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Ⅳ.Friend

 ツェツィーリアは友達付き合いをそれほどするわけではない。だからといって人間関係――悪魔関係?が苦手な訳でもない。

 彼女は魔界では主たるルシファーの一人娘、お姫様であったがアグレアス公爵家のお嬢様であるアイリスやシトリー公爵家のお嬢様であるエルフェルティなど、それなりの家柄のお嬢様とは付き合いがあった。普通に人間界の小説を貸し借りすることやサロンを開くこともあり、人間界に比べてはゆるゆるだが、それなりに活動はしていたのである。


 人間界でもそれは発揮され、ツェツィーリアは人間界に来てからわずか半年で同格やそれなりの家柄の少女達と繋がりを作っていた。


「――ツェツィーリア様、王太子様の噂はご存知?」

「噂?」

「ええ。学院に第二王子様であるクヴェレ様と一緒にご入学されるんですって。婚約者も学院で探すらしいですの」


 ラスティレピド公爵家の庭園で、白のガーデンテーブルを囲んで少女たちがお喋りに興じている。

 ピンクのフリフリの、いかにも少女趣味といったドレスを着た少女はイザベラ・クライヒ・クレシェンテ。クレシェンテ侯爵家の長女で、茶色のカールした髪が特徴的だ。ツェツィーリアに話しかけた少女はソフィア・キュリオ・キルクルス。キルクルス伯爵家の長女である。此方は蒼のマーメイドドレスを着て、銀髪をバレッタで纏めている。最後がカミラ・ラナク・ゼーヴィンド。ゼーヴィンド公爵家の長女で、緋色の燃えるような髪に同色のドレスを合わせた、かわいいよりはかっこいいが似合う少女であった。


「……第二王子様も入学されるのは知らなかったわ。王太子様のことは学長様から聞いたのだけど」

「私はあの第二王子は好みではないんだよね、ものすごく軟派らしくて。行く先行く先で女性に甘い声をかけるらしい」


 ツェツィーリアの返答の後に、カミラが心底気に入らなさそうに吐き捨てた。

 公の場なら非難されるような言い草だが、此処にいるのは付き合いの長い、気の知れた友人達だ。特に何かいうこともない。


「なぁに、そんなに第二王子って女好きなの?」

「そこまではわからないけど。唯女性を口説くのはよくあることらしいね。登城したときにその第二王子と出会ったのだけど、父様の見ている目の前で口説かれたから」


 カミラの言葉に、楽しそうにイザベラが話しかける。


「あら。それでどうなの?容姿は悪くないし、やっぱりドキってしちゃった?」

「馬鹿を言わないでくれ。寒気で全身に鳥肌が立ちそうだったよ。私にはアレは駄目だ」


 イザベラに、カミラが腕をさすりながら返答した。カミラの生家であるゼーヴィンド公爵家はツェツィーリアの家であるラスティレピド公爵家とは違って、武官を輩出する貴族家である。ラスティレピド家は現公爵が宰相という完全な文官家で、同じ公爵家ではあるが全く性質は違う。武官を輩出する家であるゆえに、カミラも他の女性陣も、他の貴族家とは違って全員腕が立つのだ。確か現ゼーヴィンド公爵が王立騎士団の騎士団長ではなかったか。


「婚約するなら父様と同じくらい腕と筋肉がないと。あんななよっとした男は趣味じゃないな。母様も私の意見に賛同してくれる筈さ」

「流石ゼーヴィンド公爵家ねぇ。でも確かに私もちょっと嫌かも。小説の中ならまだしも、実際に歯の浮くような台詞を言われるのはきつい気がするわぁ」


 ソフィアが呆れたように、でもカミラに同意した。三人の中で一番身分が低いが、ソフィアは小説を好み、ツェツィーリアや他の三人もその恩恵を度々あずかっているので、特に問題はない。


「確かに小説でヒーローがヒロインに甘い台詞を言っても特に何も思わないのに、実際に言われるとちょっと引いてしまうの、不思議よね」

「フィクションとノンフィクションの違いでしょ。私もクリス様がルミナに愛を伝えるシーン、とっても好きだけど、現実にやられたら反応に困っちゃうわ」


 ツェツィーリアに続いて、イザベラが四人の中で流行っている小説――「永遠の約束」にたとえて話す。

 四人は共通の趣味として小説があり、親が商人でもあるソフィアが入手した小説を回し読みしたり、お互いに小説を勧め合ったりとすることも多い。「永遠の約束」は、四人の中でも、世間の中でも流行っている小説であった。分類は大衆小説だが、ツェツィーリア達貴族もよく読んでいる小説だ。


 四人はお茶と菓子を摘みながら、楽しく賑やかに話を弾ませていった。


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