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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第230話 御倉沢吹雪-11

 桃花の頭を撫でながら、どうしても目線が下にいった。

 見てはいけないと思っても、自制するのが難しい。


 こいつ……すごい身体をしている。

 早見のビキニ姿を思い出すレベルの、文句の付けようのない身体だ。

 これで、性格も良ければ完璧なのだが……。


「やだ、お兄ちゃんったら。私にもムラムラしたの?」

「……しねえよ」

「嘘ばっかり」

「……とにかく、さっさと服を着ろ」

「はーい」


 桃花は、屏風の向こうへと戻った。


 やばい……あの義妹の胸に、手を伸ばしそうになってしまった……。

 どれほど素晴らしい身体であっても、桃花と性的な行為をする関係になったら、一生後悔するに違いない。

 誘われても、断らなければ……!


「あの、黒崎先輩……おはようございます」


 屏風の向こうから、松島が申し訳なさそうに顔を覗かせながら挨拶してきた。


「ああ」

「お身体の具合は大丈夫ですか?」

「大丈夫だ」

「そうですか」


 松島は、安心した様子で微笑んだ。


「松島さん、心配しなくていいよ? お兄ちゃんが疲れてるのは、女の人と遊びすぎたからなの」

「おい! 余計なことを言うな!」

「それは大変でしたね」

「……」

「美樹さんの弟になったら、花乃舞の方々と、そういうお付き合いも必要ですよね。無理はなさらないでくださいね?」

「……ああ」


 松島は、俺のことを本当に心配してくれているようだ。

 嫌みを言っている様子はない。


「松島さん……。遊ぶって、宴会とか、そういうことじゃないんだよ?」

「……そうですよね。皆さん、もう大人ですから。ですが……桃花ちゃんだけは、最後まではしてないんですよね?」

「私はしてないよ」

「失礼いたしました。黒崎先輩のことを支えながら、きちんと線引きをなさっていて、桃花ちゃんは偉いです」

「ていうか、『だけ』って何だ!? 俺は桃花以外の全員とヤッたわけじゃねえよ!」

「……申し訳ありません。ですが、行為後に疲れて眠ってしまうのは自然な現象ですから、お気に病むことではありません。続きは今夜、ということでしょうか?」

「……」


 何だろう……松島が、俺のことを気遣ってくれているのは間違いないのだが、話が噛み合っていない気がする……。

 というより、こいつは、意外と思い込みが強いタイプらしい……。


「お兄ちゃん。松島さんは、いつもこんな感じだから。早めに慣れた方がいいよ?」

「ていうか、お前が誤解を招くようなことを言ったんじゃねえか!」

「誤解じゃないでしょ? 昼にはお姉ちゃんを抱いて、夜にはこの実さんと遊んだんだから。他の人が夜這いに来ても、話の流れによっては遊ぶんでしょ?」

「……」


 反論できない……。

 今夜、十条先輩が再び夜這いに来たら、拒絶するのは難しいだろう。


「無理はしないでくださいね? 必要であれば、今夜は私が添い寝いたしますので」

「それはやめてくれ!」

「そうだよ。松島さんが隣にいたら、お兄ちゃんは最後までしちゃうよ?」

「ご安心ください。私も、線引きはいたします。妊娠のリスクがないように、黒崎先輩を満足させることは可能です」

「そっか。松島さんって、男の人の身体にも詳しいもんね」

「詳しいというほどではありません。ですから、黒崎先輩が喜ぶ力加減などにつきまして、時間をかけて学んでいきたいと思っております」

「お兄ちゃんの性癖には詳しいから、色々教えてあげようか?」

「ありがとうございます」

「……」


 こいつらと同じ部屋で寝るって……やっぱり、やめた方がいいんじゃないだろうか?



 着替えてから部屋を出ようとすると、目の前に雅がいた。


「うわっ!」

「おはようございます、お兄様」

「お前……いつからここにいたんだ!?」

「渚さんが、お兄様と桃花が肉体関係になったのではないか、と心配していたあたりからです」

「……声ぐらいかければいいだろ?」

「お姉様から、お兄様はお疲れなので、無理に起こさないようにとのご指示を頂いております」

「……俺を起こしに来たんじゃないのか?」

「あまり遅くなってはいけないので、そろそろお呼びしようと考えておりました。先ほど、吹雪様がいらっしゃいましたので」

「もう来たのか!?」

「はい。今は、お姉様と百合香さんがお話しをなさっていらっしゃいます」

「……そうか」


 生徒会長と百合香さんは、友人関係であるらしい。

 百合香さんが学校に通わなくなってから、ほとんど接点はないはずなので、積もる話があるかもしれない。

 俺をすぐに起こさなかったのは、美樹さんなりの配慮なのだろう。

 事情を理解してから、俺達は生徒会長のところに向かった。



 生徒会長は、いつもと同じ着物姿だった。

 百合香さんは顔を真っ赤にして俯いており、美樹さんは、2人を母親のように見守っている。


「おはようございます、吹雪様」

「……おはようございます」


 俺に付いてきた松島と桃花は、生徒会長に挨拶した。


「和己。貴方は、年上の女性に取り入る達人のようですね」


 生徒会長は、俺を白い目で見ながら言った。


「人聞きの悪いことを言わないでください!」

「非難しているわけではありません。ですが、美樹さんの義弟として認められるなど、よほど優れた男でなければ不可能だと思っておりました。これで、花乃舞との険悪な関係に悩む必要がなくなったのですから、貴方はとても恵まれています」

「和己さんは、ご自身にできる限度で、この町の皆様のために頑張っていらっしゃいます。とても頼りになります」

「頑張っているのは、性欲のある男として、という意味でしょう? 何も褒めるようなことではありませんよ?」

「そのようなことはありません。年下の男の子に褒められて、嬉しくない女性はいませんから。久し振りに女に戻ったような感覚で、皆さんが喜んでいらっしゃいます」

「……そうですね。和己を有効活用する方法としては、一番分かり易いと言えるでしょう」


 そう言って、生徒会長はため息を吐いた。

 美樹さんの屋敷に来ることを「出家」と表現していたのに、爛れた生活をすることになったことについて呆れているようだ。


「あの……私は、そろそろ失礼します」


 百合香さんは、自分が桃花の件と関係ないためか、生徒会長にそう告げた。


「そうですね。本日はお会いできて嬉しかったです。百合香さんと話していると、当主になる前のことを思い出します」

「……いつまでも、お気にかけていただいて……」

「構いませんよ。貴方は、私にとって大切な友人ですから」


 そう言った生徒会長は、普通の女子高生のように微笑んだ。

 可愛らしいと表現してもおかしくない笑顔である。


 この人でも、こんな顔をするのか……。

 松島と桃花も、とても意外そうな顔をした。

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