10.誠心誠意
「ソフィアさんっ! もう僕の服はいいので、ソフィアさんのものを買いましょうよ」
あれから数日後。
曇り空から土砂降りの続いた後の晴れた日にソフィアは次から次へと買い物中。
パックが嘆く理由はその両手に持った荷物。
それは全てソフィアからパックのために買い与えらたもので、何度もういいと言っても子供服は可愛いのだからとソフィアは次から次に買っていく。
パック相手だからか男女の衣装を問わず買うために、パックの両手はもう落としそうなほどに紙袋を持たされている。
しかし警備についてきたものにも持たせるなとの命令でパックは必死で持ち続けていた。
「こんなにあってもボクが10人いても着きれないです」
「……それなら気に入らないものは売ったらいいわ」
「ソフィアさんが買ってくれたものを売ったり出来ません〜!」
「それともサイズアウトしたら、あなたが休みの日に行ってる修道院の子供達にでもあげたらいいわ」
その言葉にパックは目を見開けば、ソフィアは気に入らないと睨む。
「私が知らないとでも?」
「ソフィアさん……ボク……」
「自分と同じような子を見てられなかったのかしら」
「はい。ボクはソフィアさんに拾ってもらえたけど……ボクだけ幸せになるなんて悪くて」
パックは目を瞑って辛そうに告げるのを、ソフィアは呆れたように、
「って、誰に悪いっていうの?」
そう告げた。
「誰に……?」
パック落ちていた視線を上げ、ソフィアを見つめれば、ソフィアは胸に手を当てて堂々と告げる。
「貴方が私に拾われたのはそれは幸運よ! だって私だもの」
「はい……」
「なんでそんなやる気ない返事なのよ!」
「だって、ボク、ソフィアさんから財布盗もうとしただけですよ」
ソフィアは少し固まると、思い出したかのように手を打った。
「忘れてました?」
「だ、だって盗んだ子めちゃくちゃ可愛かったんだもの! め、メンクイって言わないでちょうだいね! し、仕方ないでしょ!? 商売でも目利きっていうのは、やはり最初は見た目が優先されて……!」
そこまで一気に話すと、ソフィアは結局自分が面食いなのだと我に帰り言葉を止めれば、パックが目を丸くして見てるのに気がついた。
「べ、別にいいでしょう。それで貴方が幸運拾えたって言うなら」
「吃ると相手に舐められますよ」
その言葉は出会った頃にパックに行った言葉だと気がついて、ソフィアは無言でその柔らかな頬を摘んだ。
「言うようになったわね」
「えへへっ」
「使用人が躾けられてる時に笑わないのよ」
「だってお出掛けの時はお友達みたいでいいって」
「言ってないわ!」
「それにソフィアさんが家族に接してるみたいに話してくれて嬉しくて」
そう言われて、ソフィアは自覚が出てきたのかどんどん頬が染まってゆく。
王子の婚約者だった時、一緒に居るならばいつでも凛としていなければと思っていた彼と別れて、気を抜き家族と新しい生活と切り替えて微笑みあっていたが、隣国に渡りながらパックを拾い、こんな年下の子と接するなら改めて凛として生きようと背筋を伸ばしていたのに、パックにしてやられたと、もう一度その少しふくよかになってきたパックの頬をソフィアは摘む。
「それならコソコソと修道院に行くなら行くと私にも言うべきだったし、あなたの少ない給料から恵むくらいなら、我が家からも支援すれば貢献としてこの国に認められるでしょ!」
「それって」
「まぁ……そういうことよ」
腰に手を当てた姿は『パックが黙っていたことが気に入らない』と告げていて、少し照れくさそうに視線を逸らせば、パックは嬉しそうに笑うのをソフィアは視界の隅で見ると、少し頬が緩んだ。
「で、話しは纏まった?」
「また出た」
「そんな化け物みたいに」
ソフィアが呆れ顔で見つめる先にはいつもの美丈夫。
どこから現れたとかではなく、近場のカフェでお茶をしていたようだったが、
「毎度盗み聞きとは悪い趣味ね」
「皮肉もストレートだね。でも今日は俺の方がここに先にいたからね。ソフィアがストーカーなんじゃない?」
そう言って近づきつつ、ウインクされたことにソフィアが怒りに眉尻を上げても美丈夫はやはり楽しそうに笑うので、ソフィアは更に気に食わないと背中を向けて歩き出す。
「で、今から孤児院に行くのかい?」
「あなたには関係ないわ」
「これが実は関係なくないんだなぁ〜」
「貴方に何の……つまり警備兵の仕事? 何? あの孤児院何か問題あるの?」
ソフィアの察しの良さに美丈夫は怪しげに微笑む。
「君の従者の寄付した金すら不明金として消えてると言ったら?」
「……仕方ないわね。聞かせなさい」
ソフィアはそう言って、屋敷の馬車に美丈夫を案内した。




