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1β.自己紹介

とりあえずここまでです。

次は気が向いたら更新します。


 人には才能というものがそれぞれ備わっている。

 絵を書く才能、スポーツの才能、音楽の才能。それはそれぞれ差異があれど才能というのは誰かしら備わっている。

 よく『才能がない凡人』などと言うがそれは違う。ただその人は自分の才能に気づいていないだけだ。その環境が適していないだけだ。


 もちろん私にもそういった才能がある。

 容姿は端麗だし、勉強もできる。社交性だって備わっている。けれど私にとってそれは才能なんかではない。

 人にとっては十分才能と呼べる代物なのだが私にとってそれはタダの付随物だった。



 私の才能は――――――――科学では解明できない力を使えること。

 サイコキネシスはもちろんのこと読心、透視、人心掌握など生まれたときからほとんど何でもござれだった。

 最初こそ上手く力を扱えなかったが10年、15年と年月を重ねればそれも十二分に扱うこともできるようになった。

 そのための環境も備わっていたから。でも、これは両親はもちろん誰にも知られていない秘密。




 そんな私が幼稚園のころ、出会った人物によって全てが変わっていった。

 それが幼馴染――――武田 一(たけだ はじめ)との出会いだった。


 私がまだ能力としての分別がついていない幼稚園児で、公園で一人サイコキネシスの練習をしているときだった。

 遠くに置いた缶を持ってくれれば成功。けれどまだ能力が未熟だった私は缶一個動かすのに相当苦心していた。


 丸一日使ってもほんの少ししか動いてくれない夕方、彼は現れる。

 同じく幼稚園児で両親も見えない彼を見た時、私は目を疑った。


 呪いの塊――――

 人の嫌な感情や悪運に異常なほど好かれ、纏わりつかれる者。好かれるゆえに本人も事故等に遭いやすく、10も年齢を重ねる頃には何らかの理由で他界するらしい。


 当時は能力と一緒に知っていた知識のみで初めて見る人物に、練習もそこそこにチラチラと様子を伺っていたのを覚えている。

 虫や鳥に襲われたりコケたり滑ったり、目を離せば怒涛に襲ってくる不幸の数々に気づけば目を奪われていてしまっていた。

 だからだろう。私がそんな集中力を欠いてしまっていたから。気づけば缶に向けていたターゲットが逸れてしまい散歩をしていた犬のリードに向けられてしまっていた。


 私は当時加減も知らない幼稚園児。突然ターゲットが変わったことに驚いて犬のリードを捩じ切ってしまったのだ。飼い主から開放された犬はパニックを起こしてそのまま彼の横を通り過ぎ公園の外へ。

 きっと彼は当時から異常なまでのお人好しだったのだろう。人を助けるというものが行動原理として根付いていたのだろう。

 彼は通りすぎる犬を見逃さず公園を出てまで追っていく。そして、道路で近づいたときには車がもう――――






 ――――私が我に返ったときには叫び声が響き渡っていた。

 車は花壇に衝突して火の手が上がり、道路には血が広がっている。


 私のせいで。

 私はこれほどまで自分の力を恨んだ事は一度もなかった。自分のせいで人が。それも同年代の子を。

 悲しみに暮れると同時に無駄に頭のいい頭脳は一つの答えを導き出していた。


 ――――タイムリープすればいい。

 そう答えを出すも私にはそんな力など一切ない。未来も読めないしできることといえば制御できないサイキックだけ。

 でも、その答えが頭にこびり付いて離れようとしていない。


 私は決心をする。

 全ての、これからの力の全てを差し出してもタイムリープを生み出してみせると。

 けれど、いざやってみると、幾つか素養があったのか思ったよりすんなり力を手に入れる事ができた。念じるだけで取得できるとは…………けれど都合がいい。この力を使って私は過去へ飛ぶ。彼が現れ、リードをねじ切る前の世界へ。



 ―――――――――――――――――

 ―――――――――――

 ―――――――



 目を閉じて心の奥底から戻りたいと念じる。

 ただそれだけで戻ることができた。簡単なものだった。


 恐る恐る目を開けると彼は鳥に襲われているし散歩も問題なく行われていた。

 私はホッとする…………と、同時にあることに気がつく。


 ――――サイコキネシスが使えない。

 今まで制御はできなかったものの使えるという確信が自分の中ではあった。けれど今ではそれがない。

 目の前の缶を動かそうと手をかざしてみるもビクともしない。これがタイムリープを手に入れるための反動か…………けれどこれで目の前の命を救えたのだとしたら安いものだ。

 後々知ったことだが同時に読心の精度も落ちていたらしい。


 私はもうここに居る理由はないとその場を立ち上がる。

 そうして振り返ると、丁度こちらを見ている彼と目が合った。


「ねぇねぇ、何してるの~!?」


 彼は屈託のない笑みでこちらに問いかけてくる。


 私より数段弱いであろう彼の目に、真っ黒なのに輝くようなその瞳に目が奪われる。


 あぁ、これが救った命か――――。

 私は目の前で元気に動いている命の輝きを目にし、小さく笑みがこぼれ落ちた。












 それから彼の心に触れ、その呪いの密度を目の当たりにしてからは自分でも驚くほど行動が早かった。

 相手の引越し先に私の家も引っ越すよう仕組んだし、学校では彼の心に触れる者が他に表れないように友達も作れないようにした。…………ほら、その呪いが友達に降りかかるとも限らないから。

 あとは行き帰りも一緒に居たし彼が一人で居るときも少し離れた位置でずっと見守ったりしていた。一緒に寝ることも誘っているけどそれはダメだといつも拒否されるから毎日透視で見守っている。いつ呪いに襲われるかわからないから。


 ――――彼の呪いは高校に入る頃にはだいぶ薄くなった。

 きっと、不幸が降り注ぐと少しづつ消えていくのだろう。幼稚園の頃は姿が見えなくなってしまうほどだったが今となってはちゃんと見えるほどになっている。きっと20になる頃には完全に消えてしまうだろう。


 私はそれまで守ってみせる。

 この力を全て使い、彼が安心して毎日を過ごせるほどに。

 そして、全てが終わった暁には力のことも全部伝え、最後にはずっと一緒に…………グフフ……



 そんなことを考えながら彼と一緒に帰っていると、不意にトラックが赤信号なのに突っ込んできて彼の身体を跳ね飛ばす。

 もう何度も見た光景だが、毎日辛い……呪いが憎い……私がどれだけ夜思い出して泣いていると……


 そんな悲しみを抱えながら騒がしい現場の中心で何度も行った行動を行う。目をつむり、心から念じ、タイムリープする。

 あと何度彼を助ければ彼は救われるだろう。何度タイムリープをすれば心置きなく暮らすことができ、枕を涙で濡らさなくすむだろう。


 私は何度だって戻ってみせる。

 彼の呪いが消え去るまで。彼にタイムリープという後ろめたい隠しごとがなくなるまで――――。

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