4. 労働賃金
「んふっ、なかなかいい買い物が出来たわ! 物価は然程変わらないけど、物は良いわね」
ソフィアは満足気にふんすと鼻息荒く腰に手を当てると、宿屋に向かうパックは両手に荷物を持たされてついて行く。
「ソフィア様、ご満足したのですか?」
「してないわ〜! お金取り上げられちゃってもうこれ以上買えな……あっっ!!! しまった!!」
ソフィアが慌てた様子で財布を覗き込めば中身は1シルバーすら入っていない。
「あっちゃぁぁ〜」
べちりと自分の頭を叩くと、パックは申し訳なさそうに荷物を纏めて渡しながら「ではボクはコレで……」そうお辞儀をして去ろうとするのを、ソフィアがまた後ろから「お待ちなさい」と首根っこを掴む。
「やっぱりダメですよね……はいっ!」
パックは頭を下げ盗みの罪を償おうと、自警団に引き渡される覚悟で両手首を合わせてソフィアの前に出せば……、その上にイヤリングを乗せられた。
「変な受け取り方ね。こっちの風習? いやそれより私スッカリお金使い切っちゃってね。あなたへの報酬何払えないのよ。だから代わりにコレあげるわ」
「へ?」
間の抜けた声と共に手の上に乗った宝石の付いたイヤリングを見ていれば、
「じゃぁね!」そう言って背中を向けるソフィアの横へ慌てて並び、
「こんな豪華な物頂けません!そっ、それに服に食事に…ボクは充分見合う物以上を頂きました!」
必死で告げるパックに「ならそれ捨てといて」そう言い放てば、「思い出の品とかでは無いのですか?」遠慮がちに聞いたパックは自分を見たソフィアに「ヒッ」と小さな悲鳴を上げた。
「あぁそうね思い出の品よ。……どんな思い出かって言えば、元婚約者が浮気相手と色違いでお土産として買ってきた素敵な素敵〜な思い出の品よ」
「そ、それは大変、し、つれいを…」
燃え上がる様なその髪が、まさに燃え上がる様にうねるように見えて、パックは小さく震えながらなんとか口を開いて詫びれば、ソフィアは何事もなかったように
「パック、吃っちゃダメよ。たとえどんな状況でも堂々としてたらいいわ! 世の中ハッタリよ!」
買い物袋を両手に下げたまま腰に手を当て胸を張り、夕日を浴びて堂々と言う
「じゃ、またね!」
今度こそ颯爽と宿屋の中へと入るソフィアをパックはただ見つめ、その手の中にあるイヤリングを握りしめてから、何かを決意した顔をして町へと戻って行った。




