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モノゴイと呼ばれた男  作者: クラノ恩樹
第2章 奴隷の国編
182/183

167.レイバン襲来

―フロンティア拠点―


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!」


「大丈夫か、カリー?」


「はぁっ、はぁっ……………あ、ああ。さすがに……ちょっとキツイ………」


「ありがとね、カリー。少し休んでてくれ」


「サンキュ。そうさせてもらうわ……」


人物対象の転移はカリフィンの身体への負担が大きく、たとえ俺の魔力を補充したとしても連発ができない。

カリフィンは横たわり、意識を手放した。


「…………………………」


次の転移スキルを発動するまでの間、救助対象であるゲイルを含めた4人で窮状を凌がなくてはならない。

敵の本拠地で無事に返すことができるのか、不安に苛まれる。


「心配か?」


アイゼックが声をかけてくる。


「まあ、な」


「ふむ」


歯切れの悪い返事をすると、アイゼックは無言で俺を見続けてくる。


「…なんだよ?」


「いやなに。他人を心配するなど随分と余裕なものだと思ってな」


カチンときた。

4人の事を心配するのがそんなに悪い事なのか?


「あぁっ?何を煽ってきやが―――っ」


「お前は3人にゲイルを託すという決断を下した」


「うっ!そ、それが何だって……」


ケンカ腰で詰め寄る俺の言葉を遮る。

アイゼックの毅然とした態度に気圧されてしまう。


「ならばその結果が出るまでは、その決断を迷うな。お前のすべきことは見えない不安と戦う事じゃないはずだ」


「だ、だけど!」


()()()()()()()()()()()()()()()()。見える景色が変わるはずだ」


言いたいことを言ってアイゼックは奥へと去っていった。


(くっ、何が言いたい!?現状、ゲイルの救出が急務でそれ以外に今できる事なんかないだろうが!)


憤然としながら水魔法を発動し、自分で出した水を勢いよく飲み下す。


(なにが高い位置から場を眺めてみろだっ。()()()()()()()()()()()、俺はみんなの事を…………)




フロンティアの長として?


『もっと高い位置から場を眺めてみろよ』


フロンティアの長よりも高い………?


(どういう意味だ?街ベースで考えるとスラム、市街地……いや、違う。そういう物理的な話じゃない。フロンティアを含めたその周りまで見渡せる、って事なのか?ああ、もう何なんだよ!アイゼックは嫌味な野郎だが無駄なことはしないはずだから、なんかあるはずなんだ!なんなんだ、一体?)



「……待てよ?」



フロンティアを含めたその周り。

それはつまりは敵であるミジョウのことではないのか?


「ミジョウ…?ま、まさか!」


何かに気づき始めた俺は、危険察知のような不気味な悪寒に襲われた。


(ゲイルを拉致した時点で、ミジョウたちは俺たちに攻撃を仕掛けたことになる―――つまり!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。敵意が潰したい相手にバレたとき、それを黙って放っておくのか?)


否!ゲイル救出の妨害、そして準備が整う前の畳みかけをしてくるはず!


「まさか、フロンティアの拠点が狙われている!?」


俺は警戒を行うためにフロンティア全体とその周辺に危険察知の網を張る。

膨大な魔力量だからできる芸当だ。


”ようやく気付いたか、ロイ!マグの風魔法で声を届けているが聞こえているな!?今俺はリブロとヴィンスを連れて裏に回っている!こっちには大群が来てるようだ!ガキどものことはお前の母親とショーンそれにリアーナ司祭に任せてある!近くにデイビットが近くに居たらこっちに回してくれ!”


なんてことだ…。

既にアイゼックはそれを予想して動いていたのだ!


「くそっ!」


スキルを得てできることは増えたが、使う本人がボンクラじゃ宝の持ち腐れもいいところだ。


だが、反省も後悔の時間もあるわけじゃない。

俺は感情を投げ捨てて目の前の脅威に集中することにした。


近くにいたデイビッドさんにもアイゼックの声が聞こえていたらしく、「気をつけろよ、ロイ」と一言だけ残してアイゼックに火星に向かってくれた。


”分かった!くれぐれも死ぬんじゃないぞ!”


”こっちは問題ない!デイビッドがいればどれほどの大群でも後ろに通すことはないからな!ただ、分かってるな!?裏手に大群が押し寄せてるってことは……”


ああ。


さすがにそれくらいは分かってる。


()()()が正面から来てるって事だろう?





「お前がフロンティアとかいう賊の首魁のガキだな?」





既に俺の目は、襲撃者の姿を捉えていた。





―。





襲撃者は意外にも真正面から俺に対峙したまま俺を観察する。

すぐに攻撃を仕掛けてくると思ったが、声をかけてみることにした。


「あんたは?」


「俺はレイバンや。分かっとるとは思うけど、ミジョウさんの部下で、この組織を潰しに来たんや」


(……まさかの関西弁!?こっちにも関西弁があるのか!)


内心、かなり動揺しながら会話を続ける。


「ロイだ。あんたの言う通りここの首魁を務めている」


日焼けして色黒な肌。

耳にリング型のピアスを何個かつけているな。


身長は俺よりは当然高いがゲイルよりは少し小さいな。


髪型は独特だ――――あれはコーンロウとでもいうのか?

動きを阻害しないようにバンダナを撒いている。



………ん?



「首魁を務めてる?」

「あんた今、()()()()()()()って言わなかったよな?」


お互いのセリフに疑問を持った。

そして同じタイミングでその疑問をぶつけ合う。


「ああ、一応ここのリーダーやってるって意味なんだが…」

「だって至高ミジョウ様って、呼びにくいやん?」


また、セリフが被る。


「「………………」」


その後、しばらく身振り手振りで「あなたからどうぞ」「いやいや、そちらからどうぞ」のやり取りをして、とりあえず俺の疑問から聞いてもらう事にした。


「呼びづらいってことで、至高省いて読んで怒られないの?」


「俺は優秀やからな。文句言われても全然平気や」


「………文句言われた人、口もとヒクついてなかった?」


「ん?ああ、だいたいみんな、そんな感じに不格好に笑っとったわ」


それって、諦められてるだけじゃないのか?


「…あんたよく殺されなかったな」


「問題あらへんで。俺はおもろいからここにおんねん。俺を縛ろうとするんやったら、ミジョウさんのところからでも出てったるわ」


「ミジョウが怒っても?」


「その時はミジョウさんと戦って自由になるだけや」


凄い自信だ。

相当腕に自信があるんだ。


しかもハッタリじゃない。

実際に対峙していてその強さがビシビシ伝わってくる。


自分を縛ろうとする者には牙を剥き、ミジョウさえも倒す覚悟がある――そんな彼の姿は、単なる部下という枠を超えていた。


「強いんだな、あんた」


「ああ」


レイバンの言葉には一片の曖昧さもなかった。だが、その強さがどこから来るのかを確かめる間もなく、彼の周囲に雷のようなエネルギーが走り始めた。


「見せたるわ、俺の力をな!」


「これは―――か、雷を操るのか!?」


「その通りや。俺は半端ちゃうで、覚悟しときや?」


(雷のスキルがあるなんて初耳だぞ!)


攻撃速度は他の属性魔法に比べて段違いに速いだろう。

しかも威力も相当強いことが予想される。


「くそっ!螺旋風弾!」


何よりも、前世知識でよく見かけたのが雷を纏って身体能力を爆上げするというもの。

もし、それを実際に使われてしまったら成す術なく敗れてしまう事も考えられる。


先手必勝といわんばかりに、グレゴリーホークの風纏いを応用させた風の弾丸を乱発する。




「……あくび出るわ」





螺旋風弾を放った直後にレイバンの声が後ろから聞こえた。


「なっ……!?」


雷貫(らいかん)


ロイは振り向きながらレイバンから放たれた雷を纏った突きを見た。


(…あ、終わった)


絶対に防ぎようのない攻撃を前に、ロイは死を悟った。




「やらせねえーッ!ロイーッ!」

いつも読んでいただきありがとうございます!

また、作品を気に入っていただき評価・ブックマークしてくださっている方、いつも力を頂いております!


次回の更新は12/16(月)を予定しています。

ぜひ、お楽しみに!

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