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25話 飛躍と暗躍

 話し合いの結果、改めてマイナ先生と僕の婚約は両家に認められた。


 てっきり父上の第二夫人になると思っていたが、まさか僕のほうだとは思っていなかった。思わず顔がにやけてしまう。


 前世でも彼女がいたことはなかったので、初めてのお付き合いということになるが、不安よりも浮かれている感じの方が強く、反射的に決めてしまったが、後悔はない。


 残る関門はシーゲン子爵とフォートラン伯爵だが、すでに跡継ぎのいる当主の第二夫人よりも、跡継ぎの第一夫人の方が条件としては良いらしい。マイナ先生の両親にはむしろ喜ばれたようなので、残る関門も楽に突破できそうだ。


 おかげで父上は盛大に落ち込んでしまった。


 僕はシーゲン子爵の館まで、マイナ先生の実家の馬車に同乗させてもらえることになったため、別行動しようとしたのだが、その際も歯ぎしりせんばかりの表情と嫉妬に満ちた目で睨まれて、ちょっと焦った。


 結局、爆笑を必死でこらえている様子の義母さんに、馬車まで連行されていたが。


「さて、イント君。改めての確認だが———」


 場所の中でマイナ先生の隣に座ったところで、アスキーさんが話しかけてきた。


「君が発案した『筆算』だが、マイナが論文を発表すれば、マイナの功績、ひいてはマイナを育てたフォートラン家の功績になる。本当にそれで構わないかね?連名ということにすれば、君の功績にもなるが。」


 当初父上は連名にするつもりだったみたいだが、僕が断った。レイス憑きと思われかねないし、何より面倒だからだ。それに、最近教会を敵に回す可能性についても知ったが、もし暗殺者にでも狙われれば、一瞬で殺される自信がある。


「それは父が説明した通りです。ウチは新興の武門ですし、その功績をうまく生かせないでしょう。父上の要望は領地管理を任せられるような文官がもっと欲しいといったところなので、それさえ叶えば問題ありません。」


 アスキーさんは難しい顔で頷いた。


「優秀な文官の養成か。確かに必要だが、現状では教師の数も足りていないし、『筆算』が普及したとしても、多少増やせる程度で、読み書き計算ができる人材が、田舎にまで行き届くのは困難かもしれない。」


 そこで、ターナさんが乗り出してくる。


「それなら、さっき言ってた学校をこちらの世界でも作ってみたらどうかしら。教師が足りないのは、貴族の子弟1~3人程度を相手に1人の教師が出向いて授業しているからなのですから、1人の教師が30人を集めて一緒に授業をすれば、一気に10倍以上の人数を養成できますわ。」


「ふむ。『筆算』の論文を発表すれば、我々の発言力は大幅に強化されそうだし、検討してみても良いかもしれないな。これほどの宝を見つけ出してくるとは、やはりマイナを誉めねばならないな。」


 マイナ先生は嬉しそうにひっついてくる。いい匂いがして、顔が熱くなる。


「しかし、ヴォイド殿も無欲な方よな。塩の件も、自分の手柄とはせぬつもりらしい。」


「そうですわね。シーゲン子爵に報告を上げれば、その次はシーゲン子爵の寄親である義兄上ですわね。」


 ターナさんの言葉に、『寄親』という聞き慣れない言葉があったので、マイナ先生にこっそり聞いてみた。

 なんでも男爵以上の貴族は、上下関係のある同盟関係を築いており、上位の貴族を親と呼ぶのだそうだ。

 例えばウチの場合、シーゲン子爵が親で、シーゲン子爵の親は、アスキーさんのお兄さんであるフォートラン伯爵が親となっている。どうも貴族社会には結構しっかりした派閥があるらしい。


「ああ、王家への説明は兄上がすることになる。これもまたチャンスよな。ちなみにイント君、今後の資源調査の目途はどの程度たっている?」


「美容の専門家を名乗る研究者の方が、ウチに領内の温泉調査の許可を取りにきていました。マイナ先生に調べてもらった賢人ギルドに残っていた調査結果も同一人物によるものだと考えられるのですが、おそらく他の地域も調査しているでしょう。王都を拠点にしているそうなので、王都に行った際、その研究者に聞くのが近道だと思います。」


「新規輸入経路についてはどうだい?」


「それに関しては僕にはわかりません。父上からこの国では塩を産出していないと聞いている程度で、状況から輸入経路が少ないとは思っていますが、今の輸入元以外にどこで塩が産出されているかなどはまったく知りません。」


 アスキーさんはニコニコと笑っている。知らないと言ったのに嬉しそうだ。


「今回の話は、うちにとっては願ってもない話だ。全力で協力させてもらおう。」


 マイナ先生とアイコンタクトをすると、すごく嬉しそう頷いた。


「ありがとうございます。ただ、一つお願いがあります。論文を発表するか、塩不足解消の計画をフォートラン伯爵に伝えるか、とにかく事が公になった際には、マイナ先生を含めた関係者に十分な護衛をつけていただきたいんです。何やら父がその点を懸念していましたので。」


 まぁ一番懸念していたのはマイナ先生なんだろうけど。


 アスキーさんは一瞬厳しい顔をして、ターナさんと顔を見合わせ、笑った。


「さすがは武門の跡継ぎ。我々はあまりの幸運に舞い上がっていたようだ。その点はもちろん配慮しよう。」


 それだけでターナさんには伝わったようだ。賢人ギルドというだけあって、みんな賢い。


「旦那様。そろそろ到着しますので、ご準備ください。」


 御者が御者台から小窓を開けて報告してきた。


 いよいよシーゲン子爵邸に到着か。そう言えば、以前マイナ先生の授業で、女性のエスコートの仕方を習った記憶があるけど、今こそ使う時かもしれない。照れくさいけど、ちょっとやってみよう———






ブックマークをしてくれた方がまたお2人増えました。感謝しております。


ちなみに、総合評価の値は、ブックマークは+2なんですが、評価だと+2~+10と、最低評価でもブックマークに匹敵する加算効果があります。総合評価が増えると、きっと読んでくれる読者がもっと増えるはずで、そうなれば作者は泣いて喜びます。


よろしければ、清き一票をお願いいたします。


さて、お次はシーゲン子爵との面会ですね。どんな人だったっけ???(既視感)

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