表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/288

第18話 黒崎和己-2

 頭がぼんやりとしている。

 一体、何が起こったんだ……?


「黒崎君! 気が付いたのね……良かった……!」


 俺が寝かされているベッドの脇から、一ノ関の声が聞こえる。


 そちらに目をやって……これは夢じゃないかと思う。

 俺のことを心配そうに見ている一ノ関が、とんでもない格好をしていたからだ。


「良かった……」


 蓮田の声もした。

 そちらを見ると、蓮田と、その隣にいる須賀川も、一ノ関と同じ格好をしている。


 変な話をしたせいで、ヤバい夢を見ているのか……?

 それとも、俺の頭はおかしくなってしまったのか?


「目が覚めたようですね。気分はどうですか、和己?」


 一ノ関達の後ろから、生徒会長の声が聞こえた。


 俺の視界を遮る位置に立っていた3人が、慌てて横に動く。

 その時に、つい一ノ関を目で追ってしまい、慌てて目を逸らした。


「……最悪の気分ですよ。頭が痛いし、目眩がします……」

「貴方は、地下に降りて来た途端に倒れました。どうやら、急性魔素中毒のようです」

「……何ですか、それ?」

「今まで魔素の薄い環境で暮らしていた者が、急に魔素が濃い環境で暮らすと、身体に負担がかかります。通常であれば、倒れるようなことはないのですが……先ほど、随分と興奮したようですから、心身への負荷が一時的に限界を超えたのでしょう」

「……つまり、この町には、毒ガスみたいなものがあるってことですか? そういうことは、外から来た人間には、教えてくれないと困りますよ……」

「安心しなさい。貴方の身体は、既に大分慣れてきているはずです。もう一回倒れるようなことはないでしょう」

「……だったら、まあいいです。ところで……」


 俺は、そこであえて言葉を切って、再び一ノ関達の方を見た。

 やはり夢でないことを認識して、顔を逸らす。


「……一ノ関たちは、どうして、こんな場所で、白いビキニなんて着てるんですか?」

「貴方の決断を、後押ししようと思いまして」


 御倉沢吹雪は、楽しそうな口調で言った。

 こんな形で、女性を辱めて楽しむなんて……この女、本当に名家の当主であり、学校の生徒会長なのだろうか?


「……頭痛が酷くなった気がします」

「どうですか? 改めて、3人が欲しくなったでしょう?」


 一瞬、興味がない、と嘘を吐きそうになって自重する。

 通常であれば、そう言うべき場面なのだろうが……この3人の事情を考えれば、それが最善とは限らないのである。


 じっくりと見たわけではないが、一ノ関だけでなく、須賀川と蓮田も、レベルが高いことは分かった。

 この3人は、この町ではない場所に行ったら、相当な人気が出るだろう。

 魔力の量とやらのせいで男と縁がないのであれば、住む場所を間違えているとしか思えない。


 特に、一ノ関は、限界に近いボリュームである。

 こいつを放っておく連中の気が知れない。


「まあ、俺も男なんで……ここが海かプールで、遊びに来たんだったら、遠慮なく鑑賞するんですけどね……」

「そうですか。この町には、海はありませんが、プールならあります。いずれは、4人で遊ぶ機会を設けると良いでしょう」

「……もう少し、配慮があるべきなんじゃないですか? これじゃあ、一ノ関達だって嫌な気分でしょうし、俺だって困るだけです」

「あら。水守たちがその格好なのは、貴方を喜ばせるためだけではありませんよ? 貴方が3人との結婚を拒否したら、この場で速やかに処刑するためです」


 御倉沢吹雪がそう告げた瞬間、一ノ関たちが身震いしたことが伝わってきた。


「……それじゃあ、脅迫じゃねえか」

「そうはならないと信じています」

「……なあ、お前らはどうなんだ? 本心では、俺なんかと結婚させられるのは嫌だろ?」


 俺は、怯えた様子の、一ノ関たちの方を見ながら言った。

 脅されたために従っているだけで、本当は嫌がっているのだとしたら、対応を考える必要がある。


 3人は、互いに顔を見合わせていたが、やがて須賀川が口を開いた。


「吹雪様のご命令だから、私達は従うだけよ」


 須賀川は、さも当然のことのように言った。

 不満を押し殺している様子が、全くないことに驚く。


「……結婚だぞ? 本当にいいのか?」

「当然よ」

「私も、相手が黒崎君なら不服はないわ」

「マジか……」


 信じ難いことに、一ノ関は、この結婚に乗り気なようだ。

 命令がなくても結婚する、とでも言いたげな様子である。


「……そうだね。突然だったから、ビックリしたけど……私も、嫌だとか、そういう気持ちはないよ? むしろ……」

「……何だ?」

「……黒崎君の方こそ、私と結婚してもいいの? 水守も鈴もいるのに……」

「……」


 蓮田は、何故か不安そうに俺を見ている。

 俺が、蓮田だけは要らない、とでも言うと思っているのだろうか?


「何言ってるのよ! 1人だけ除け者にするなんて、私が許さないから!」

「……」


 須賀川は、俺が結婚相手の人数を減らしたら、怒るらしい……。

 こいつらには、三股をかけられる、という認識はないようだ。


 頭の中で、色々なことを考える。

 しかし、この場を凌ぐ以外に、方法は思い浮かばなかった。


「……分かりましたよ。生徒会長、俺はこの3人と結婚します」

「まあ、良かった。ご結婚、おめでとうございます」

「……」


 こんな結婚の、どこがめでたいというのか?

 俺はため息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ