第2話 終わりに向けて(2)
転移したきた少女はキョロキョロと周りを見渡し、こちらに気がつき声をかけてるくる。
「スズカちゃん、帰還したでゴザルよ。アセルちゃんもこんばんはでゴザルよ~」
気安い感じで挨拶してきたのは《茨ノ園》斥候兼遊撃を担当するリーン。水色の髪をボブカットにしている可愛らしい感じの少女といった様子だ。
「リーンおかえりなさい」
「こんばんは。情報屋ギルドに遺跡の情報集めに行ってきたみたいだけど収穫はあった?」
アセルの質問にリーンは残念そうな顔し首を横に振る。
「有益と呼べるような情報はなかったでゴザルよ~。やっぱり昨日掲示板に出たばっかりの情報ということもあって情報屋ギルドの方でもまだ詳細なことは全然みたいで場所しかわからないそうでゴザル」
「場所だけって…それだったら掲示板の情報と対してかわらないじゃない。でもそういうことならやっぱり遺跡に直接行ってみないと駄目みたいね!」
「ふむ。リーダーがもう行く気マンマンだから直接乗り込む以外道はないか」
リーンからの報告を聞いたスズカの様子にアセルも仕方ないといった様子で苦笑しつつ同意する。
遺跡の情報が出たのは昨日の正午頃、《RGO》内の掲示板に今まで確認されていなかった遺跡の情報が匿名で書き込まれ、今でも掲示板はその話題で持ちきりだ。
場所は、地図上から見て中央大陸のちょうど真ん中にあるらしい。中央大陸の真ん中のということもあり様々な国のちょうど緩衝地帯となっており危険な場所でもある。
「行くのは拙者も賛成でゴザルが…上位・下位問わず様々なギルドが遺跡探索に乗り出しているようなので注意が必要でゴザルな」
「まぁそれはそうでしょうね。1ヶ月前にあったアプデの追加要素の調査なんかも終わって他の異邦人も手持ち無沙汰だろうし」
このアップデートは、約1ヶ月前に行われ大きめの島の追加やスキル・不具合の修正等が主な内容である。アップデートの日は新要素の追加等があるためにいつも以上に異邦人がログインしてくるのでしばらくは一種のお祭り騒ぎとなる。
「あっ…それと情報屋ギルドのマサさんから伝言があるのを忘れてたゴザル」
やべ忘れてたでゴザルといいながら伝言メッセージが入った映像キューブを取り出し起動するとキューブが割れ執事服を着た背筋がピンと伸びた壮年の男の映像が投影される。
『こんばんは。マサでござきます。《茨ノ園》の皆さんご無沙汰しております。
まずはリーンさんに謝罪を。実は…お渡しした情報は全てではありません。理由については、今回多くのギルドが遺跡探索に乗り出しておりますので我がギルドのほうにも利用者が多く念のために盗聴対策としてこのような手段を取らさして頂きました。
そして、残りの情報ですが遺跡は地下にあります。地下の入口の結界は巧妙に隠されているようですがリーンさんがいれば問題ないと思います。次に敵対モンスターの種別ですがわかっているのかなり高レベルな魔導機械型モンスターが中心となっているようので遭遇した際はお気おつください。
追加情報は以上となります。攻略した際には我がギルドのほうに情報を売って頂ければ嬉しいです。ではまたのお越しをお待ちしております。』
マサは最後に深々と一礼し投影された映像が消えキューブは砕け散った。
三人はそれぞれ情報を確認する。
「それにしてもマサおじさんも私達なんかと取引なんかして大丈夫なのかしら?」
「それについては大丈夫だと思うでゴザルよ~」
スズカが心配そうな表情しつつ呟くと、何の問題もないとばかりにリーンが答える。
「情報屋ギルドとて清廉潔白なギルドという訳じゃないし、当然利用する客もそれくらいわかっている。
お互いが必要な時に利用し合う〈Give & Take〉の関係が奴らとの上手な付き合い方だと思うぞ」
「うんうん。というかこんな事で文句つけてくるようなのは、私達とよく敵対する《聖十字軍》、《勇気の証》、《円卓の騎士団》とかの正義の味方 RPしてる奴らだから気にしてもしょうがないでゴザルよ」
アセルが説明しリーンが捕捉する。
「それもそうだよね。まぁ仮に華麗なる悪役RPを目指してる私達の知り合いにちょっかい出すような人達がいたら報復しちゃえばいいだけ・だ・し・ね!バーン☆」
アセル達の説明に納得しつつ、スズカは悪役の持論を言いながら右手を銃の形にし指先に魔力を集め圧縮する。
ちょうどいい大きさと場所にあった岩に向かって構えたと同時に指先に集まっていた圧縮された魔力が可愛らしい発射音を合図に解き放たれる。
ーードォン!!
凄まじくも短い破壊音が周りに響き渡る。
岩は内部から崩壊した。
「ふむ。これは次元弾ではなくただの魔力弾だ。なんて実戦で言ってみたいよね~。今使ったのは次元弾だけど」
某大魔王の真似ができ満足したのか満面の笑みでスズカは笑っていた。
「「はぁ」」
アセルとリーンはお互いに顔を見合せ、ため息をはく。
「まぁスズカちゃんが楽しそうだから別にいいでゴザルよ」
「そうだな。ただ、無駄に大きい音を出したの感心しないがな」
二人はお互いに納得しつつスズカに視線を向け、スズカもその視線に気付き三人の視線は交差する。
「じゃあ、気合いも入った事だし地下遺跡を蹂躙しにいきますか!」
「油断大敵でゴザルよ~」
「とりあえず遺跡がある一番近くの街【イルティナ】まで行くぞ」
スズカは頷き、ウィンドウを出現させ二人にパーティを申請を送る。
無事に許可されたのを確認し、異邦人が使える1度行ったことがある都市に転移できる機能を使う。
「いざイルティナへ!」
スズカの掛け声と共に三人はイルティナへ転移していった。
いよいよ遺跡に出発です!
次話も早く投稿できるように頑張ります!