11.一生懸命
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「え!? 前にお話ししましたが孤児院長は良い人でしたよ!?」
「表向きはね」
ソフィア達が馬車の中で向かい合って座り、美丈夫から話された内容にパックが驚いて声を上げれば、美丈夫は少し困ったような笑みで返事をする。
「パックお黙りなさい。貴方のはした給料の行方なんて大したことないわ。それで、この前の硝子商との繋がりは?」
募金額と合わない報告。出入りのある貴族や、引き取られた子供の数の合わなさ。
そんな指折り伝えられた内容を聞いて、ソフィアは冷たい目で美丈夫を改めて見つめて告げる。
「なんで君は直ぐにそこに繋がるのか……怖いね」
「貴方があちらを調べつつ孤児院も張っていたなら、繋がりがあるって思うのは当たり前でしょう?」
「当たり前じゃないけどねぇ。でもまぁビンゴ。その通りさ」
美丈夫はソフィアを見て一度笑うと、すぐさま真剣な表情へと変わる。
「裏では子供達の人身売買。あんな宝石商なんて名ばかりさ」
「「……!!」」
ソフィアは顔を歪め、パックは顔を青くする。
「なん……で」
「パックくん。身寄りもない孤児は、育てる手間と金がかかる。そんな慈善事業をまともにやって何になる。それこそまともに育つ保証もないのに」
「それ……でもっ、僕らは精一杯にッ!」
「そうだね。でも精一杯に一生懸命に正しく生きている子は一部の子さ。君もわかるだろう?」
街角で捨てられ、スリをして生きてきたパックはその意味がわからないほど愚かではないと、ただ震える指を見つめる。
「……ふふっ、精一杯に一生懸命ですって? 精一杯生きたら偉いのかしら? 精一杯生きたら報われる? そんなの関係なく、幸せなんてものを拾えるのは一部の運の良い人間だけだわ。 日々辛い思い思いをしてる子はただ単純に未来を考えるより日々生きていることだけに精一杯なだけよ」
「そうだね」
美丈夫を少し睨むように告げるソフィアに、美丈夫は何故か嬉しそうに微笑みを返し、パックは少し泣きそうに膝の上で拳を握ったままソフィアを見つめる。
「だから精一杯生きてく子を悪く言わないでちょうだい。精一杯にしたとて、生きる術のない子もいるでしょ。精一杯、一生懸命に、正しく、なんてものを言えるのは、結果を残せた一部の輩が偉そうに使うだけでじゃない。世界の大半は精一杯やったとて……結果が残せない者ばかりよ」
「……そうかな」
「そうよ。それにどんな身分だって程々にやっても、運良く結果を出すやつもいるわ。貴方のいう正しくなんて、そんな人じゃなくてもね」
「はははっ! そうだね」
ソフィアがそこまで言えば美丈夫は口に手を当てて笑うと、ソフィアは不満げに腕を組む。
「うちのパックは過去がなんだろうと、運良く私に拾われてスタートにたったとこよ」
「そりゃぁいい。是非とも俺も拾ってほしいね」
「そうね。貴方は何してほしいの」
ソフィアがその目を細めて言うのを、美丈夫は少し驚いた顔で見た後に、
「君たち二人に頼みがあるんだ」
と、真剣な顔をして言えば、
「ウチの子のお金を取ったってのなら、なんだってやってやろうじゃないの」
ソフィアはそう言って、口元に手を当て冷ややかに笑った。




