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第8話 一ノ関水守-4

 本当に長時間待たされて、ようやく私服に着替えた一ノ関がやってきた。


 風呂上がりだからなのか、部屋が暖かいからなのかは知らないが……真夏に着るような、半袖の白いブラウスを身に着けており、下はチェックのミニスカートである。

 まだ濡れている髪をバスタオルで包むようにしており、目のやり場に困った。

 先ほどまでの経緯があったのに、こんなに無防備な姿で、俺の前に現れるものなのだろうか?


「待たせてしまって、ごめんなさい」

「いや……」

「髪や服は乾いた?」

「ああ」

「私は髪を乾かすから、もうしばらく待っていて」

「……」



 一ノ関は、長時間をかけて、ドライヤーで髪を乾かした。


 女の髪というのは、乾かすのに、これほどの時間が必要なのか……。

 毎日こんなことをしていて、面倒にならないのだろうかと思ってしまった。



 髪を乾かした一ノ関は、俺と並んでソファに座り、こちらをじっと見据える。


「単刀直入に質問するから、正直に答えて。貴方は、私のスカートの中を見たの?」

「それは……見たよ。悪かった。土下座して謝れば、許してくれるか?」

「……必要ない。貴方は見ようとして見たわけじゃないわ。人がいるところに行くまで、あの化け物を仕留められなかった私が悪いんだもの」

「……」

「見られても恥ずかしくない、というわけじゃないけど……普通なら、誰も気にしないようなことなの。でも、貴方は外から来た人だから。それに……鈴は元々、貴方の言葉に怒っていたの」

「……すまなかった。お前の髪が地毛だって知らなかったんだ」

「そのことはいいのよ。男の子がエッチな話をすることにも、目くじらを立てるつもりはないわ。でも……貴方の言葉で、私がとても傷付いたことは確かよ」

「……なあ。俺は本当に、エロいことは言ってないんだ。伊原を、きちんと止めなかったのは悪かったが……」

「鈴と香奈は、確かな情報だと言っていたけど?」

「は? 教室で話してるのを、お前が聞いたんじゃないのか?」

「私は、あの2人から、貴方達が話していたことを教えてもらっただけ。あの2人は、その内容を、北上(きたかみ)天音(あまね)から聞いた、と言っていた」

「北上が……?」


 それは、かなり意外な名前だった。



 北上天音は、宝積寺や蓮田と同じクラスの女子である。

 宝積寺の家を訪れたところを見たことがあり、親しくしている友人だと聞いた。

 タイプとしては、平沢と似たような優等生的な雰囲気の持ち主であり、宝積寺のクラスでは委員長を務めているはずである。

 あの女の言葉であれば、須賀川と蓮田が信じたのも無理はない。


 だが……あの話をしていた時、北上は、うちのクラスに来ていただろうか?

 他の女子ならばともかく、北上であれば、来たことに気付くはずなのだが……?



「貴方が言ったことを聞かされて……正直に言えば、泣きそうになったわ」

「……お前らは、俺が何と言ったと聞いたんだ?」

「それは……『ああいう髪の女は頭が悪い』とか、『ちょっと口説けば簡単に股を開くはずだ』とか、『顔は不細工だけど、あの胸には1発ヤらせてもらう価値がある』とか……」

「……」


 それは、聞き間違いや勘違いとは思えない暴言だった。


 当然ながら、俺はそんなことを言っていない。

 伊原だって、一ノ関のことは美人だと言っていたのである。


 何者かが、悪意をもって創作したとしか考えられなかった。


「黒崎君は……言ってないの?」

「ああ。伊原もだ。北上が、どうしてそんなことを言ったのかは分からないが……」

「……疑ってごめんなさい」


 一ノ関が頭を下げたので、俺は面食らう。


「ずいぶん簡単に信用してくれるんだな?」

「貴方は、雨に濡れた私達のことを心配してくれたから。そんなに悪い人じゃない気がするの。私が、貴方や北上天音の言葉を直接聞いたわけじゃないし……」


 弁解するのに手こずることを覚悟していたので、肩透かしを受けた気分だった。

 先ほど、胸を見たりしたにもかかわらず、一ノ関の俺に対する印象は、案外悪くないらしい。


「まあ……お前の髪を悪く言ったのは事実だからな。悪かったよ」

「いいの。貴方は外から来たばかりで、何も知らなかったんだから」

「……そうか? じゃあ、須賀川と蓮田にも、そのことを説明してやってくれ。俺は、もう帰っていいよな?」

「待って」


 俺は、早くこの家から立ち去りたかったのだが、一ノ関に止められてしまった。


「……まだ、何か用か?」

「貴方は、本当は、私のことをどう思うの?」

「どう思う、とか言われてもな……」

「私にだってプライドがあるわ。黒崎君の言葉じゃなくても……自分が悪く言われた、と思ったままだと気分が悪いのよ」

「いや、だが……好きでもない男が、自分をどう思ってるか、なんてことを聞いたら……それはそれで、結構気分が悪いと思うぞ?」

「構わないから、正直に言って」

「……それを聞いたら、お前は怒るだろ?」

「怒らないって約束する」

「……まあ、なんだ。お前は、結構可愛い顔をしてると思うし……スタイルもいいしな。性格も素直だし、大抵の男は好きだと思うんじゃないか?」

「……貴方は? 個人的には、どう思うの?」

「……正直に言えば、すげー好みなんだが……」

「……」


 一ノ関は、顔を真っ赤にして俯いてしまった。


 この女は……男に口説かれた経験がないのだろうか?

 まだ高校生になったばかりとはいえ、これほどの女なら、誰も見向きもしない、などということはあり得ないと思うのだが……?

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