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22話 冒険者ギルドと素材の買い取り

 冒険者の仕事は、人に害をなす魔物の討伐はもちろん、危険地帯での素材の収集、逃亡犯罪者の捕縛、商隊の護衛に戦時の傭兵など、多岐に渡る。


 それらに共通するのは、命の危険があると言うことだ。


 自然、荒くれ者が多いイメージになる。その元締めともなれば、警戒するなという方が無理な話。


「意外ーーー」


 ガチガチに警戒して、冒険者ギルドの建物に足を踏み入れたが、思っていた場所とは違った。


 フロアの半分は飲食スペースで、もう半分は掲示板とカウンターが並んでいる。その辺はイメージ通りだが、ほとんど人がおらず、やたらキレイでおしゃれにまとまっている。前世で例えるなら、カフェの併設された銀行といった風情だ。


 父上は慣れているのか、迷わずにカウンターのほうに歩いて行った。


「年会費の支払いを頼む。」


 小走りに追いつくと、父上は受付のお姉さんに銀貨と首から下げるタグを渡しているところだった。


「はい。お名前をどうぞ。」


「ヴォイド・コンストラクタだ。」


 名前を聞いて、受付のお姉さんは顔を上げ、父上の顔を見るなり、慌てて立ち上がる。


「これは!『闇討ち』で有名なコンストラクタ男爵閣下ですね。ファンなんです。握手してください!」


 父上は苦笑いしながら、受付のお姉さんと握手した。


「ありがとう。でも『闇討ち』って二つ名は、騎士団の連中が『卑怯者』という意味で使い始めたものだから、あまり広めないでくれると嬉しい。」


「ご不快でしたら申し訳ありません。ですが、我々は『闇討ち』が卑怯だとはカケラも思っていません。冒険者には冒険者なりのやり方があります。今も昔も閣下は我々の誇りです。」


 受付のお姉さんは握手をしたまま、悪びれることもなく、強い口調で断言した。よくわからないが、父上には冒険者からの支持がありそうだ。


「あ、ありがとう。」


 受付のお姉さんはまだ手を離さない。一瞬自分の唇を舐め、息を整える。何だか雲行きが怪しくなってきた。


「せっかくお会いできたのですから、この後二人で色々お話しを聞かせてくれませんか?」


 これが噂に聞く肉食系か。よく見ると、お姉さんは割と美人である。


 父も自分から手を離す気配がない。我が父ながら、もげてしまえば良いのにと思う。


「あー、えーと、非常に残念なのだが、今日と明日はやる事があってだな。また今度、機会があれば。」


 やんわりと断っているようにも見えるが、父上もまんざらでもなさそうだ。


 あとで義母さんにチクってやろう。


「えらく長い握手ねぇ。随分と尊敬されてるようで、私も嬉しいわ。」


 その必要はなかった。気がつくと義母さんが隣に立っている。いつ来たのだろう?まったく気づかなかった。


 父上と受付のお姉さんは、バッと目にも止まらない速度で手を引いて、何食わぬ顔で続きを始める。


「失礼しました。年会費の支払いでしたね。ただいま領収書を持ってまいりますので、少々お待ちください。」


「ああ、ついでに私のも頼むわ。」


 奥に逃げ込もうとした受付のお姉さんを、義母さんが呼び止めて、自分の分のタグと銀貨を渡した。


「あと、裏に馬車を停めてるから、常設依頼達成の確認と、素材の買い取りもお願い。」


 お姉さんは黙って頷き、真っ赤になって去っていく。


「あれ?リナは?治療は済んだの?」


 義母さんがいるということはストリナもいるはずだが、姿が見えない。


「リナならそこにいるわよ。」


 義母さんが背後を指したので、振り返る。


「わっ!」


 ストリナが急に大声を出して飛びかかってきた。心臓が跳ね上がって、腰が砕ける。


 そのまま僕は床にへたり込んでしまった。


「きゃはは。おにいちゃんおもしろーい!」


 ストリナは飛び跳ねるように笑っている。肉離れが治って、テンションが上がってるのだろうか。


「リナ、外でイタズラするのはやめような。」


 父上がストリナの頭を撫でながら、諭している。ストリナってイタズラとかするタイプだったっけ?


 膝がまたガクガク笑いだしたが、何とか立ち上がってズボンをはたく。ちょっと恥ずかしい。


「準備が整いました。こちらが領収書とタグになります。馬車の方確認させていただいてもよろしいですか?」


 受付のお姉さんが、エプロンと手袋をしたおじさんを連れてきた。義母さんが、二人を連れて受付横の扉をくぐる。そこには我が家のオンボロ馬車が停められていた。


「素材は魔狼の毛皮と角だよ。魔狼の討伐証明部位は角だったはずだから、一緒にお願い。」


 荷台を隠す布をめくりながら、義母さんが説明する。


「分かりました。ちょっと拝見します。」


 おじさんが箱付きの台車を持ってきて、毛皮を一つ一つ確認しながら、箱に収めていく。毛皮の山を見て、受付のお姉さんが台車をもう一つ取りに行った。


「こりゃまたキレイな毛皮ですね。どれも傷がほとんどない。剥製にしても問題なさそうだ。」


 おじさんが感心しながらチェックしていく。


「これなんか、まったく傷がないですね。大した腕だ。」


「それは息子のイントが仕留めたものでな。口の中を矢で射たものだ。」


 父上が自慢気に語る。それが僕の仕留めた奴だったか。


「ほー。そりゃすごい。将来有望ですな。」


 おじさんがこちらを見て来たので、視線が合う。ペコリとあいさつしておく。


「あとは角が11ですか。毛皮は8匹分でしたが、残りの毛皮はどうしたんで?」


「いやー、うちの娘たちが神術の加減を誤って焼いてしまってね。角も3本焦げてるだろ?」


 焼いてしまったというのも、少し自慢げに聞こえる。


「もしかしてそちらのお嬢さんで?こりゃ驚いた。」


 おじさんはストリナを見ながら、角を手に取る。状態の悪い一本を取り出し、それをそのまま受付のお姉さんに渡す。


「確かに一本は焼けすぎていて、素材としては使えなさそうですね。こちらは討伐報酬のみとなります。残りはすべて買い取りさせていただきますので、査定の間、討伐位置の申告をお願いします。」


 お姉さんが事務的な口調で説明してくる。


「わかった。じゃあお前たちはお茶でも飲んでおいで。」


 父上がお姉さんについて行こうとして、義母さんに肩を掴まれていた。


「あなた?手続きは私の方でしておきますから、子どもたちを見ておいてください。」


 ああ、お姉さんが蒼くなってる。義母さんもなかなか意地が悪いな。


「わ、わかった。」


 父上も何だか小さくなっている気がする。やけに素直だ。


「ちちうえ、あいじんつくるの?」


 義母さんと別れて、飲食スペースへ移動する最中、ストリナが爆弾発言をして、父上を大いに慌てさせていた。


 ストリナって、たまに難しい言葉を知ってるよねぇ。その語彙はどこで習ってくるんだろうか?



祝3,000PV!!


そして今回もブックマーク3件と評価1件が増え、感想までいただけました。


そして総合評価は82ポイントへ。皆様いつもありがとうございます。


次回はようやく、書きたかったセリフ「で、どっちだ?」が書けます。楽しみです。

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