2話 森の主人?
「やあやあ、きみたち何をやってるんだい?」
おれの怠けた声に全てのものがこちらを振り向き不可思議な顔をしている。
「貴様、どこから現れた?ここは我らが占拠しておる。さっさと去れば構わぬが今すぐ行かぬならここで死んでもらおう」
こりゃぁ話し合いは難しそうだなー。まあ、とりあえず偉い人だけ残して後は皆殺しでいいかな。
「わかったよ、じゃあ死んでくれるかな?」
俺は即座に両足に魔力を流し一気に兵士の元へ駆け寄り自らの魔力で生み出した魔剣で相手の胸元を斬りつけ、即座に首を落とした。
「うぁぁぁー」
斬りつけられた兵士は胸から大量の血潮をあげ、周りのものが騒ぎ出した
「貴様、敵対するつもりか!!皆の者奴を打ち取れ!!」
国王の声と同時に多くの兵士が魔法を発動し始めた。それは小さい炎だが多くの炎が集まり巨大な炎へと変わった。
「喰らえ!我が国への反逆者として握りつぶしてやろう!ファイアーブラスト!!」
炎の塊が一瞬で高出力の光線に変わり空を襲いあたり一面が爆風に巻き込まれた。
「ははははは、あっけないものだ。そのまま帰っていればいいものをなぁ.....」
「国王、あれを見てください!!」
まだ爆風が立ち込める中なにやら人影のようなものが浮かび上がっていた。だんだんと見えてきて、国王の目に映ったものは無傷の男であった。
「え?なに?今のは本気?弱すぎる?」
俺はとくに今の魔法に対処などなにもしていない。鍛え抜かれた体と自らの持つ魔法保持量、そしてダークドラゴンとブルムスドラゴンで作られたマント、レッドドラゴンの目玉で作られた指輪、グレートベヒーモスで作られた一式装備、これらの装備により今のガルデガルド王国の魔法に対してなんの対策もなく対処が可能だ。
「馬鹿にしおって!!」
国王は頭に血が上ったのか自らの剣を取り魔力を振動させ空に襲いかかった。恐らく空の魔剣と国王の振動された剣がぶつかり合えば魔剣の方が折れる可能性があったが....
「ポト.....」
それはなかった。
俺は自分の剣に膨大な量の魔力を流し国王の剣に付与されている振動の魔力を打ち消したのだ。
「弱いね。こんな弱さでこの森に来ようとは、まあこれで終わりにしようか」
俺は魔力で自分の周囲にいる敵全てを捉え剣を横薙ぎに一振りした。
「魔技 黒龍一閃」
この一閃で国王、そして国王の側近、平民以外の全ての人が死んだ。なぜ、平民も殺さなかったかというと強制的に参加させられてるんだから可哀想などという感情論だ。
「化け物め。儂がなにをしたというのだ!これほどの兵を殺してタダで済むとおもっておるのか!!」
負け犬の遠吠えだろうか。まあ、いまさらそんなこと言われても困るのが正直なところだがまあ、質問にはしっかりと答えようと思う。
「ここは俺の家だからだ。何年か前からここに住みここで暮らしここで生きてきた。そして、最近自らの魔力で育ててきた金属をお前らが取ろうとしたから出てってもらおうと思ったわけさ」
まあ、君たちがもう少し攻撃的でなければこんなに殺さなくても良かったんだけどね
「ここに住んでいるだと....ふざけやがって、馬鹿にしておるのか!!」
国王はやっとの思いでこの森を抜け宝にありつけたかと思いきや先客がおりそいつは、物凄く強いという事実にどうする事も出来ないでいた。
「貴方は我々と敵対するつもりがありますか?」
貴族の中では話のわかりやすそうな側近が出てきた。こちらには敵対の意思などないし、友好関係を結べるなら結びたいが,..
「別に敵対するつもりはないが、俺の敵だと感じたものは殺す。敵が味方かそれだけだね」
あのまま友好関係を結びます、はいでは相手の思うつぼだろう。こちらの意思をはっきりさせておくことは大事だ。
「国王。ジャンターン伯爵がお話があると....」
「呼べ」
連れてこられたのは白髪の40代くらいのいかにもイケメン感のある男だった。
「いまここで、あの者と敵対するのは危険です。」
「それは我を愚弄しておるのか?我が最大戦力をぶつければあんなやつゴミにでもなろう」
「はい。それはお分かりなのですが、あの者はそれでも、それなりの腕をお持ちです。なので、この森をあの者に守らせる事で一つ利益が出ます。それは...」
「バルトガイド帝国か?」
「左様でございます」
バルドガイド帝国とはガルデガルド王国の北に位置する大きな国なのだが現在あまり良い関係ではなくいつ戦争が起きてもおかしくないのだ。そしてバルドガイド帝国からガルデガルド王国まで来るには海を渡るしかなく、その海は超えるとこの深淵の森に繋がっているのだ。
「ふむ、悪くない手だ。よかろう!おい貴様、ここに住み着くのはこの我が許してやろう。しかし、この森に良からぬ輩がやってきたらお主がしっかりと相手をしろ。それが条件だ」
まあ、要は俺を敵国の囮にしようと考えてるわけね。まあ、別にいいけどさ。
「わかりました。では、ここで奪おうとした全てのものを置いていってくださいね。あと死体はこちらで燃やしとくので持って帰りたいのとかあったら適当に持ってってください」
そういうと全ての者達が金属やら鉱石などを捨て一度も振り返らず帰っていった。
彼らはここで、大きな失敗を起こしていた。先ほどの条件だが相手をしろ、だけであり、敵対しろとは言われていないのである。それに王国のものが気づくのはまだ先の話であった。