1.全裸の集団
新しく始めます。
「その祝福は世界を変えるか」ともどもよろしくお願いいたします。
「次ぃっ!」
ぼんやりしていた俺は、
前方で聞こえる野太い声にハッとする。
顔をあげると長蛇の列の中腹に自分がいることが分かった。
その長い列は少しずつ、少しずつ前に進んでいる。
(んん?これは……おかしいぞ?)
声にこそ出していないが、
異様な光景に俺は呆然としていた。
列に並ぶ全員が裸だったのだ。
男も女も関係ない。
後ろに延々と続いている列に並んでいる人も、
例外なく真っ裸なのだ。
(えっと…という事は―。)
そろりと自分の腹のあたりを伺う。
「うお!やっぱり俺もか!」
俺も全裸だった。
一瞬慌てて股間を隠してみたものの誰も見ていない。
というか、自分も女の人の裸を見ても何とも思わなかったことに、
ようやく気付いたくらいだった。
「こ、ここは一体…?」
事態が呑み込めずに落ち着きなくキョロキョロしていると、
誰かから声をかけられた。
「おい、そこのお前少し静かにしろ。」
「ヌひぃっ!」
あたりを見回していたはずなのに、
知らないうちにすぐそばまで近寄られていてビックリした。
「ぬ、ヌひぃ…?」
驚きで変な声をあげてしまい顔が赤くなっている気がする。
これは全裸の自分より恥ずかしい。
可哀そうな目をして呆れられた。
手遅れのような気もするが、
羞恥を悟られないように少し質問してみた。
「あのう、私はどうしてここに居るのでしょうか。」
「お、お前っ。俺にビビらないなっ?」
話しかけたらビックリされた。
俺がビビらない事にこの人はビビっているようだ。
「ビックリはしましたよ?」
「普通のやつは俺を見たら目も合わせられないんだぞ。」
「ど、どういうことですか?」
「心位の格が違い過ぎるからな。
本当なら俺の圧に負けて立っている事すらできないやつもいるんだぞ。」
心位の格。
言葉の意味はよく分からないが、言われてみれば確かに、
この人からはオーラというか不思議な雰囲気を感じる。
(あれ?この人そういえば…。)
「服、着ているんですね?ほかの人は全裸なのに。」
そうなのだ。
みんな全裸なのに、この人は服を着ているのだ。
平安貴族のようなダボダボした黄色い服だ。
こんなに黄色尽くしの人は教育番組のアニメでしか見たことがない。
当然相棒のお猿はいないが。
「ああ。俺はここで働いているからな。」
どうも言っていることがよくわからない。
「ここってどこなんでしょうか?」
少しうんざりしているかのように、
ふうっとため息を吐きつつ答えてくれた。
「ここは死後の世界だ。お前は死んだんだよ。」
…俺、死んだの?