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36話 シーゲン子爵の奮戦と怪しいおっさん

 シーゲン子爵が闘技場で位置についた瞬間、会場で大歓声が巻き起こる。


 僕らの周りの貴族たちも一斉に立ち上がって、応援を始めた。周辺のボルテージが一気に上がって、雰囲気に置いて行かれてしまう。


 ワンテンポ遅れて立ち上がるも、大人より圧倒的に背の低い僕には、闘技場の様子がまったく見えない。


 必死にポジションを調整して、大人の身体の隙間から何とか視界を確保した時点で、立っている選手は激減していた。シーゲン子爵の武器は棍で、槍のような構えから、突進するかのような突きで、他の選手を次々に沈めている。


 筋肉ムキムキ状態ではなく、七福神の布袋さんのような状態のままだ。外見と身軽さがまったくマッチせず、強烈な違和感に襲われる。


「イント君、見たいの?抱っこしてあげようか?」


 隣のマイナ先生がいらんことを言ってくる。一瞬抱っこされている自分を想像して、にやけそうになった。


「あ、ニヤけたね。」


 抑えきれてなかったらしい。その向こうのフォートラン伯爵は、意外にも哀れむようにこちらを見ている。怒らないのはありがたいけど、何で憐まれているんだろうか?


「もー、子ども扱いは勘弁してよ。」


 そう返すも、マイナ先生は楽しそうにしていた。よくわからないなぁ。


 闘技場に目を向けると、隙間からシーゲン子爵対その他全員という構図が出来上がっているのが見えた。その他全員側は後衛と前衛に別れ、後衛の神術士3人が一斉に炎の玉を放って攻撃している。


 あれ、危なくないか?マイナ先生が魔狼を焼いた神術とそっくりだ。


 神術は見事シーゲン子爵に命中し、火柱が上がった。


「危なっ!」


 魔狼みたいに黒焦げになるシーゲン子爵を想像し、思わず目を逸らす。


「大丈夫だよ。シーゲン様は仙術士で、神術は効きにくいから。」


 マイナ先生が解説してくれるが、以前義母さんはそんなシーゲン子爵を神術で庭まで吹っ飛ばしていたような気がするので、安心できない。


 そんな心配をよそに、シーゲン子爵は平然と炎の中から飛び出すと、前衛に攻撃を仕掛ける。何人かは慌てて躱したが、また数人が沈む。


 どう見ても一方的と言わざるを得ない。


「シーゲン様って、元将軍なんだよね?将軍って、軍団の指揮をとる人ってことだよね?どう見ても前線に出てそうなんだけど、どうやって指揮してたんだろう?」


 あまりの強さに、マイナ先生に尋ねてみる。


「うーん。それはわからないかなぁ。でも、聞く話じゃ、戦いの際は必ず先陣を切っていたらしいよ。」


 マイナ先生でも知らないことってあるんだな。


「シーゲンには、当時優秀な副官が付いていてな。軍の指揮は彼女に任せていたらしい。」


 隣の渋いおっさんが教えてくれる。シーゲン子爵を呼び捨てにするということはそれよりも偉い人ということか。


「なるほど。将軍の肩書があれば、相手はシーゲン様を無視できないというわけですね。」


 マイナ先生がうなずきながら相槌を打つ。確かに、相手は将軍を打ち取れば勝てると考えるだろうし、無視はできないだろう。でも、シーゲン子爵は打ち取れない。神術も効かないし、本人もものすごく強いから。


「あれ?でも仙術士に神術は効きにくくて、肉弾戦でもあれだけ強いとなると、仙術士って無敵なんじゃないの?」


 神術士は霊力の放出が得意なので、離れたところから、広範囲の攻撃が可能だ。一方、仙術士は霊力を貯めこむことが得意で、それを使って自身を強化できるので、神術が効きにくく身体能力がやたら高くなる。


 ということは、仙術士だけで部隊を作れば無敵ということになる。2種類しかないジャンケンみたいなものだ。


「いや、そうはならない。高位の護法神術には仙術を無効化するものがあるし、金属の武器は霊力を散らす効果があるから、大勢でかかれば普通の仙術士は倒せる。そもそも、神術がまったく効かないわけではないしな。」


 渋いおっさんは親切に解説してくれる。なるほど。仙術士にも弱点はあるのか。集団戦は苦手なようだ。


 目の前では前衛を全滅させたシーゲン子爵が、後衛の神術士を叩き伏せていた。疑いの目を渋いおっさんに向けると、おっさんは苦笑いして肩をすくめて付け足す。


「あれは王国の最高戦力の一角だから、例外だ。」


 そして、予選第2ブロックの試合が終わった。シーゲン子爵は棍を振り上げて観客からの歓声に応え、陛下の特別観覧席と僕たちがいる方に向けて一礼して退場していく。


「確かに圧倒的でしたね。同じ人間とは思えない。」


 ふと気になってユニィの方を見ると、不機嫌そうな表情で、許嫁と話をしている。こちらの視線に気が付くと、一転して笑顔になって手を振ってきたので、ガッツポーズを返しておく。


 闘技場には、倒された選手たちが倒れたままになっており、先ほど同様、担架を持った係員と、治療班が闘技場の脇から出てくる。今度はストリナも出てきた。


「あ、リナちゃんがでてきたよ。」


 リナは緊張した様子で、護符型のコンパイラを負傷者に向け、空中に聖紋を展開している。闘技場のあちこちで神術士たちが唱えるヒールの光がきらめき、気を失ったままの選手たちが担架で運び出されていく。


 治療班の中で一人だけ幼女なので、ストリナはめちゃくちゃ目立っていた。


「ホントだ。目立ってるね。なんか緊張しているみたいだ。」


 隣のおっさんも、興味深そうにストリナを見ている。


「あれがコンストラクタ家の娘か。あの歳ですでに『殲滅』と同じように聖紋の空中展開が可能とは、末恐ろしいな。」


 あれは義母さんのコンパイラのおかげで、ストリナが特別なわけではない。けれど、それは解説しない方が良いのだろう。


「それはそうと、さっきの話だが———」


 渋いおっさんが、話を蒸し返してくる。


「他にも塩問題を解決する提案があったそうだな。それも聞かせてくれ。」


 何でそれを知っているのか?抗議の意味を込めて、フォートラン伯爵を睨むと、フォートラン伯爵に不愉快そうに鼻で笑われた。


「なんや小僧。不満そうな顔やな。言いたいことでもあるんか?」


「どうして、その話をこちらの方が知っておられるのですか?その説明ならアスキーさんがすれば良いのではないですか?」


 伯爵は、ますます不愉快そうな顔をする。


「あのなぁ。小僧もヴォイドも、何考えとるんか知らんけどな。お前らの家は、脇が甘すぎるせいで風前の灯や。罠にはめられて戦犯にされかけたのかてそうやし、今回の件もきちんと情報収集しとる奴ならウチじゃなくても、すぐにおかしいって気づくわ。前も言ったけど、何で誤魔化せる思てんねん?」


 伯爵はイライラを隠そうともしない。そりゃ、こんな権謀術数が当たり前の世界に生きてないですからね。前世だろうと今世だろうと。


「ウチは武門ですから、出しゃばるのはダメかと。」


「武門とか関係ないわ。ちゅうか、それは嫌味なんか!そうなんやな!?」


 フォートラン伯爵が地団駄を踏む。


「まぁ待て。コモン。私にも話させろ。」


 渋いおっさんが、話に割り込んでくる。フォートラン伯爵は不満げに、おっさんに主導権を渡した。


「君たちが何に警戒しているかはわからないけど、知識に対する功績をすべてフォートラン伯爵家に委ねたとしても、君たちが深く関わっていることはもう隠しようがない。君たちは諜報の専門家ではないから気づかないかもしれないけど、情報に対して無防備すぎるんだ。」


 確かにフォートラン伯爵にはすぐバレた。よく考えれば、父上にも二日目でバレた。僕は隠し事に向いていないのかもしれない。


「先ほどの話から考えて、我々は君に由来する知識を無視することはできないし、例え公表しないとしても、守る手段は考えないといけない。コンストラクタ家が武力以外の力を持つことで、警戒する者は確実に出るからね。」


 だから、喋ったと。それはどうなんだろう?


「勘違いしなや。ワシは秘密にするなんて約束はしとらんで。」


 こちらの視線に気づいたのか、伯爵は悪びれもせず言ってくる。確かにそうなんだろうけど、もうちょっと気を使ってくれるものだと思ってた。


「心配せずとも良いよ。悪いようにはしないから。安心して話を聞かせて欲しい。」


 渋いおっさんが、にっこり笑いかけてくる。


 どうしたら良いのか、助けを求めるようにマイナ先生を見ると、なぜだか顔色が真っ青になっていた。



いつも思うのですが、この作品を見つけた人ってすごいですよね。


僕のスマホのアプリに登録されている作品数は約140、iPadのアプリに登録されているのが30、機種更新時に完結してたために移行しなかった作品が30ぐらいあるので、計200作ぐらいは読んでいるのですが、全部本家のランキングか、ニコニコ漫画で面白かった作品を検索して探しだしたものです。


それに対し、この作品は本家ランキングには載れていないにも関わらず、平均すると1,000以上のアクセスが毎日あります。僕が読者なら確実に見つけられていないであろう作品を見つけ出す読者の皆様。本当に感謝しかありません。


そして、この作品の小説情報の下あたりに表示される、僕の作品をブックマークしている人が同時にブックマークしている作品を紹介する欄が無茶苦茶気になっています。ここにはきっと、面白い作品がいっぱい眠っているんでしょうね・・・・

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