第3話 終わりに向けて(3)
【中立都市イルティナ】
中央大陸ちょうど真ん中ぐらいに存在する中立の都市国家であり議会制によって都市運営がされ、王がいない国である。立地条件的に多くの国々と隣接することから流通が盛んで商業が特に発展している。また、異邦人が多く滞在しており、中央大陸を主に活動しているギルドの拠点が数多くあるのも特徴の一つである。
「無事に到着っと!」
三人は、都市間転移で無事【中立都市イルティナ】へ到着し、そのまま地下遺跡へ向かうため正門に向けて歩きだした。
スズカが早足に道を進んでいき、その後ろ姿を追いながらアセル、リーンが続く。
歩きながらアセルがリーンに小声で話掛ける。
「リーン、ちょっといいか?」
「うん?アセルちゃんどうしたでゴザル?」
アセルのいつもと違う雰囲気に、少し怪訝そうな顔をしながらリーンは返答する。
「実はスズカの事で話があってな。
遺跡に行く前に一応リーンにも話しておこうと思って」
「スズカちゃんの事でゴザルかぁ~。
アセルちゃんのその顔を見るに何か厄介事なんだろうけど…」
アセルからスズカの話だと聞き、リーンは気を引き締める。
大抵この手の話を聞く時は騒動に巻き込まれるということをリーンは経験から知っている。
そして、その騒動の中心にいるのが《茨ノ園》特にスズカだという事を…
「ふむ。実は…」
アセルは、首を縦に振り肯定を示し、リーンが来る前の状況を説明する。
「…と言う感じだな」
「ふむふむ…確かに何か、そう何か騒動が起きそうな気が確かにするでゴザルな…」
アセルからの出来事の概略を聞き、リーンの表情が少し曇る。
「だからスズカが無茶をしないように一応リーンにも気を配っておいてほしってわけ」
「了解でゴザル。
拙者のほうでも気お付けておくでゴザルから、アセルちゃんも少し力を抜くでゴザルよ~」
リーンは、アセルからの提案を承諾し、少し肩に力が入り過ぎているように見えたアセルにさりげなく力を抜くように促す。
「ありがとう」
アセルもリーンの気遣いを感じ礼を言う。
アセルは、仲間を大切に思っており、特に目を離すといつも無茶をして騒動を引き起こすスズカをいつも心配している。
ただ、本人も無類の戦闘好きで嬉々とし戦場に飛び込んでいくので、仲間の心配と闘争欲求の天秤はどちらに傾くかはその時の情勢によるので非常に不安定である。
その尻拭いをいつも最後にさせられているのかリーンである。別に嫌という訳じゃないが好きという訳でもないので出来れば騒動を引き起こさないで欲しいというのが本音なのだが。
(僕も何度か二人に注意したことあるけどスズカちゃんは無自覚天然全開で「えっ?」みたいな顔するし、アセルちゃんは自覚あるけどあえてそれを楽しんでるみたいな所あるからなぁ~)
アセルとの会話の後そんな事を考えながら歩いているとスズカが既に正門についており大きく手を振っている。
二人が正門に到着すると…
「二人共遅いよ~!さぁ早く行こ!」
スズカが不満気な表情をしつつ催促してくる。
二人はスズカに謝りつつ、三人で正門出て目的地の遺跡に向かい移動を開始する。
都市からある程度離れた場所にある街道脇の森に入る。
「じゃあそろそろいいかな?」
「周囲に人・魔物の気配はないでゴザル」
スズカが確認すると、リーンが周辺状況に問題なしと答える。
「じゃあいくよ!
幻獣召喚・始まり一角獣・名前」
スズカが呪文を唱えると幾何学的な魔方陣が目の前に発生し、魔方陣が光輝く。
そして、光が収まると魔方陣の中から一匹の壮大な一角獣が姿を見せる。体長は、4メートルをゆうに越え5メートル近くあり、その毛並みはシルクのようにきめ細かく柔らかい。一角獣の代名詞とされる一角は、あらゆる物を穿つことができるであろう鋭さを持つ。名は《ブラン》スズカが使役する召喚獣の一体である。
「ブルルル」
ブランは鳴き声を上げ、スズカのほうに駆け寄り顔を擦り付け甘える。スズカも甘えてくるブランを撫でながら好きにさせる。
ーー5分後
「さて、そろそろブランも満足したかな?」
「ブルルッ」
スズカがブランに尋ねるねるとブランはまだ物足りなさそうな仕草をするが自分の喚ばれた役割を考え大丈夫と鳴く。
「ブランまた後で遊んであげるからね!
じゃあ、アセルとリーンもブランに乗っちゃって!」
ブランの機嫌をとりつつまずスズカがブランに股がり、アセルとリーンにも促す。スズカ、リーン、アセルの順番でブランに乗る。
「遺跡に向けて出発!」
「この辺は、まだ大丈夫だけど遺跡に近付くにつれ他の異邦人の遭遇率が高くなるだろうから気お付けて行くでゴザル!」
スズカの掛け声でブランが走りだし、リーンが注意を促す。
ブランは、街道を行かず一直線に遺跡に向かってまるで嵐そのものの如く疾走する。
「ギャッ!?」」
「ガアァァァ!?」
「ギュゥ…」
たまに魔物が現れ悲鳴が聴こえる。ブランは、進行方向に魔物が現れる度に角で貫き、前足で踏み潰し絶命させて行く。
疾走状態の始まり一角獣を正面から止めるのは、例えハイレベルな異邦人でも難しい。そこにスズカの召喚士としての常時発動技能の召喚獣強化等が入り通常より遥かに強力な存在になっている為、普通の魔物程度が鎧袖一触とされてしまうのは当たり前なのである。
魔物を蹂躙しながら森を抜け草原を駆ける。
遺跡との距離がドンドン近付いてくる。
「そろそろ遺跡たけど、魔物はそれなりに現れるけど異邦人は全然遭遇しないね」
「確かにこれはちょっと予想外でゴザルな」
スズカが地図を見ながら、遺跡がすぐ近くにあることを示すと共に異邦人と全く遭遇しないことに疑問を口にし、リーンもそれに同意する。
「私達が来る前にちょうど潰し合いでもしたか?もしそうなら少し残念だけど」
アセルは、闘えなくて残念と口では言うが本当にそう思ってる訳ではなさそうである。今は自分の闘いよりパーティとしての活動のほうを重視している為だろう。
「でも他の異邦人と遭遇しないならしないでいいじゃない。会ったら会ったで色々と面倒な事になるだろしね」
スズカ達は、悪役RPをしている関係で評判は決して良くない。確実に戦闘になるので、今の状況ではなるべく本気の戦闘は避けたかったのが本音だ。
「よし。遺跡付近に到着!リーン、周辺の状況はどう?」
「周囲に敵影無し。オールグリーンでゴザル」
遺跡付近に到着し、周りに敵がいない事を確認する。
「ありがと!よしじゃあ入口の発見解除はリーンが頼りだからよろしく!私とアセルとブランは周囲の警戒ね!」
「「「了解!(ブルッ)」」」
スズカが指示を出し各々の役割を果たすために動き出す。
そして、程なくしてリーンが遺跡の隠された入口を発見し、結界の解除に成功すると地下へと続く大階段が姿を表したのだった。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
遅くなってすいません!
次はいよいよ遺跡に突入です!