おかしい、が広がる
「そうよなぁ」とボクは納得する。
納得して、質問を進めていく。
「学校以外の時間って、何かあったかなぁ」
「え?学校以外?って、知るかッ。
っていうか、最近、オレらあんまり遊んでへんやんけ」
と陣内はツッコんで笑う。
ボクも「そうやったなぁ」って笑う。
ボクらは笑って、ほぼほぼ同時に笑いが止まる。
ボクはスーッと頭から血の気が引くのを感じて、たぶん、陣内もそうだろうことを通話の向こうの気配から感じる。
「なあ、陣内」
額にうっすらと汗が浮かんでくるのと体が冷えていくのと2つの矛盾した感覚の中で、ボクは質問を放った。
「オレらって、最近、いつ遊んだっけ?」
「あ?お、おお……、いつや?」陣内の動揺が伝わる。
「あれ?
オレ、最近、お前と遊んだ記憶がないぞ」
ボクはスマホを手にうなずく。
「オレも陣内と遊んだ記憶がない」
「あれ?おかしーなぁ。
お前と何かケンカとかして揉めたっけ?」
「いや、そーゆー記憶は無いわ」
「おお、オレもや。
あれ?おかしーぞお?
岩ちゃんとか赤城とかと遊んだ記憶があるのに、平良とどっか出掛けた記憶がない」
「うん」
ボクは返事をして、たっぷりと間を空けてから言葉を続けた。
少し芝居がかった言い方をしたかも知れない。
10代だもの。
そーゆーことしちゃうことあるよね?
「それなんよ……陣内。
最近のオレの時間の中に、ハッキリ思い出されへん空白みたいなものがあるんや」
陣内の返事も、やや間が空いてからのものだった。
ただ、こっちはやや焦った風で。
「これか…………。
平良、今、家やろ?
外に出れるか?」
「うん、大丈夫」
「たぶんなあ、オレとお前で感じてることが違うハズや。
とりあえず今からお前の所に行くわ。
40分ぐらいかかると思っといてくれ。
お前ん家のすぐそばに、なんかブタの公園あったやろ?」
「ああ、ブーちゃん公園な」
もちろん本物のブタじゃない。
コンクリートで作られたオブジェだ。
「名前はしらんけどな。
そこで待っといてくれ。
オレも考えを整理しながら原チャで行くから」
「ああ……ありがとう陣内。
心の友と呼ばしてもらってええか?」
「やかましいわ、誰がジャイアンやねん。
とにかく待っとけ」
陣内は電話を切った。