で詳細を聞いた一部の女子(シリアーナ嬢含む)からは熱い目で見られるという微妙なモテ期が到来し、

男子からは大先生扱いされるという散々な結果になったのだ。

誠実と信頼を売りにしていた俺の信用が1夜で性実と信頼(笑 になるとか……

この大損失をどう補填した物か……

益体もない事を考えていると、馬車が停車した。もう着いたのかな?


「おーい、御者君!もう着いたのかい?」


「いえ、旦那様。何だか馬車が渋滞していまして。お急ぎでしたら申し訳ございません!何卒ご容赦お願いします!」


「そうか、渋滞かぁ。それは仕方ないんじゃないかな♪(ニチャア」


よし!もしかしたらと思っていたがこれは確変リーチ来たか!


「おい、もしやあの馬車の紋章は伯爵家の……!?」


こっちの馬車の中からそんな声が。


「知っているのか!ヴァイデン!?」


「ああ、間違いない。あの赤白の縞地模様に無数の星を纏った大鷲の意匠はウチの寄り親のステーツ伯爵家の紋章だ!

何でこんな所に!?」


「いやぁ、不思議ですねぇ。あ。全然関係無い情報ですが、あそこの伯爵家には王宮付のメイドを務められていらっしゃる未婚のご令嬢がいらっしゃるそうで。いえ、何となく思い出しただけですが。」


「待ってくれ(震え声 ま、まさか大先生、貴方は……(恐」


「男爵家の子息が伯爵家のご令嬢に接する機会なんてナカッタ。イイネ?」


「アッ、ハイ。(Kizoku Riality Shock発症)」


無用な騒動の火種は事前に鎮火した。こないだの件もこのくらい楽に片付けばよかったのになぁ……






Kizoku Riality Shock 

思わぬ所で発動する非現実性コネクション存在を目の当たりにした貴族が突発的に発症するショック症状

階級が低い者ほど発症しやすいが、大身貴族でも発症する人はいる。


第六話


馬車の列は今日の約束の店の前まで50台位並んでいた。

爆釣である。ヤッター! ……所ではない。多過ぎである。

精々普通の馬車5~6台位か、我々の様に大型の馬車1,2台程度と思っていたのに。

不味い。これはひょっとして俺の手に余る案件だったのでは……?

いや待て。ひょっとしたらこれらの馬車は俺の狙いに関係なくたまたま…そう、偶然この近くに集まってしまっただけじゃないか?

そうだろう、そうに違いない、きっとそうだ……(祈り


(主神からのお知らせ:違うよ?)


何……だと?コイツ、脳内に直接……!?アンチスパム用の魔道具は…正常に機能中。


(主神からの大切なお知らせ:全部君が画策した結果だよ……あと、その魔道具の術式、魔神に言って存在消抹させたから。今後ワタシの神託の受け取り拒否とか許されざる所業として天罰の対象扱いになるから。新しい術式を魔神と共謀して開発してもすぐ存在消えるよ?

あと、神託をスパムメール扱いとか不敬が過ぎるよ?)


生後1年も経たない赤子にヒドイン対策の催促メールを毎日100件位送ってきたのはそちらでしょうに。

魔神様に取り入って何とか開発した対神託用魔術”いいから一寸黙れ、な?”を起動するまでホント毎日うざったかったと言うのに……

あの煩わしい日々が帰ってくるのか。今度は迷惑メール転送用魔術”ダストボックス”の構想を実用化しなきゃ……魔神様にも迷惑かけるなぁ……今度実家の地下神殿訪問して付け届けしなきゃ……


(主神からの切実なお知らせ:キミはまずワタシを敬う事を思い出すべきじゃないかな?神の序列としては主神>魔神なのに、

キミの信仰の総量はどう鑑みてもワタシ<魔神なんだけど!?あと魔神”様”て!?ワタシ主神なのにキミに様付けされた事無いよ!?)


ハハッ、テラワロス。魔神だぁ……?”様”を付けろよデコ助女神!?

あのお方は森羅万象の魔術を司り、その英知の一端を俺のような人間風情にも授けてくださり、

オメーと違って部下の管理もキチンとしてくださっているんだぞ!

人類がノホホンと頭中世で内輪揉めしながらも存続できているのは頭鎌倉な魔王と愉快な頭薩摩な魔族共をあの御方がキッチリ

纏めてくださっているからじゃねーか!

頭スイーツな部下の管理に失敗して人類社会に深刻な害悪を齎しつつある主神(笑 が様付け希望とか一万光年早いわ!


(主神からのタイムリーなお知らせ:キミの思念を盗み聞きしてた魔神が、キミの前世世界でいう所のアヘ顔ダブルピースをしている件。キミの信仰対象だろ。早く何とかしてくれよ……)


嘘だろ。あのメガネが似合いそうな知的女神様のアヘ顔ダブルピース姿……神様仏様主神様、RECお願いします!どうか、どうか……!


(主神からの残念なお知らせ:RECって何さ。魔神ちゃんはもう直ったよ。)


神は死んだ……!


(主神からの天罰のお知らせ:何縁起でも無い事を言い出すのさ!?さっきの件と併せて後で天罰行くよ!!許してほしかったらキミの前世世界の甘味を再現して奉納する事!)


地味にハードル高い要求を……!?

材料の調達と調理器具開発、さらにレシピ再現にいくら掛かると……!?

何より王都の主神殿とか神への捧げ物を供えるだけでボッタくって来ると銭ゲバで有名な王都ガッカリ観光名所ランクイン上位常駐じゃねーか!?めんどくせぇ。庭に木製の簡易祭壇組んで供えりゃいいか。


(主神からの否定的なお知らせ:だ~め♪)


果てしなくUZeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!


第七話


気を取り直して、店前のボーイに名前と用件を告げる。


「予約を取っていたマジメ=K=クズだが、席に案内してほしい。

後ろの紳士淑女は私の友人達だ。急で済まないが、空いている席があれば入れてもらえないだろうか?」


「はい。事前に連絡を頂いておりましたので50名程のお席の準備をさせて頂いておりましたが、先方の方の”ご友人の方々”が大勢来られまして、只今取り急ぎ追加のお席をご用意させていただいております!」


「わかった。費用はいくらかかってもいい。追加分は後日纏めて請求してくれ。中に入って大丈夫か?それとも準備にはまだ少し時間がかかるかな?」


「大変恐縮ですがもうしばらくお待ちいただく事になるかと。折角ご用命いただきましたのにこの様な不手際……」


「いや、私の見積もりが甘かったので君達には負担を掛けさせた。責任はこちらにあるので気にしないでくれ。」


真っ青な顔で謝罪してくる店主。フォローを入れないと自害しかねないのでケツ持ちはこちらですると明言しておく。


ウチ、唯の男爵家なんだけどなぁ……


「皆、済まない。私が参加人数の把握が出来ていなかったのでもう少し用意に時間が掛かる様だ。申し訳ないがもう少し馬車の中で待っていてくれないか?」


「この辺りあまり来たことないから一寸歩いてきていいかい?」


「用意が出来たら直ぐに呼びに行ける範囲ならどーぞ。この辺りは貴族街の近くだから治安は良いけどトラブルには気を付けてね。」


「おう、何人かで固まっていくわ。誰か一緒に来ないか?」


「一寸気になってた店が近くにあるから行くわ。」


「私もいいかしら?」


5~10人のグループ2つが出かけて行った。騎士科の男子も1,2人いたからまぁ大丈夫かな。

念の為、防護魔術も掛けておいたし、

完全武装の騎士のランスチャージを喰らう様なバデストイベントが起きなければ大丈夫だろうが……


一刻(一時間)程度の後、準備が出来たとの連絡があったため、外に出て行った連中を迎えに行く。防護魔術のついでにGPSマーキングの代用的なマーキング魔術も掛けておいたので探すのには大して手間がかからなかったが、彼らがいると思わしき場所では何やら騒がしい事になっていた。…まさか、この短時間でトラブルか……?


「お前らそこをどけ!!!俺はこれからあの悪女とマジメって悪党を成敗しに行くんだよ!!!」


人だかりの中心にいたのはフルプレートを着込んで騎馬に跨り、そんな戯言をほざくボンクラーズの一

人。確か名前は……え~っと……

……ダメだ、脳が記憶の呼び出しを拒否して名前が出てこない……

つか俺が悪党とかどんな了見だ。


「はいはーい。一寸道開けてくれ。皆ー。店の準備が出来たからそろそろ戻ってくれ。」


「出やがったな、この悪党!!! 我こそはサイボー子爵家が一子、ノーキン=デ=タン=サイボー!!!

マジメ=K……けー……」


「マジメ=K=クズ」


「そうだ! マジメ=K=ドクズヤロー!!!お前に今この場で決闘を申し込む!!!」


「お断りします。それと公衆の面前で侮辱されたので後でサイボー家に謝罪と賠償求めて抗議しますね。あと、マジメ=K=クズです、ノーテンキさん。」


「ふざけんな!家は関係ネーだろうが!この悪党が!」


まだ言うか。


「そもそも何故、私が悪党扱いされているんですか?」


おぅ、ソース出せよ、ソース。ウスターでもブルドックでもいいぞ。薄味なんだよ、この世界の食生活。

「そんなもん決まってんだろ! アタシちゃんがそう言っていたんだよ!」


オマエハナニヲイッテイルンダ……おかしいなぁ、ここまで理解できない発言はこの間ぶりだぞぅ…?

その前は前世のクソ上司の世迷い言まで遡らんとならんし…ウッ頭が(魂からの拒絶

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