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転生令嬢の最強釘バット  作者: 御重スミヲ
9/14

9、馬


 脳ミソお花畑な連中もさすがに己が地位の危うさに気付いたのか、私を王子の婚約者にどうかと言ってきた。

 すげぇ、我が子を生贄にする気満々だ。

 しかもハリボテとはいえいまだ上から目線で、しがない男爵令嬢でも侯爵家の養女になるって裏技が使えるんだから安心して嫁いでこいってさ。

 そういや王妃サマも男爵家の出だ。いわゆる前例ってやつで、そういうやり口には詳しいわけよ。

 ……断るに決まってるよなぁ?

 本当どの面下げて言ってんだって話。

 だいたいあの夫婦の子供相手じゃ話が通じなくて毎日イライラしてる光景しか思い浮かばんわ。


 いらんストレスを感じた私を可哀そうに思ったか、伯父さんが馬をプレゼントしてくれた。

 でかいっ! カッコイイ! そしてとてもやさしい目をしてる。

 単車が生きてて意思疎通できるなんて最高だ。

 女同士、仲良くしような。


 侯爵邸は敷地内に庭園はもちろん人口の池や森まであるくらいだから、広いと言わずして何と言う?ってなものだが、思いっきり馬を走らせるのは躊躇われる。

 兎穴なんかで骨折する馬が割と多いとか聞くと余計に。

 訓練用の馬場もあるにはあるけど、あくまで人の都合に合わせたものだからそりゃ狭いわな。


 プレゼントをもらったばかりで、すぐに次のおねだりをするのも気が引けるけど……いやこれは儲け話でもある!

 私自身も出資する気満々で、王都郊外に競馬場を造る企画書を作成。

 もちろんその練習場でチェリーブロッサム号を思いっきり走らせてあげるのが、第一の目的なんだが。

 配当とかの計算にかんする記述のあたりで伯父さんの目がキラリと光る。

 おうおう、こういうの好きそうだもんね。


 結局のところお祖父さんやお祖母さんも一枚どころかがっつり噛んで、適当な土地を購入し整備する。

 やっぱり貴族席と平民の立ち見スペースは柵で仕切るようかね?


 馬自慢の貴族はいくらでもいるので出走馬に困ることはない。

 ただ普通の乗馬や戦場で馬を走らせるのとはまた違う。

 まだジョッキーの技術なんてなさそうだし、私も出走して勝ち逃げしておこうかな~なんて。

 ……お祖母さんの言語機銃に負けた。

 代わりに我が女騎士を鍛えて送り出す。

 こっちには身内は賭けられないなんて決まりはないから大穴大穴、ふひひひひっ。


 競馬場の敷地に出店を出させることも忘れてないさ。

 レストラン・マーサで男連中にも密かに人気のプチシューはもちろん、この日のために用意させたマロングラッセや搾りたてのジュース、揚げたジャガイモに塩を振っただけのフライドポテトなんかも飛ぶように売れる。


 これも貴族用と平民用と場所を分けてトラブルのないように気を付けてるけど、まあ何かあったら侯爵家の騎士が出て、それでどうにもならなかったら私が出ると。

 おう、用心棒みたいでカッコイイな。

 その時は「先生、お願いします」って声を掛けてくれる?

 でも、待ち構えてる時に限って出番はないものなんだよなぁ。

 うちの騎士が言うには、天災にかかわる所で騒ぎを起こすなどよほどの死にたがりでしょうとのこと。


 おかげで思っていたよりずっと早く侯爵領軍の装備を新調できるって伯父さんに感謝された。

 いえ、それほどでもっ。

 じつは家臣団とその家族を生き別れにさせてしまったことがちょっと気になってる。

 しかし奥方と子供がやる気になってくれんことにはなぁ……


 これはどう考えてもここ十数年の貴族教育が悪い!

 ということで王立貴族学院を見学させてもらおうではないか。


 対応してくれてる学院長、脇汗すっごいぞ。

「こ、こここ今年からは女子にも順次、戦闘訓練を実施させていく予定でして」

 ほう?

「いつですか? 今日ですか、明日ですか、明後日ですか? まさか予定は未定なんてことはないですよね? 時も敵も魔物も待ってくれないと思うので、いいでしょう。私が来たからには生徒たちに危機感というものを叩き込んで差し上げようではありませんか」

 風の噂では高位貴族の令嬢たちが親の威光を笠に着て無駄な抵抗をしてるらしいんだが、ああ昨日までに少しでも訓練しておけばよかったって後悔すること請け合い。


「ごきげんよう! 天災は待ってくれないことを知っていただくお時間ですよ」

 適当な扉をバーンッ!と開けて乱入。

「学院長、戦闘訓練は今日の午後からということでよろしいですね?」

「えええっ、と、いやぁ~」

 金髪縦ロールにすごい目でにらまれて目を泳がせる学院長。

 がんばれ! 負けるな!

「そうでないなら満遍なく骨を折りますけど? 訓練するならまあ打撲くらいで済ませようかなと」

「く、くくく訓練を実施します! み、皆さん聞こえましたね?」

「何を勝手なことをおっしゃっているのです。だいたいいまは計算の授業中で、ぎゃぁ! いや、なにっ、や、やめなさ……いっ、痛いぃぃ」

 いやだから授業中だって関係なく天災はやってくるんだってば。


「あ、先生、そこの計算式、導入する公式が間違ってますよ」

「え? あ、ああ……ありがとうございま、ぐぼぅ」

「先生にまで、む、無体な真似はよせぇ!」

 お、気骨のある男子もいるじゃないか!

 でも、見るからに弱っちいのぅ。

「口だけでは国も女も守れない!」

「何を言、うおっ! なんのこれしギャッ……ぐふっ、うぇぇぇん」

 私が移動する先々で阿鼻叫喚の様相を呈してるけど、これくらい子守唄のようなものだ。

 戦争やスタンピートが始まったらこんなものじゃないだろうからさ。


 何事かと駆け付けた戦闘訓練の担当教諭は、私の意図を知って感謝してくれたよ。その前に何発も殴っちゃったけどさ。

 各人のスキルも極力伸ばしていく方針だって。

 いや~今日もいい仕事したな私。

 だからか無性にビール飲みてぇ(十歳)



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