表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/290

第89話 御倉沢吹雪-4

 突然、周囲の雰囲気が変わった。


 宝積寺の家の方を見ると、生徒会長と神無月先輩が家から出てきていた。

 その後に出てきた宝積寺の顔は、いつになく厳しいもののように思える


 前に会った時と同じ、青と白を中心とした配色の和服を着た生徒会長は、笑みを浮かべてこちらに近寄って来た。

 家の前に集まっていたメンバーは、どちらの家の所属であるかにかかわらず、生徒会長に対して恭しく頭を下げた。


「どうやら、貴方は体力が有り余っているようですね、和己?」


 生徒会長は、からかうように言ってきた。

 さっきの話を聞かれたのかもしれない。


「……本当に、今日は、早見とデートしたわけじゃないんですけど……」

「早見アリスの話ではありません。北上天音の話です」

「それは……」

「愛さんから聞きました。貴方も、さぞ困ったことでしょう?」

「……」

「ですが、安心しなさい。私も、複雑な事情を抱えている貴方に対しては、特別な配慮が必要だと考えていたところです」

「……何だか、嫌な予感しかしないんですけど」

「そんなに警戒することはありません。和己、貴方と水守達3人との結婚は取り消します」

「はぁ……!?」


 勝手に結婚を命じておいて……今度は、勝手に取り消し!?

 こんな横暴があってもいいのだろうか?


「和己。これで貴方は自由です。誰を正妻にするかは、改めて自分で選びなさい。そして、貴方が神無月の人間と深い関係になったとしても、御倉沢としては一切関知しません。ただし、御倉沢のことについても、神無月には一切口出しさせません。貴方とお付き合いをすることになった女性は、貴方の責任で、必ず全員を幸せにしなさい。この条件で、神無月とは折り合いましたから」

「いや、そんな、勝手に……!」

「宝積寺玲奈も、この条件を受け入れました」

「……」

「良かったではないですか。これで、貴方は、相手が神無月の女性であっても、自由に恋愛をすることができるのですから。ただし、御倉沢のことについては、私の命令に従ってもらいます。貴方は、自分の責任で、より良い異性関係を構築してください」

「……ちょっと待ってください。御倉沢の女については、俺に決定権がないままってことですか? 冗談じゃありませんよ……」

「構わないでしょう? 今までは、宝積寺玲奈への配慮で、水守達と自由な関係を築けなかったのですから。今後、貴方は自由な状態で、あの子達と一緒にいられます。そして、私の命令さえあれば、あの3人だけでなく、より多くの御倉沢の女性を抱くことができるのですよ?」

「それが、理想の環境のように言われても、俺にとってはですね……」

「和己。認めたくないことは、分からないでもありませんが……そろそろ、素直になるべき時ではありませんか? 少なくとも、宝積寺玲奈は、とっくに気付いています。今さら、誤魔化しても仕方がないでしょう?」

「人のことを、本性はケダモノ、みたいに言わないでください……」

「違うと断言できますか?」

「……」

「前に会った時、昔の日本は一夫多妻制だったという話をしましたね? ですが、その時代にも、1人の女性のことだけを愛した男性の記録は存在します。貴方は、そういう男ではないでしょう? 法的に認められるなら、より多くの女性と親密になることについて、抵抗のない人間です」

「そんな本性は、あんたみたいな人がいなければ、暴露されずに済んだんですけど……」

「責めているわけではありません。そういう男に求められている役割が、存在しているのですから」

「……やっぱり、全然嬉しくありませんよ」

「貴方には期待しています。御倉沢の女性の中で、貴方に任せたい子は、こちらで検討しておきますね? 当然のことですが、何十人も抱け、などと命じるつもりはありませんから安心しなさい」


 言いたいことを言ってから、生徒会長は、御倉沢のメンバーを引き連れて行った。


 すると、今度は、神無月先輩がこちらに近寄って来る。

 今日の先輩は、黒と金が配色された和服を着ていた。

 髪には、やはり、青いリボンを結んでいる。


「ごめんね、和己君。私は、貴方を除け者にしたくなかったんだけど……吹雪さんに頼まれると、私でも、簡単には断れなくて」

「……俺と宝積寺のことについては、関わらない約束だったはずですよね?」

「そうよ。だから、私は立ち会っただけなの。玲奈ちゃんは、自分1人で、吹雪さんと話すと言ってたんだけど……それだと、どんなことを命令されるか分からないから。ちゃんと、玲奈ちゃんの了解を得て立ち会ったから心配しないで」

「宝積寺って……生徒会長の命令なんて、聞くんですか?」

「当たり前でしょ? 玲奈ちゃんは特別な子だけど……あくまでも、普通の子なんだから。和己君は、まだ、この町の住人と御三家の人間との関係が、よく分かってないのね?」

「……」


 宝積寺は、春華さんの妹だ。

 そして、春華さんには、御三家すら上回る人気があった。

 さらに、宝積寺は魔素を操る魔法を使うことができる。

 その力は、異世界人すら容易に殺せるほどのものだ。

 たとえ生徒会長でも、宝積寺と戦って勝てるとは思えない。


 それでも、宝積寺は、生徒会長に逆らえないという。

 どうしてなのか……部外者の俺にとっては、理解に苦しむ話だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ