12.兎耳良良
「聞いてないわ!?」
「彼のためになんでもやると」
「なんでもとは言ったけどなんでもやる訳じゃないわ!!」
「矛盾してるねぇ」
ソフィアが騒ぐのも無理はない。
彼女が身に付けているのはバニーガールと呼ばれる衣装。
下着のようなそれは胸元は大きく開き、足も付け根辺りからは網タイツと呼ばれるものしか覆い隠してはくれず、王子妃教育として淑女たれと生きて来た彼女には耐えがたい羞恥心に襲われて、必死で胸元や足元を手で隠すように立つが、あまり意味はないように見える。
「いやぁ〜、よく似合うよ」
「似合う似合わないの問題じゃない!!」
「彼はもう行ったよ。さて、今度も運良く誰かが拾ってくれるかな?」
その言葉の意味すること。
それはパックが一人孤児院に『仕事先から解雇された』『この国ではもう身寄りも何もない』と言えば喜んで招き入れられ、そしてその整った顔を見た院長達によって身寄りのない彼は早々に闇オークションにかけられることとなっていた。
そして、今日がその日。
「あの子を人質にするだなんて……!」
「自分から進んでいったんだよ」
「だからって」
「ここで警備兵が捕まえれば、この国では孤児院の子供達は保護しなければいけなくなる。今、この場で捕まえるのが一番の大団円になるんだよ。だから彼も行ったし君も了承した」
「それは……! でも私までが、こんなっ格好」
「よく似合ってるよ」
「嬉しくないわ!!」
往生際の悪いソフィアに美丈夫は困ったように真っ直ぐに手を伸ばしその腕を組むと、
「仕方ないだろ。警戒のためか、警備のもの以外男は雇わない。しかもオークションなんて場所柄、華やかで綺麗な女性が求められていたら、君しかいないじゃないか」
その言葉にソフィアも諦めて、背筋を伸ばして……それでもまだ少し赤い頬は隠せずにいれば、美丈夫はその頭をそっと撫でる。
「いい子だ」
「お黙り」
「必ずどんなことがあっても君たちは助けるから。協力してほしい」
「…………仕方ありません。ですのでお約束したことだけお忘れなきよう」
美丈夫を真っ直ぐに見つめ返す目にはもう羞恥心はなく、商売人として弱みを見せぬ顔に見える。
「勿論さ」
そんな彼女の変わりように美丈夫は目を細めた。




