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第3話 こんにちは、ゴブリン

 目が覚めると俺は森の中にいた。


 木の種類なんて見ても分からんが、日本では一度も見たことない形の木が生い茂っている。大人が寝れそうなほど大きい葉が生えた木とか、木の幹から葉っぱまで全て紫色の木とか。確かにここは異世界なのかもしれない。


 立ち上がるとやけに視線が低い。

 ふと手を見ると、手のひらもまた小さい。もしかして俺は子供なのか?


 ちゃんと服は着ている。ハッと気付いてズボンの中を見ると、アレが生えていた。俺は男なようだ。毛はまだ生えていない。相当なガキに生まれ変わったな。まあ第二の人生としてはありかもしれない。


 何気なく自分の頭に手をやると、左こめかみの上に穴が空いていることに気づいた。あのパイプが突き刺さった場所だ。


「えっ、なにこれ。何で穴開いてんの? 脳みそとかどうなってんだ?」


 穴が空いていても痛みはなかったが、恐ろしくて穴の中に指を突っ込むことはできなかった。とにかく鏡があるところで確認してみよう。水辺でもいいかもしれない。


 さて、これからどうしようか。


 ここがどこかも分からないし、そもそもここがどんな世界なのかも分からない。異世界転生あるあるの剣と魔法のある世界なのか?モンスターとかもいるかもしれない。


「ははっ、ちょっと楽しくなってきた」


 今までの可もなく不可もない退屈な日常と比べるとありえない状況に、俺はワクワクし始めていた。この何が起きてもおかしくない、結果がどう転ぶか分からない感じ、久しく忘れていた感覚だ。もしかしたら生まれてから初めての経験かもしれない。


 とりあえず俺は街など人がいそうなところを探すために適当に歩き回ることにした。途中で念のため護身用に武器になるものを探し、手頃な大きさの木の棒と拳骨サイズの石を拾って持ち歩いていた。


 やらないといけないことは山積みだ。

 早く人里を見つけないといけないし、そのうち腹も空きだすだろう。頭の穴もこのままでいいのかよくわからん。そういえばあの胡散臭い神の言っていたチート能力とやらもよく分かっていない。今の俺は何ができるのだろうか?身体能力に特に変わったところはない。子供になっている分むしろ非力になってしまっているし、魔法が使えるようになっている気配もない。


———ガサッ


 闇雲に歩き回っていると、前方から草をかき分ける物音がした。


 動物か? 人か?


 俺は足を止め木の陰に潜み、じっと物音のした方向を見つめる。


 なんだろう、兎か?やばい魔物とかだったらどうしよう。今の俺に倒せるのか?

 俺は更なる物音を聞き逃さないように耳を立てる。自分の心臓の音がうるさい。


 いつでも投げられるように、石を持つ手に自然と力が込もった。


「ギギッ」


 草陰から顔を出したそいつは、緑の肌をした汚い子供のような魔物だった。


……これは、ゴブリンってやつか!


 ゴブリンは迷わずこっちに向かって歩いてきた。手には錆だらけのショートソードを持って、ぎひぎひと下卑た笑いを浮かべている。


 くそっ、バレてるっ!


 俺は木の影から飛び出し、渾身の力で石をぶん投げた。


 ゴブリンの頭を石が砕く……なんてことはなく、石はゴブリンの遥か右側に飛んでいった。ノーコン過ぎるだろ俺!


「ギヒ」


 ゴブリンが駆け出し、錆びたショートソードを振りかぶる。

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