表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/290

第65話 ミュレイ-1

 俺は、金髪の女と向かい合った状態で座った。

 水沢さん親子と平沢は、俺達から離れた位置に座っている。

 部屋から出て行くわけではないと分かって、かなり安心した。


「あんた……名前は?」

「ミュレイと申します」

「じゃあ、ミュレイさん……あんた、歳は?」

「……15です」

「はあ!?」


 俺は、改めてミュレイを見た。

 同じ金髪の早見や矢板と比べても、年上にしか見えない。

 異世界人は大人っぽく見えるのかもしれないが、さすがに年下とは思わなかった。


「……あ、あの……?」


 当のミュレイは、泣きそうな声を出した。

 俺が何に驚いたのか、理解できないらしい。


「黒崎君……異世界とこの世界では、一年の長さが違うのよ。向こうで15歳なら、この世界の基準では18歳程度のはずだわ」


 平沢がそう言った。

 ミュレイが年下、というのが勘違いだと分かって、俺はホッとする。


「……申し訳ありません」

「どうして謝るんだ?」

「こんなに年を取った女と話なんて……したくないですよね……」

「いや……あんたは、充分に若いと思うぞ?」

「……気を遣っていただく必要はありません。女は13歳まで、というのは常識ですから……」

「おいおい……それだと、この世界でも、せいぜい16歳ぐらいじゃねえか……」


 この町の連中も同じだが……異世界人は、年齢に関する感覚がおかしい。

 いや、日本でも、昔はこんな感覚だったのか……?


「黒崎君。異世界人は、この世界の人間に比べて、かなり短命だから……年齢に関する認識が違うのは、仕方がないわよ」


 平沢がそう言った。


「だが、最高で16歳程度だとしたら、もっと若いのに結婚して、妊娠したりする場合があるってことだろ? そんなに低年齢で妊娠したら、身体に悪影響があるんじゃないか?」

「そうね。純粋な異世界人の身体だから、リスクは低いけど……私達は、15歳以下の女性に子供を産ませたりはしないわ。母体に危険が伴うもの」

「お前らでも、そういう配慮はできるんだな」

「貴方……私達のことを、何だと思ってるのよ?」


 平沢の抗議は無視して、俺はミュレイとの会話を再開した。


「それはともかく……ミュレイ、あんたは向こうの世界で、どんな暮らしをしてたんだ?」

「私は、私達が周辺都市と呼んでいる街の生まれです。それは、名前のとおり、首都の周辺にある街でして……首都に住めるほどの魔力を保有していない人が住んでいます」

「見事なまでの階級社会だな……」

「……何か、問題でも?」

「いや……」


 こいつに、そういう社会の問題点を話しても仕方ない。

 俺に、相手を説得するだけの知識や能力がない、という問題もあるが……。


「通常であれば、人は、生まれた街を離れることはありません。ですが……私は、首都へ働きに出ることを希望しました。私の魔力量では、生まれた街で、子供を作ることは難しかったので……。首都に行けば、少しは可能性があると思ったんです」

「でも、駄目だったんだよな?」

「……はい。誰からも相手にされませんでした……」


 ミュレイは、沈んだ様子で言った。


 この女は、健康的な容姿になれば、早見と比べても見劣りしないだろう。

 これだけの美人だというのに……もったいない話である。


「……あの……何か?」

「いや、何でもない。あんたが、どんな人に仕えていたか、教えてもらえるか?」

「御主人様は……若く、綺麗な人でした。私が仕え始めた頃には、まだ子供でしたが、その頃から驚くほどの聡明さと強い意志を持っていたので、私は圧倒されてしまいました。そのような方でしたが、魔力の乏しい私のことも、大切にしてくださって……。ただ、自分の理想の社会を、どんなことをしても実現したいと考えているようでした」

「完全にテロリストだな……」

「あの、勘違いをしないでいただきたいのですが……御主人様は、破壊活動には消極的でした。ただ、私のように魔力が乏しい者にも、子孫を残す権利を与えるべきだと考えていただけなんです」

「随分と、立派な考えを持ってたんだな? あんたらは、魔力が多い人間にしか魅力を感じないんだろ?」

「……そのとおりです。私も、正直に申し上げれば……魔力の乏しい人は、ちょっと……」


 ミュレイは申し訳なさそうに言った。

 こいつの本心が見抜かれていたから、主人に置いて行かれたのかもしれない。


「それなのに、俺とは話したいと思うのか? あんたと比べたら、俺の魔力なんて微々たるものだろ?」

「いいえ。女性ならともかく、貴方ほどの魔力を保有している男性は、滅多にいません」

「……そうなのか?」

「厳密に言えば……私程度の女では、会うことができないんです。そういう男性は、家の外に出ませんから……」


 そういえば、須賀川が、異世界では男が種馬扱いされていると言っていた。

 一生監禁されて、女との性行為を強要されるなんて……酷い人生である。


「差別解消の活動は、同時に、男性解放のための活動でもあるんです。子孫を残す権利を、全ての人に与えるためには、魔力量に基づいた差別をなくしてから、男性を自由にする必要がある。それが御主人様の持論でした」

「……」


 志は理解できる。

 だが、仮に魔力量による差別がなくなったとしても、女が男の10倍以上いる社会で、平等な権利なんて……実現するんだろうか?


 口には出さなかったが、かなり難しいのではないかと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ