93.レベルアップ
自分で立てた仮説を元に、俺はとにかく細く繊細な魔力の糸を意識して操作することに専念して修行を行う。
その糸をコーティングするように魔力で覆い、今度は別な糸を螺旋状に絡ませて編み上げていく。
魔法の威力は体内で循環させる量とその速度で強くなるという事が分かっている。
で、あれば同じ量の魔力を使用するのでも、細く長くそしてその分高速で循環させることができれば、魔法の威力を上げられるのではと思った。
そして、極細の糸状のイメージを別の魔力でコーティングすれば、自分の魔力気配を遮断することもできるのではないかとも考えている。
「キツイな…」
極細の魔力の糸を練り上げることがまず難しい。
加えてそれを察知させないためのコーティングも極薄に仕上げなければならない。
最終的には全く同じそれを何千本、何万本と編み上げたロープのようにしたいのだが、一本でも太さに乱れがあると操作がまったく安定しない。
これまでの魔力操作とは一線を画す激高の難易度である。
「いきなりは無理だな…。筋繊維や神経の強化から始めてみるか」
今までやったことのなかったことよりも、既にできている身体強化をグレードアップさせることで、イメージを掴もうという算段だ。
「フッ…!くぅう……っ」
これでもかなり魔力操作が難しいが、何とか神経や筋繊維よりもさらに細い魔力糸の束で強化をしてみる。
そして、なんとか操作ができている状態で、試しに格闘術の型のようなもので動きを確かめてみることにした。
「………ッ!?これ、制御が難しすぎるが持続力と爆発力、そして動きの精度が格段に上がるな」
新しい身体強化を行うと、体中のエネルギーを余すことなく使えるため、動きの無駄や乱れが劇的に減少する。
無駄になっていた力を効率的に使えるという事は、その分を余すことなく威力アップにまわせるという事だ。
俺は身体強化としても魔力強化としても習得する価値は十分にあると判断した。
「時間は止まってて、空腹も睡眠も排便も気にすることが無いからな。何年かかっても、このスキル空間で習得してやるぞッ」
俺は腰を据えて修行に打ち込むことにした。
―それから半年後。
「ロイ!ちょっとこっちに来るんだ!」
修行を始めて半年ほど経った頃、突然エマさんに呼び出しを喰らう。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ………な、何かありました?」
俺は慌ててエマさんのところに向かう。
すると、なぜか例のこたつで茶を啜っているペニーさんがいたのだ。
「あれ?ペニーさんどうしたんです?」
不思議に思って問いかけると、目が据わった薄気味悪い笑顔を浮かべた。
「…ふふふ。どうしたか、だって? ふふふ。君はホントに良い度胸をしているよね、ふふふふふふふふふふふ…」
こ、怖い!
あんな爽やかだったのに、これがこの人の正体なのか!?
ゾワッと鳥肌を立てて後ずさりすると、エマさんがそっと耳打ちしてきた。
「お前が修練の塔に全然行かないから拗ねているんだ。どうにかしろ…!」
「ええ~…?拗ねるって、そんな現実世界じゃあるまいし…」
(そんなところを無駄にリアル感出さなくてもいいんだけど…)
そんなふうに思っていると、エマさんが首を振りながら今の状況を説明してくれた。
「お前が何を考えているか想像がつくから教えてやるが、これは大事なことだぞ?ロイ」
「…というと?」
「これまでもそうだったが、あまりに自分一人でスキル空間に居続け過ぎている。我が時折休憩を促してやっていたが、適度に力を抜かなければ自分のスキルから抜け出せなくなってしまうぞ」
「え?それって、考えすぎて自分の世界から抜け出せなくなってしまうっていう感じですか?前にも同じようなことはありましたが…」
「今回はあまりに没頭しすぎている。スキル空間に取り込まれないようにと、警告しにペニーが塔から出て来てくれたのだ。しかも、今回は師匠となるペニーの機嫌はすこぶる悪い。体感で3日ほどでいい。ここで休憩していけ」
エマさんの助言をもらった俺は、恐る恐るペニーさんを見た。
「ふふふふふふ。引きこもりは良くないよ~…?ねえ、ロイ君?」
うっ!?
こ、これは危険だ!
な、なぜか、ペニーさんの周囲の温度が急激に下がっている気がする…!
「わ、分かりました…!休みます!休みますから、どうかお茶をご一緒させてください!」
土下座する勢いで、俺はこたつに滑り込んだ。
しかし、こたつに入っても全然温かくなっている気がしない。
修練宝塔のスキルは、どうしてこう変なところで凝った仕様になっているのか……まるで意味が分からん!
とにかく俺は、実質5日間程の時間を茶と茶菓子を口に運びながらダラダラと無為に過ごしたあと、体感時間で実に4年もの期間を要して身体強化と魔力操作の修行を行うのだった。
―そして。
俺は修練の塔の中で、ペニーさんと笑顔で向かい合っている。
「君に呼ばれてここに来たけど、まさかここまで長期間に渡って拘束されるとは思ってなかったなぁ。、何度かキレたりもしたけど、こたつは居心地がいいし、お茶もお菓子も美味しいものばかりで楽しかったよ」
「いや~…その節は本当にご迷惑をおかけして……」
「あははっ、そんなに緊張しなくていいよ。放っておかれなきゃキレたりしないからさ。それにしても、なんとか本来の修行が終われたね。おめでとう、君は晴れて【特級索敵】のスキル習得となったよ!」
修行に没頭しすぎて何度か『氷点下ペニー』へと変貌させてしまったが、新しい身体強化と魔力操作を身に付けて、ペニーさんとの修行までを無事に終えることができた。
ペニーさんが爽やかな笑顔でスキル習得を告げてくれる。
「現実世界ではお詫びと恩返しを兼ねて、前回以上に一生懸命に靴を磨かせていただきますね」
スキルを習得した事で次第に透けていく俺の身体だったが、右手を出してペニーさんと握手を交わす。
「がんばってね!」
「はい!ありがとうございます!」
ふと塔の入り口を見ると、エマさんが親指を立てて激励してくれている。
…うん。元気が出た!
今回はラウルのおかげで気も引き締まった。
心身共に充実してる気がする。
よし。
「では、行ってきます!」
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ロイの取得スキル
特級魔力操作 ☆レベルUP
※上級を飛越えて自力で習得
中級火魔法
中級水魔法
上級土魔法
中級風魔法
下級治癒魔法
特級身体強化 ☆レベルUP
※上級を飛越えて自力で習得
上級剣技
上級短剣技
中級棒術
上級槍術
特級索敵 ☆レベルUP
上級解体
上級皮加工(修繕のみ)
上級調合
特級体術
中級隠密
空中歩行(2歩)
上級鍛冶(修繕のみ)
上級裁縫(修繕のみ)
上級調理(下準備のみ)
上級診察
中級目利き
中級翻訳(3か国語)
中級川釣り
中級弓術
中級斧術
中級盾術
中級盗術
中級悪食
いつもロイたちの物語を読んでいただきありがとうございます!
そして、評価していただいた方、いいねをくださった方、ブックマークして頂いている方、本当にありがとうございます!
皆様から力を分けて頂いて書くことができているんだなぁ、と日々実感しています。
投稿スピードは相変わらずの不安定型で申し訳ないのですが、皆様の応援のおかげで自分でも楽しみながらロイたちの活躍を書くことができています。
今後も楽しんでいただけるように頑張りますので、これからもロイたちをよろしくお願いいたします。




