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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第204話 御倉沢吹雪-6

「早くお座りなさい」


 生徒会長は俺を促した。

 内心ではかなり動揺しながら、俺は示された座布団に座った。

 生徒会長の前に、宝積寺と並んで座る形になる。


「麻理恵、ご苦労様でした。貴方は下がりなさい」

「は、はい……」


 平沢も、ここに宝積寺がいることは知らなかった様子で驚いていたが、生徒会長の命令に大人しく従った。


 隣にいる、宝積寺の様子を窺う。

 宝積寺は、俺が来ることは聞いていたようだが、何故か気まずそうな顔をしていた。


 ここに宝積寺がいることは、完全に計算外だった……。

 これでは、俺が考えてきた弁解が使えない。

 どうすればいいのだろうか……?


「和己。まずは、貴方に謝罪しなければなりませんね」

「謝罪……?」

「私が貴方を魔法で失神させた上に、催眠術をかけて、あの子達との性行為を強要したことについてです」

「……!」

「……!?」


 生徒会長の言葉に、俺は驚愕した。

 そして、宝積寺も激しく驚いていた


 宝積寺は、おそらく、初めて知った出来事によって。

 俺は、宝積寺の前でその出来事を暴露したことによって。


「私のことを恨んでいますか?」

「……そりゃあ……まあ……」

「そうでしょうね。ですが……あれは、どうしても必要なことだったのです」

「必要……?」

「御倉沢にとって、貴方は扱いの難しい存在でした。神無月から、貴方が御倉沢の人間だと教えられた時には、貴方と宝積寺玲奈は交際を開始していたからです。御倉沢の中では、貴方を始末するべきだという意見まで出てくる始末……私としては、貴方にそれほどの価値があるように思えなかったので、放置するように指示していたのですが……」


 生徒会長は、そこまで話してからため息を吐いた。


「……貴方が水守の誘いを断ったことによって、憤った者が何名もいました。本当は、女性経験のない男性に、最後の行為をもちかけた水守が間違っていたのですが……」

「……」

「私は、貴方と宝積寺玲奈の間に肉体関係がないという主張を信じていました。ですが……そのような言葉を、普通であれば信用しません」

「……」

「『黒崎和己を断罪するべき』という意見が強まっていたため、私は貴方の価値を説明する必要に迫られました。そこで考えたのは、貴方には種馬としての価値があるということです」

「……」

「水守を含めた御倉沢の配下から聞いた話によれば、貴方の女性の好みは、この町の男とは全く異なるものでした。特に、魔力が乏しい女性のことも問題なく愛せるようでしたから、利用価値は決して低くないと考えました」

「……だから、催眠術をかけてでも、一線を越えるように仕向けたんですか?」

「さすがに、感謝しろとは申しません」

「当たり前でしょう!?」

「ですが、命を奪われることも、大切な部分を切除されることなく生きていられるのですから、あの子達を抱いて良かったと思いませんか?」

「……」


 勝手な言い分ではあるが、御倉沢の女どもから敵視するように見られていたことは事実である。

 本当に、そのような報復を計画していた奴がいたのかもしれない。


「御倉沢の方々は、黒崎さんにかけられた催眠術について知っていたのですか?」


 宝積寺は、明らかに怒っている口調で質問した。


「はい。こういうことが苦手な麻理恵には伏せていることですが……それ以外の主要なメンバーは、きちんと認識しているはずです」

「だったら、私は貴方達を許せません」

「ですが、指示したのは私です。当主である私の命令には誰も逆らえません。それに、鈴や水守は、なるべく催眠術の効果を使わないようにしていたはずです。そうでしょう、和己?」

「それは……そうですね……」

「……」


 催眠術の効果が使われたのは、初体験の時だけである。

 そのおかげで、自分から女を抱けるようになったという事実は否定できない。


「ただ、現状においては、貴方を催眠術がかかった状態にしておくメリットはありません。むしろ、情報が漏れることによって、和己が女性に襲われるリスクがあります。ですから、貴方にかけた催眠術を解除しようと思います」

「解除……できるんですか!?」

「はい。このような事態に備えて、魔法によって催眠術をかける時には、解除方法を指定しておくのが一般的です」


 良かった……催眠術は解除できるのか……!

 ということは……北上にかけられた催眠術だって、解除できる可能性が高いということだ。

 これは、とても良い情報である。


「黒崎さんの催眠術が解除されたことを、誰が証明するんですか?」


 宝積寺は、不機嫌そうな声で指摘した。


「あら、私のことを疑っているのですか?」

「当然です」

「それは困りましたね」


 そう言って、生徒会長は意味ありげな笑みを浮かべた。


「つまり、貴方は、私にこの場で証明してみせろと言っているのですね? 催眠術の発動条件を満たしても、和己が正気でいられることを実演するようにと……」

「……?」

「いや、生徒会長、それは……!」


 生徒会長が笑っている理由を察して、俺は動揺した。

 すると、生徒会長は、俺のことをからかうように笑った。


「どうして貴方が動揺するのですか? 私が下着姿になって、キスをしてみせれば良いのでしょう?」

「……!?」

「……!」

「あら、どうしたのですか? 子供のように赤くなってしまって」


 生徒会長は、宝積寺の反応を楽しむようにクスクスと笑った。


「そのようなことは、絶対になさらないでください!」

「私が裸になっても、貴方には関係ないでしょう? ずいぶんと慈悲深い女性なのですね」

「……破廉恥なことが嫌いなだけです」

「分かりました。では、代わりに貴方が下着姿になって試すと良いでしょう」

「絶対にしません!」

「下着が嫌なら、ビキニでも代用できますよ?」

「冗談ではありません!」

「そうですか。せっかくの機会だというのに。和己も期待しています」

「いや、俺は……!」

「想像しないでください!」

「してねえよ!」


 必死で否定したが、宝積寺は、顔を真っ赤にしたままこちらを睨んだ。

 そんな俺達を見て、生徒会長は満足気な表情を浮かべた。


「安心しなさい。きちんと解除しなければ、和己が危険なのですから。この期に及んで、嘘を吐いたりしませんよ」

「……」

「ですが……宝積寺玲奈。貴方が望むのであれば、和己に新しい催眠術をかけることもできますよ?」

「そのようなことを望むはずがありません」

「望まないのですか? 和己を、御倉沢の女性と貴方以外には魅力を感じない男にすれば、他の女性に奪われるリスクは無くなりますよ?」

「……」


 宝積寺は、顔から表情を消した。

 それから、しばらく黙り込んでしまう。


「おい、宝積寺……」

「……」


 宝積寺は、物言いたげな顔でこちらを見てから、生徒会長に告げた。


「せっかくですが、私は、そのようなことを望んでおりませんので……」

「そうですか。意外と甘いのですね」

「人に催眠術をかけるようなやり方が好きではないだけです」

「狡さがないと、恋愛では勝てないと思いますよ?」

「……余計なお世話です」


 宝積寺は、拗ねたような顔をした。

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