表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂の棲拠  作者: 神月雪兎
8/24

第八話 二つの願い。

蓮はナツキが退室したのを確認してから、魂の入ったホロを一瞥した。

「…これは〈戻し〉だな」


死長の仕事は主に2つ。どの死神がどの魂を連れてくるか采配し任命することと、回収した魂が死神になれる適性があるか判断することだ。


もともと死神になれる条件はかなり厳しい。

一つは享年十九以下。

一つは生前に執着がないこと。

一つは本人の就労希望があるかどうか。これにより乳幼児や病などで意志のない者、或いは意志表示出来ない者の死神任命は不可能となる。


上記の条件を全て満たす者は実際の死者数に対しかなり少なく、死神になれる者は限られている。


ミサは享年二十三だった。それは毎回天界から上がってくる回収リストを見た時から知っていた。


だから蓮はすぐにホロを、回転椅子の横にあるダストケースのような物に入れた。

このケースが長しか知らない、天界に通じる空間となっている。これを使って冥界に残らない――死神にならない――魂を天界に送っているのだ。


言ってみれば魂をゴミ箱に捨てるような行為である意味酷い扱いであるが、逆に言えば他の死神に知られる確率も低く、机に座りながら魂の処理を出来るので蓮はとても画期的だと思っている。


大体、死んで役にも立たない魂なんかゴミ箱行きで充分だ。

全く、次から次へと使えないヤツばかり。


ふぅ、と溜め息をつき、蓮は椅子の背もたれに体を預け、目を閉じた。


そうして毎度毎度同じことを考える。


いかに死神を増やしていけばいいか、を。


これでも歴代や他区域からみればかなりいる方ではある。が、決して人員が足りているわけではない。


死神を増やす為には手段を選ばないつもりだが、かといって自分の信頼を失墜させては、そもそもついてくる者がいなくなるだろう。


今まではギリギリの線で駆け引きをし、出来るだけ死神に引き抜いてきたが、いいかげんに限界だ。


(あぁ、もうヤダ。大体ハナから無理があるんだよ。死神の資格あるヤツが死ななさすぎるし。だからってもっと子ども死んでくんないかなーなんてのは本末転倒だし)


蓮は頭の中でだけやたら子どもくさくなるのが特徴だった。そしてそれが彼のストレス発散法だった。


(天界のヤツらも融通きかなさすぎだっての。なんなのこの制度。世間じゃ俺らが悪者だけど、普通に考えたらあっちのが悪魔的だろー。世界の破滅でも企んでんのか)


自分がちまちま駆け引きをして死神を増やしていても、根本的な問題が解決しない限り焼け石に水だ。


「…………………」


蓮はしばらく黙考していたが、今度は口にして言った。


「………そうだな。多少面倒ではあるが、俺が長で在り続けることの出来る方法が一つある」


恐ろしく冷たい茶色の目で、虚ろに空を見つめた。


「それで俺の願いが二つ叶うわけだ」

低く呟いた後、今さっき考えていたことをすっかり忘れたかのように、いつものごとく何食わぬ顔で仕事を再開した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ