表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂の棲拠  作者: 神月雪兎
20/24

第二十話 とある少女のお話(3)

「……………諒祐くん………」

 瑠璃は、自分を呼び止めた男の顔を見上げた。

 彼は東雲と仲の良かったクラスメートで、瑠璃と同じ生徒会メンバーの後輩でもあった。


 突然、息せききって、私を追いかけてくるなんて。一体どうしたのか。


 怪訝な顔で見つめると、


「しっかり、してください……!!」

 と怒っているような、泣きたいような表情でキッとこちらを見据えてきた。

(え?しっかり……??しっかりってどういう……??)


 ………私が、帰りたいと思っていた事を見抜かれたのか?どうしたらいいのかわからないこの気持ちを、早く捨て去れとかそういう……??


「…………無理、だよ………。だって、私の、せい……。私のせいで、東雲くんが……!!」


 やばい、泣きそうだ。脚が震える。もう、立っているのだって、やっとな精神状態なのに。そんなこと、言うから。

「………………っっ」


 廊下にしゃがみこんで、うつむく。顔を上げたら涙が溢れてしまうから。これ以上、何も言わないで欲しかった。

 しかし彼は言った。


「………違いますよ、瑠璃さんのせいなんかじゃない。本当に、悪いのは………、悪いのは俺なんです」

「…………え?なんで……?諒祐くんは、関係ない……」

「………関係、あります。だから……俺は、瑠璃さんは、瑠璃さんだけは、守らなきゃいけないんです……!!このままじゃ、瑠璃さんまで消えてしまう………!!」

「…………?何……、何を言って」

「お願いだから、しっかりしてください………!!そうじゃなきゃ、瑠璃さんまで引きずり込まれてしまう!!」


 苦しそうに言葉を紡ぐ彼に、それ以上何も聞けなかった。ただ、彼は何か後悔しているようだった。私と同じように、東雲くんが亡くなった事への責任を感じているような。


「…………なんか、よくわかんないけど、わかった」

ぐしぐしと潤んだ目を擦り、立ち上がる。ーーそうだ。悲しいのは、自分だけじゃない。

「…………………。ホントですか?」

 諒祐くんが疑わしげにこちらを見る。

「うん、ごめん、そんなに心配かけてるなんて思わなかった。もう大丈夫。しっかりするから」

そう言って、少しだけ微笑んでみせる。

「昼休み終わっちゃうから、またね」

「………また、`ちゃんと´会ってください。約束ですよ」

諒祐くんの言い回しが気になったけれど、その時は深く考えていなかった。

彼に会うのが、これが最期だってことを。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ