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モノゴイと呼ばれた男  作者: クラノ恩樹
第1章 開拓村編

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38.封印の塔を封印してやった

「エマさん、逆にこっちからこの塔を封印することってできませんかね?」


「ん?どういうことだ?」


俺は、見通しのつかない今後をどうにかするよりも後回しにする方法がないかエマさんに相談することにした。


「なんというか、あの塔からの拘束力を無力化したいんですよ。現実世界に戻りたいんです。

 エマさんと一緒にいられるのはすごく嬉しいんですけど、ポロンや初めてできた友達を早く安全な場所に連れて行ってやりたいんです!」


本当にこんなことをしている場合じゃない。

現実では時間が止まっているのだが、そういう問題ではないのだ。


今一番大事なことを脇に置いて、他のことなどできるはずがないじゃないか!


「………………」


切実な願いを訴えると、エマさんは腕を組んで例の塔を見つめながらしばらく考え込んでいた。


「…やってやれなくはない」


「本当ですか!?」


「ただし、それをするにはお前の魔力を消費して封印をし続けなければならないな。大体、魔力総量の3割…いや4割を使って、と言ったところか。」


俺の魔力を使って封印を施すという事か。

常に魔力を4割も持っていかれるなんて呪われた品を手にしてしまったとしか思えない。


とんでもないものを拾ってしまったな…。


「ま、まあ仕方ないですよね。目途が立ったら塔の攻略に動きますよ。」


俺の返答を聞き、静かに頷くとエマさんは話を続ける。


「それと封印するための明確なイメージが必要だ。

 何かないか?厄介者を封じ込めて置けるようなものなんだが…」


「封じ込めができるもののイメージですか?」


なんだろう?

臭いものにはフタ…………的な……………。


「………缶詰、なんかどうですかね?」


そう言うと、エマさんは目を見開いて一瞬固まったあと、腹を抱えて笑い出した。


「アハハハハハハッ! 缶詰か!それはいいな!

 あの塔を全て覆うほどの巨大な缶詰を創ってやるぞ!」


(よ、良かった。怒られるかと思ったが、予想外にもツボったらしい。)


エマさんは早速封印の準備に取り掛かった。


中空に何やら術式のようなものを書き始めると、不思議なことにそれがそのまま塔の周りの地面に描かれていく。


『むっ!?儂を結界内に押しとどめるつもりじゃな!?そうはさせんぞ!」


塔のラウルとかいう住人がエマさんの封印を察知して抵抗しようとしている。

こいつの脳みそは頭に血が上ると、全く機能しなくなるらしいな。


「はぁ…。あのな、ワイン野郎。

 封印されるってことは、隔離されたところで好き勝手出来るって事じゃないのか?

 エマさんにも干渉されず、その変な研究とやらもできるだろう?」


「うるさいぞ、小僧!黙って……………………んん?……ほぉ…。」


ようやく気づいたか。


「ならば、早くせんか!この――――――――――ッ!」


途中から聞くのを止めてやったよ。

付き合ってられるか。


そうこうしている間にもエマさんの術式は進み、白や赤、黄色や青など虹色に次々と変化し発光している。

塔を囲った術式は徐々に円筒形をかたち作り、遥か空の上までその壁を築いていく。


「さぁ、仕上げだ!」


エマさんの額から汗が滲み出ている。

大変そうだが、ここは頑張ってもらうしかない。


「ハアッ!!」


ガシーンッ


空のかなたで缶詰の上蓋が閉じられたようだ。

そしてその瞬間、虹色に明滅していた術式が、前世でよく見慣れていたメタルの缶詰に姿が変わった。


ビシィッ


ビシビシィッ


おまけにと言わんばかりに、『caution』と書かれた黄色いテープが厳重に何本も巻かれていく。


「…………はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。終わったぞ、ロイ!」


封印が終わったのだろう。

極度の疲労でエマさんが膝をついてしまう。


「だ、大丈夫ですか!?」


「心配ない。かなり消耗してしまったがな」


俺は急いで椅子をイメージで具現化してエマさんを座らせた。


「俺のために、すみません…」


「ははっ。何を謝ってるんだ。我はお前のために創り出されたスキルのナビゲーターだ。

 お前のために身を削るなど、誉れ以外のなんであろうか。」


「エマさん…」


自分のスキルの一部だとしても、エマさんにそんなことを言われて泣きそうになった。


「そんなことより大事なことがある」


エマさんは背もたれから体を起こして真剣な顔で話し出した。


「……? はい。どんなことでしょうか?」


「もっとスキルを使え!」


「スキルを?」


「そうだ。あの塔を攻撃していて感じたのだ。我がまだこのスキルの力に馴染んでいないとな。

 スキルを使い、お前自身がスキルの熟練度を上げるのだ!そうすれば、あの忌々しい塔でさえ好き勝手にはさせん!

 お前に修行をつけてやれないなど………我の存在意義など無いではないか……」


「………!」


エマさんが、今までになく深刻な顔をして俯いてしまった。

あの塔をどうにもできない自分が腹立たしいと、本当に悔しそうにしている。


エマさんにこんな顔をさせてはいけない。


そもそも自分の授かったスキルなのだ。

それを他人に、いや他人の残した経験値なんかが好き勝手しているということに憤らなければならない。


「分かりました…!必ずや、あの塔を攻略できる力を身に付けます!」


「頼んだぞ、ロイ…!」





徐々に意識が薄れていく。

塔の封印が完了したため、現実世界に戻れるのだろう。


悩みは増えた。


だけど、当面の目標が見つかった。

風魔法もおそらく習得できた。


呪いに近いものに取りつかれてしまったが悪い事ばかりではなかったはずだ。


「筋繊維を一本ずつ魔力で纏う……か。やってやろうじゃないかっ!」


(待っててください!エマさん!)


俺はエマさんの寂しそうな顔を見つめながら、決意を固めるのだった。


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