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第5話 よろしくね、師匠

 目が覚める。


「いたたっ」


 起きあがろうとしたが、痛みが走り上手く体を動かせなかった。なんだか最近死んだり意識を失うことばっかだなと思いつつなんとか辺りを見ると、どこかの家の中だった。


 病室か? 電化製品もなく、木でできた机やベットがあるだけの部屋だった。それっぽい治療器具もないので、病室というよりも誰かの家の寝室か宿屋かもしれない。


 窓の外は薄暗く、今は夜なようだ。

 下から飲み屋の喧騒が聞こえる。やはりここは宿屋なのかもしれない。それにしても、この部屋の中にあるものを見る限り、この世界の科学技術は前の世界ほど進んでいないのかもしれないな。


 というようなことぼんやりと考えていると、ふいにドアが開けられて長い金髪のクソ美人が入ってきた。とりあえず、胸がでかい。


「あ、よかった。目が覚めたのね」


 そう言いながらクソ美人は何かを呟き、部屋の中の蝋燭に火をつける。


 すげえ、魔法か?


「あなた、丸2日眠っていたわよ。骨も折れてたけど、重症だったところは治療院で治してもらっておいたから、大丈夫だとは思うけど。体調はどうかしら?」


「あ……ありがとうございます。あなたが……助けてくれたんですか?」


と俺は無意識に子供っぽい声のトーンで返す。


 人間とは不思議なもので、自分の姿が子供で、相手も俺を子供と思ってるなら、それっぽく振る舞ってしまうものなようだ。まあ、いきなり俺は30歳だと言っても話がややこしくなるだけだし良いだろう。


 そしてどうやら言葉は通じるようだ。なぜ異世界で日本語が通じるかは知らないが、まあ異世界だしそういうものなのだろう。都合がいいし気にしないでおこう。


「そうよ。あなた、なんであんなところに1人でいたの? 危ないでしょ。それにその頭の穴は大丈夫なの? 治療院の人も不思議がってたわよ。怪我かと思ったらそうでもないみたいだし。あ、そうそうあなたの名前は?」


 クソ美人は質問を捲し立てる。清楚っぽい落ち着いた見た目に似合わず、結構活発な性格であることが話し方から分かる。


「僕は……リンです」


 少し迷ったが、前の世界の本名を答えた。新しい世界だし心機一転、カッコいい名前でも名乗ろうかと思ったが、咄嗟に何も思いつかなかったのだ。


「そう、リンくんっていうのね。私はサーシャ。本名はもっと長くて、エルフの言葉で全ての母って意味なんだけど、人族には分かり難いし、そう名乗ってるわ」


 そう言って彼女はふふっと笑う。エルフなのか。確かに耳が長い。そして名前の通りその胸に飛び込みたい母性のようなものが彼女にはある。


「ねえ、それでどうしてあんなところにいたの? お姉さんに相談してごらん」


「そ、それが、僕にもよくわからなくて……。今までどこにいたのかも分からないし、気付いたら森の中にいて……」


「記憶がないの?」


「……うん」


 自分で言っておいて厳しい説明だなと思いつつ、実際ほぼそんな感じだから仕方がない。


 サーシャは顎に手を当ててうむむと唸り、そしてぽんっと手を叩いて言った。


「よし、私がリンくんが一人でも生きていけるように鍛えてあげよう! といっても私には冒険者としての生き方しか教えられないけど、いいかしら? まあ、いいわよね。よーし、ビシバシいくわよー! 私は厳しいから覚悟してね」


 ……どうやら俺の冒険者としての異世界生活が始まるようだ。

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