第7話 お手柔らかに、修行
あと2日休んで俺の体が動くようになってから、サーシャによる俺を冒険者として鍛える訓練が始まった。
弓矢に始まり投石から剣の使い方、獲物の解体の仕方、果ては魔法の使い方までまずは一通りやった。魔法については全く才能がないらしく、うんともすんとも言わない状況だった。
「才能がないわけじゃないと思うんだけどね。魔力もあるみたいだし。でもなんていうのかな、回路が体に張り巡ってないっていうか。見た感じリンくんの頭に魔力が溜まってるみたいなんだけど、そこからどこにも繋がってないんだよね。普通は心臓やお腹に魔力が溜まるんだけど、頭に溜まってる人は初めてみたよ。やっぱリンくんは面白いね」
とサーシャは言っていた。
「一応荒療治として私の魔力でむりやり覚醒させることもできるかもだけど、やってみる? 下手な人がやって一生魔法が使えなくなったとか、死んじゃったっていう話もないことがなくもないけど……まあ、大丈夫だよね! よし、やってみよっか!」
と続けるサーシャに俺は必死で固辞した。
さすがにそれは荒療治過ぎる。しかも俺の場合は魔力が頭にあるんだろ? 頭の穴に手でも突っ込んで魔力流すのか? 怖すぎる。普通に死んでしまう自信がある。
1ヶ月ほどして武器を一通り触ったあと、俺は杖術をメインに学び始めた。
サーシャは色んなものを俺に試させて、何が一番合うかを見極めていたようだ。結論としては頭から無限に生えてくるパイプを活用できる杖術と、弓術が良いということになった。
それにしてもサーシャはどんな武器の扱いにも長けていて驚かされる。冒険者ってみんなこんな感じなんだろうか。サーシャのようになれる気がしないのだが。
俺は対峙するサーシャを見る。
今は俺もサーシャもメイドイン俺パイプを使って組手中だ。
「違う! もっと手首を回転させて! 足が動いてないよ!」
そう言いながらサーシャは俺を叩きのめす。普通に痛い。サーシャがクソ美人じゃなければこんな痛いの我慢できなかったかもしれないが、クソ美人なので我慢できた。
組手は俺の膝が震え始めてもう立てなくなるまでやるのが毎日続いた。
その後2人で晩飯を狩って食べ、木の上でサーシャに抱き抱えられながら眠る日々を過ごす。宿屋?そんなものは最初の俺がボロボロだった時だけだ。サーシャは昔から森で暮らしているらしいし、冒険者はみんなそうだよと言ってる。ホンマか? エルフだからとかではないんか?まあいい。
いちいち日数を数えていなかったが、そんな生活が何ヶ月か続いた。
同じことの繰り返しで退屈だった前の世界も顔負けのルーチンワークであったが、それでも楽しかった。少しずつ自分が強くなっていることを実感しているからだろうか? サーシャが一緒にいるからか? 分からん。分からないが、俺は今充実している。こんな生活ならあと何億年続いてもいいと思える。そう思えるが、実際に何億年続くわけもなく、突然サーシャが言った。
「よし、じゃあ魔物と戦ってみよっか」